vol.2vol.3ではキッチンにおける「水」と「火」との付き合い方を考えてきました。vol.4は、レンジフードについて考える「煙」編です。

レンジフードは、水栓やコンロと違い、キッチンの“上空”に存在する設備。そのため、空間の見え方に大きく影響します。特に部屋の中央に配置するオープンキッチンでは、ダクトの納まりや天井の仕上げまで含めて計画したいポイントです。

キッチン空間の設計の自由度を左右する、レンジフードの選び方や排気の考え方。キッチン計画をはじめる前に、まずはその可能性を知ることから。さまざまな事例を通して、レンジフード選びを深掘りしていきます。

事例で見る | レンジフードの見え方とキッチン上空の景色

キッチン空間の見た目に大きな影響を与えるレンジフードの存在。既製品から選ぶのが一般的ですが、「出来ることなら目立たせたくない」「どうせ付けるなら、周囲の空間に似合う形を追求したい」「いっそ、なくしちゃう?」と、レンジフードの在り方そのものを考えて作ったこだわりのキッチン空間を紹介します。発想のストレッチをして、自身の理想形を考えてみてください。

case.1 脱!キッチン設備感。古物ブリコラージュの世界観に合わせた亜鉛鋼板の造作フード

日本の古い棚や木箱を壁面に打ち付けたブリコラージュキッチン。窓に合わせてブリキの換気扇カバーを造作。(事例協力:CIRCUS inc.)

親子4人暮らしで、ゲストを自宅に招くことの多い鈴木さんは、キッチンが中心にある仕切りのない家を目指しました。

料理する人が孤立せず、家族やゲストと会話できるオープンなつくり。分厚い天板下に業務用冷蔵庫がビルトインされ、古材の扉がついたキッチン。正面の壁は、日本の古家具の棚や木箱がパズルのように打ち付けられ、何風とも言い表せない独特の世界感が広がっています。

ここに合わせるレンジフードを考えた時、ステンレスのレンジフードだと、いかにも「キッチン設備」な主張が強過ぎて、浮いてしまう。キッチンらしくないキッチンを目指して選んだのが、壁付けの換気扇を設置し、亜鉛鋼板でフードを造作するという選択肢でした。

古材に似合う、ムラがあり、にぶく反射する亜鉛鋼板の質感。一般的にレンジフードには使われない素材ですが、住み始めて10年。汚れ等はそんなに問題に感じていない状況なのだとか。

既成概念に捕らわれず、こだわりたいことをぶらさず突き通した、この家だけの景色が印象的なキッチン空間です。

存在感ある世界各地のアイテムたちが不思議と仲良く同居するキッチン空間。

 

大きな窓辺にサイズを合わせたW1275×D750×H560mmの造作フード。

造作フードの中は、壁付けの有圧換気扇をつけただけのシンプルなつくり。

使われているアイテム

①レンジフード
業務用有圧換気扇:EF-20YSB(MITSUBISHI)※旧品番
フード:亜鉛鋼板で造作

②コンロ
ガスコンロ ステンレストップ 4口 グリルレス

③天板
左官仕上げ

④水栓
型番不明(IKEA)

⑤シンク
FRP製(メーカー不明)

⑤ビルトイン冷蔵庫
型番不明(ホシザキ)

case2. 統一感ある扉ですっきり。連続する吊戸の中にフードを埋め込み一体化

壁一面にすっきり納められた扉付き収納が印象的なキッチン。吊り戸棚にレンジフードが埋め込まれている。(事例協力:studio niko / 撮影:Masanori Kaneshita)

築古戸建てのリノベーションした、親子3人暮らしの笹本さんの住まい。梁を現した開放的な天井の下、キッチンはリビングダイニングとゆるやかにつながるよう配置されています。

キッチン回りの細かいものを出来るだけすっきりしまい込みたいと、壁の端から端まで、キッチンのキャビネットと色を揃えた横長の造作吊り戸棚を計画。冷蔵庫上でラインを揃えたすっきりプランです。コンロ上にある薄型のレンジフードも、同じ面材の扉でダクト部分を隠すような仕様とし、底面からレンジフードの存在が見えるだけとなっています。

壁付けキッチンの場合、どうしても上空で視界に入ってきやすいレンジフードですが、うまく吊り戸棚と一体化させることで設備感を軽減して、収納量の確保も両立させたキッチン空間です。

壁一面の横長キッチン。ストック収納などもまかなっている。(撮影:Masanori Kaneshita)

吊り戸棚を開けると、レンジフードのダクトカバーが見える。手前は瓶置きとして利用。

使われているアイテム

①レンジフード
FY-75DWD4-S (Panasonic)

②コンロ
IH 3口 KZ-XP56S(Panasonic)

③水栓
TKN34PBTRT(TOTO)

④天板・シンク
シンク一体ステンレス天板

⑤吊り戸・キッチン扉
造作、塗装仕上げ

case3. 奥までの視界の抜けを優先してキッチン上空はすっきりと。壁付け換気扇で換気する

ダイニングから奥のソファーまでがまっすぐ見渡せる。部屋の中央に3mのキッチンがある間取り。(撮影協力:Ishimura+Neichi

細長く奥まで見通せる間取りが特徴的な石村さんの家。夫婦と愛犬で暮らしています。ダイニングとリビングスペースが部屋の両端にあり、中央にキッチンがあります。「ダイニングに座った時に奥の正面の窓まで視界がすっと抜けるようにしたい」そんな思いから、キッチンのコンロ上にはレンジフードを設けず、外壁側に有圧換気扇をつけて、壁から換気をすることを選択しました。コンロ上にはレンジフードを設けるのが一般的ですが、必要換気量の計算を十分に行い、条件付きで可能になる選択肢です。

周囲の壁や天井に油汚れが付着しないか気になるところですが、取材時で住んで4年目。1日2回は自炊する生活。キッチン上部に設けた棚スペースの底面をさわると、うっすら油っぽさを感じる時がありますが、天井や壁は全く気にならず。たまに、拭き掃除をしているレベルなのだとか。掃除をしながら、周辺の素材の経年変化も観察しているそう。

空間の見通しを大切にして、日々その開放感を味わっている分、掃除面も前向きに楽しんでいるのが印象的な、あえてレンジフードを設けない選択へのチャレンジです。

コンロの真後ろはエアコンがあるため、掃き出し窓1つ分ずれた位置に換気扇を設置。

業務用の有圧換気扇。ステンレスのいかつい佇まいが特徴的。汚れが目に入るので半年に一度掃除する。

コンロ上の棚部分は、他の部分に比べしっとり油っぽくなっているので、たまに拭き掃除。

使われているアイテム

①換気扇:
産業用有圧換気扇 EF-25ASXB3(三菱)

②コンロ:
RS31W27U12DGVW(Rinnai)

③天板:
メラミン化粧板 K-6606KN(AICA)

④水栓
ミンタスクエアスパウトシングルレバー混合栓 3028300J(GROHE)

⑤シンク
JSN-KFSシンク(シゲル工業)

⑥食洗機
450タイプ NP-45MS9W(Panasonic)

開放的なキッチン空間を生みだす、天井の高さ別レンジフード設置術

1章ではレンジフードの存在のさせ方を工夫することでキッチン空間の見え方が大きく変わる事例を紹介しました。2章では、レンジフードを設置する天井の高さに注目して、どんなレンジフードが選択肢にあるのかを見ていきます。器具の選び方次第で、頭上をすっきりさせた開放的なキッチン空間をつくることができます。

抜け感を重視してあえて高めに設置。幅広レンジフードで煙も逃さず

コンロ上から1m以上離れた位置に幅広のレンジフードを設置。身長180cmの家主さんが立っても頭がぶつかりません。

一般的にレンジフードはコンロ上から80cm程度離れた位置に設置されますが、キッチン上空の抜け感を優先したい場合には、あえて高い位置に設置するという選択肢も。キッチンに立ったときの視界がひらけ、頭上の圧迫感を軽減することができます。

一方で、コンロから距離が離れると、煙を受け止められるかが心配なところ。こちらの事例では、広がる煙をしっかり捉えられるよう、フード幅を通常より大きくすることで、解決しています。

キッチンこぼれ話

レンジフードを高く設置した場合、開放感は得られるものの、背の低い家族がスイッチに手が届かないという別のお悩みがでてきますよね。

今回採用した『オーダーレンジフード』なら、スイッチがレンジフード本体と分かれているため、設置位置を自由に設定できます。キッチン側面に手元スイッチとして設ければ、背伸びをしなくても、家族みんなが操作しやすい環境をつくることができます。

サイズオーダーできるレンジフード

吹き抜け下は、壁に横付けサイドフードですっきりと。リビング・ダイニングとの一体感を強調

(写真提供:Horibe Associates / 撮影:今西浩文 ATELIER ONE)

大きな吹き抜け下のペニンシュラキッチン。天井から吊りボルトでレンジフードを吊るには高さがありすぎるような場合は、壁に横付け設置する「サイドフード」の選択を。排気ダクトを横に抜けば、レンジフード本体の箱の厚みだけで上空はすっきり。空間の一体感を損ないません。

横壁に固定する薄いボックス型のサイドフード

天高低めのアイランドキッチンでは、埋め込み型ファンで天井面をすっきりフラットに

天井高さ2.1m。フラットな天井ですっきり。(事例協力:Horibe Associates )

天井の高さがとれないリビング一体のオープンキッチンでは、頭上のレンジフードが圧迫感につながりやすくなります。そんなときの選択肢のひとつが、換気扇を天井裏に埋め込む方法。見えるのは整流板とスリットだけなので、天井面をフラットに保ちやすく、空間全体をすっきり見せることができます。

天井埋め込み型換気扇

露出ダクトはあえて見せる?馴染ませる?見え方の違いを比較

2章では、空間の条件別のレンジフードの選び方・設置の仕方を見てきました。3章では、そこにつながるダクトの「見え方」に注目します。

特にリノベーションでキッチン位置を移動する場合は、既存の排気口との関係も重要です。下図のように、レンジフードから排気口までダクトをどんなルートでつなぐのか、また露出になる場合にどう見えるのかを、事例をもとに見比べていきましょう。

新築の場合も、天井露出仕上げだと、ダクトが部分的に露出になるケースがあります。

金属ダクトをそのまま無骨にみせる

コンクリート打ち放しや、梁などの構造体が露出する躯体現しの場合、金属ダクトをそのまま見せてしまうケースを多く見かけます。排気口までどんなルートになるかは、天井を解体してみないと分からないことも。無骨なその見た目も意匠の一つとして、空間設計に取り入れています。

横排気できるレンジフードで、梁下ギリギリでダクトをまっすぐ接続。(写真提供:アートアンドクラフト

梁の既存スリーブ孔を利用して、なるべく高い位置でダクトを取り回し。既存ダクト再利用だと、にぶく渋い表情に。事例協力:HANKURA Design / 撮影:Masanori Kaneshita

POINT
7方向排気で最適なダクトルートを選択する

背面か真上でダクト接続するタイプのレンジフードが一般的ですが、リノベ現場のお悩みから開発された『フラットレンジフード』は、高さ20cmの薄型で、左右含め、7方向排気が可能。梁下ギリギリの位置でのダクト接続が可能となります。

横排気も可能なボックス型フード

白天井に合わせた白塗りダクトですっきりみせる

天井の色にダクトの色を合わせると、背景と同化してダクトの存在を目立ちにくくすることができます。吊り具や接続するエルボ部材を合わせて塗装するかも合わせて検討を。

天井壁、キッチン天板、収納扉、レンジフード、ダクトも全て白で統一。(写真提供:ゼロリノベ

本体はライティングレールなどに合わせて黒で引き締め。ダクトを天井合わせの白に。(写真提供:ゼロリノベ

塗装ダクト

KB-KC037-03-G141
¥13,500

つい、最後に当てはめる設備になりがちなレンジフードですが、早めにその選択肢と、実現できる空間の可能性を知っておけば、計画の自由度も増し、理想のキッチン空間が実現できます。特にオープンなキッチン空間を計画する場合は、キッチン本体や周囲の空間仕上げと合わせて、理想のレンジフードを選んでいってください。

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担当:来生