コロナ禍を経て、リモートワークが定着したという方も多いのではないでしょうか。家で仕事をするのもいいんだけれど、家族と暮らす「生活の場」や「休息の場」でもある家では集中しにくい、という場面もあったり(それが、いい気分転換になる場合もあるんですけどね)。かといって、オフィスで仕事をしたい気分じゃない時もある。じゃあ、仕事部屋を家の外に構えて、さらに趣味も楽しめる場所にしてしまおう!という、遊び心ある決断をして出来上がったのが、今回ご紹介するお部屋です。

昔ながらの商店街の中にある、約35㎡のコンパクトなマンション。この部屋をリノベーションしたお施主様は、40代の男性。近所にある戸建てにご家族とお住まいで、ここはリモートワークや副業をする仕事部屋であり、スケボーやスノーボード、サーフボード、キャンプ道具などのグッズを詰め込んだ趣味部屋でもあります。

玄関を入ると、出迎えるのはサーフボードやスケボーがずらりと並んだ土間空間。壁に貼っているのは鉄サビ仕上げが施された杉板で、ガレージや小屋を思わせるワイルドな雰囲気です。

土間の先に広がるフロアには、『足場板』の「なめらかT15」を使っていただきました。この「なめらか」仕上げは販売終了になってしまったのですが、「こってり」と「あっさりサンディング」を展開中です。天井はコンクリート躯体と木毛セメント板の現しで、こちらもラフな空気感が漂う空間になっています。

お子さんが描いたのでしょうか、グラフィカルなイラストが描かれたブルーの壁は、黒板塗装仕上げ。キッチンには、エメラルドグリーンのタイルが貼られています。

内装に取り入れる色は、自然を感じさせるものを選んだそう。光を受けてキラキラと光を反射するエメラルドグリーンのタイルは、海を思わせます。仕事が忙しくて海や山に行けない時も、気分をリラックスさせてくれそうです。

下部収納なしのカジュアルなキッチンは、『オーダーキッチン天板』。『ニッケルサテン水栓』と『キューブ型レンジフード』を組み合わせていただきました。タイル壁に取り付けた棚の棚受けは『棚受け金物』の鉄です。

広いルーフバルコニーには、全面に『足場板』の厚さ35ミリを敷いています(販売終了の「なめらかT35」を使用)。アウトドアチェアを移動すれば、青空の下でのびのび仕事ができちゃいますね。玄関からバルコニーまでは土間を通ってアクセスできるので、サーフィン帰りやキャンプ帰りの道具のケアがしやすいのもいいですね。

リビングの奥にはもう一室、モルタル床にした個室があり、現在は倉庫として使用中。この住戸には浴室もあるので、「住む」こともできるようになっています。

好きなものだけに囲まれた、自分だけの部屋。「家」ではないからこそ割り切れる部分もあるし、「オフィス」ではないから遊べるところもある。「家以外に部屋を持つ」のはそう簡単ではないけれど、休日に家族や仲間とくつろぐリビングとして使ってもいいし、自分が使わなくなったら賃貸に出すなんて選択肢もあると思います。

「家」と「職場」以外のもうひとつの「居場所」を持つことで、生活と仕事ばかりの毎日になってしまいがちな日常に、楽しみを生み出す。こんな一手があったのか!と目から鱗のライフスタイルでした。

※こちらの事例はimageboxでも詳細をご確認いただけます。

ANCHOR DESIGN

東京都調布市を拠点として活動している、星野晃範が主宰する設計事務所。暮らしに合わせて家に手を加えて変えていく「アフターリフォーム」な暮らしを実践したり、ライフスタイルの可能性を広げるつくり込みすぎない家づくりを提案しています。

テキスト:サトウ

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