今回ご相談いただいたお客様はご夫婦2人暮らし。1階で飲食店を営みながら、2・3階を住居スペースとして使用しています。

この物件を購入して2年。「昭和の雰囲気が残る内装が好き」と、そのまま暮らしていたものの「今の自分たちの暮らしには合わない部分が増えてきた」と改装の相談をいただきました。

中でも特に、使い勝手に困っていた場所がキッチンでした。

改装前のキッチン。今ではあまり見かけない、黄緑色のタイルが象徴的な場所でした。

飲食店を営むご夫婦は職業柄、食器や調理道具、調味料など、どうしてもキッチン周りに物が多くなりがち。収納家具やカウンターを増やして工夫をしていたものの「使い勝手が悪くなってきた」と感じていたそう。

きちんと場所を決め、物が収められていましたが、ここには入らない物たちも沢山あり、上の階の空いている場所に収納している状態でした。

キッチンの対面はダイニングスペースに。奥は畳敷きの居間スペースが繋がる間取り。

お客様のやりたいことを整理していく中で見えてきたのは、ダイニングを中心に置いて、キッチン本体だけでなく、壁面側にもたっぷりの収納を備えたレイアウト。お客様が好きだというレトロな雰囲気を引き継いだ「痕跡残し」なキッチンづくりを目指していくことに。

また、今回はお客様が家で生活を送りながらの「在宅工事」。工期や予算を抑えるためにもできるだけ壊さずつくり変えることや、工事の状況に柔軟に対応できる素材選びも大事なテーマとなりました。

工事中のひとコマ。隣の居間を養生した上で、作業場兼資材の仮置き場として使わせていただきながら、工事を進めていきました。

空間のベースとなる壁と天井は、既存の状態を活かすことに。「今では手に入らないこの表情が好き」と気に入っていたレリーフ天井は、上から塗装し、穴の補修も行いました。

塗装色は、既存の空間に合う様、ホワイトの中でもアイボリーに近い日塗工22-90A(半艶)を採用しています。

また、壁は手をつけずモルタルの表情をそのまま残すことで、綺麗すぎない、以前の空間を踏襲した雰囲気に。

新しい部分との違和感を感じさせない、言われてみて初めて昔の痕跡に気づくような、そんな新旧の融合を目指しました。

床は既存床の上から、赤茶色のフローリングをまし貼りしてイメージを変えました。

選んだのはデッキ材にも使われる耐久性のある樹種。貼り上がった時から懐かしさを感じる印象ですが、時間が経つにつれてより深い色合いに変化していくという特性も、選んだ理由です。

貼り方は、L1820mmの定尺のフローリングの特徴を活かして、りゃんこ貼りにしています。今回のようにコンパクトな空間でりゃんこ貼りを取り入れると、落ち着いた印象が出て、隣り合う畳敷きの居間とも自然と繋がる仕上がりになりました。

キッチンは壁面いっぱいに造作して、シンクやコンロだけでなく作業スペースも広く確保しました。

「取り出しやすいオープンキッチンがいいけれど、棚板がないと使い方がわからない」というお客様の要望を受けて、天板下には可動棚を設けました。天板上にはスパイスなどを並べて置ける飾り棚も。

キッチン天板は『マットカラーのキッチン天板』の「ホワイトグレー」。下部の脚の色とは僅かに色味の差をつけて、単調になりすぎない、緩やかな陰影を出しています。

シンクは天板の色と揃えて『クォーツシンク』「サンドグレー」を合わせました。

シンクは天板と一体ではなく、上からはめ込むつくりに。天板とシンク、異なる素材を使ってはいますが、色味を合わせることでスムースな印象に。マットな質感のアイテムで統一された中、水栓はあえて光沢のあるクロームをセレクトし、アクセントにしています。

「マットカラーのキッチン天板」は、現場加工がしやすいことも特徴のひとつ。開口位置を指定すれば、事前に加工してお届けもできる商品ですが、今回は現場で加工を施しました。

既存の建具枠や柱に合わせて調整しやすく、お客様が使い勝手や置くものを具体的に想像しながら、シンクやコンロの位置を判断できたのは、この素材ならでは。工事に入ってから微調整をしていくことで、納得感のある形に仕上げることができました。

背面の壁に使ったのは『水彩タイル』の「アーモンド」。提案させていただいたタイルの中で「冷たすぎず、自分が好きな色。それだけでなく、夫がキッチンに立っていてもしっくり似合う色合い」というコンセプトでお客様と選んだものです。

キッチンの柔らかなホワイトと、既存の窓枠や棚板の焦茶色をまとめてくれる背景になりました。

今回のリフォームでは、キッチン空間に合わせ、ダイニングテーブルも制作しています。使用したのは『センターテーブル脚』。2人での食事や、調理中の間に材料を広げておく作業台としても使いやすいφ900mmのサイズでつくりました。

背面にはキッチンと同じ組み合わせで収納を造作。食器棚としてだけでなく、調理家電もここに集約できるよう、新しく設置した冷蔵庫との間の間仕切り壁にコンセントも備えています。

天板は見付け40mmと、脚となる方立ての幅と同じくらいの厚みを持たせているので、バランス良く仕上がりました。

また、前垂れのある造りの為、天板と方立てを固定する金物を表からは見えないつくりに。細かな部分ですが、キッチンをインテリアの延長として見せるために裏側が見えないことは大事な要素のような気がします。

リフォーム前は調理の場所と・ダイニングスペースをしっかり分けていたことで、手狭な感覚もあったキッチン。思い切ってダイニングを中心に置くことで、夫婦がゆったりくつろぐスペースがリビング以外にも生まれました。

収納家具やテーブルを別々で揃えていた時よりも空間全体の一体感が生まれ、お客様愛用の食器や、調理道具を置くことでより賑やかに彩られるキッチン空間が完成しました。

在宅工事という中で、極力お客様の負担を減らしどう工事を行うかを考えた時に、今回出た答えが解体をほぼせずに既存の内装と共存していく空間づくりでした。お客様が現場にいるから細かなことも都度確認しながら進めることができたことも在宅工事のメリットの一つだとも思います。

完成後、お客様はリビングではなく、ダイニングテーブルでご夫婦の団欒の時間を過ごすことが多くなったと言っていただいたことも印象深いです。

ちゃぶ台に床座で過ごす畳の居間とは、過ごす気分も切り替わるダイニングスペース。

今後の暮らしの中で、今回リフォームを行わなかった場所にも手を加えていきたいというお客様。年を重ねると共に、家も成長していく姿が今からとても楽しみです。

現場からは以上です。

TBK
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対応地域
東京23区および近郊
ツールボックス工事班|TBK

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毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。

担当:モリムラ / テキスト:モリムラ

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