今回ご相談いただいたお客様はご夫婦と2歳のお子様の3人家族。

お子様の誕生と共に家探しをはじめ、見つけたのがこちらの70㎡のマンションです。お部屋の南北が大通りに面しているものの、空間が細かく区切られているため、日中でもLDKにはほとんど光が入らないような間取りでした。

Before:空間が細かく区切られて、日中でもLDKにはほとんど光が入らないような間取り。

子供がのびのびと走り回れるLDKをつくりたい。在宅勤務が多い旦那様のワークスペース、帰宅が遅くなってもお子様が起きてしまうことのないよう、個室として仕切れる寝室も必要。

暮らしの想像を広げながら、お話しをしていく中で出てきたテーマが「パノラマの家」。

間仕切り壁や、扉が視界の邪魔をせず、部屋の中から窓の外までが見渡せるような。都会のマンションにいながらも広々とした全景を楽しめるプランを目指しました。

2面から採光できる広々と明るいLDKに。

3LDKに細かく仕切られていた間取りを、ご主人のワークスペースとひと繋がりにできるLDK+寝室の1LDKに。LDKは、空間を繋げたことにより約25畳(41㎡)の広さを確保。大通りに面した日当たりの良さを活かし、小さなお子様と家族がのびのびと過ごせる空間になりました。

目の前に高い建物がなく、開けた眺望を楽しめる北側の窓辺には、収納兼ベンチを造作。

寝そべることもできるよう、少しゆったりとしたサイズ感でつくっています。

今はお子様のおもちゃをしまって、遊ぶ場所として活用しているそうですが、将来的には窓外を眺めながら朝食をとったり、本を読みながらうたた寝したり。そんな場所として活躍してくれるかもしれません。

ご主人のワークスペースは場面に応じて引き戸でLDKと仕切れるように。扉を閉めた時にもすりガラスからLDKへと光を取り込めます。

梁下に引き込み式の引き戸。

開いた時はリビングとワークスペースがひと繋がりに。

ワークスペースのクローゼット部分は元々押入れだった場所。隣合う和室からもアクセスできた造りでしたが、ワークスペース側に集約することで、お子様を起こすことなく身支度が完結するような配置にしています。

クローゼット扉は、元々使われていた引き戸のサイズに合わせて『オーダーフラッシュドア』で刷新。壁と一緒に白く塗装することで外からの光をリビングまで届けてくれるレフ板の様な役割も担っています。

視界の抜けを最大限感じてもらえるように、壁を抜いただけではないひと工夫も。
実は解体してみると、想像していたよりも梁の存在感が大きい印象でした。当初予定していたのは躯体をそのまま活かす計画でしたが、現場を見ながら梁だけ白く塗装することに。扉の吊りレールも梁に沿わせることで、存在感を隠すことができました。

天井と梁の塗り分けで、低さを感じさせない工夫をしました。

寝室として使われている和室は、既存の内装を活かした部分です。
和室側にあった押入れの扉をワークスペース側に変更し奥行きを調整。残ったスペースを飾り棚としてリメイクしています。

壁を塗って、既存押入れを少しリメイクし、畳の表替えをしただけ。扉には先ほどの収納と同じく『オーダーフラッシュドア』の「ラワン」合わせて。

近い将来、お子様の個室としても使えるように室内には収納を増設。完全な個室として機能するようにもしています。
足元は、キッチン床に使った『土間タイル』が和室に入り込む様なつくりになっています。これは引き戸を開けた時にも、空間が緩やかに切り替わるようにしたもの。

キッチンの余韻を個室に取り込む。流れを邪魔しないよう目地幅とVレールを揃えています。

引き戸を開けて、ブツっと空間が切り替わるよりも、旅館で客室に入っていく様な、ちょっとゆとりを感じられて、個人的にもとても気に入っている部分です。

間取りの他にも、お客様から「内装は、家具を置いたときに、慎ましく背景であって欲しい」という要望をいただきました。そこで室内はラワン・白壁・モノトーンのタイルと、使う素材の色と種類を極力絞っています。

主張を抑えた背景の中でも、キッチンは象徴的な背景となる様に設えました。
奥様が選んだタイルを背面に、カップやスパイス・キッチン道具をディスプレイできる棚を造作。ライン状の照明を棚板の後ろに仕込み手元灯に。夜は、間接照明の様な柔らかな光の広がりが楽しめます。

棚受けや照明器具を無くすことで、より見せたいものに目が向く様に。

家電の収納場所をパントリーに設けることで生活感を隠したキッチンに。

オープンなキッチンをスッキリ気持ちよく使い続けてもらうためには、収納のつくり方も大切です。食器類などの収納は足元に。また、調理家電や食品のストックは隣接するパントリーに置き場所を設けています。生活感を隠しつつ、いい眺めのキッチンを保てる収納計画にしました。

レンジフードは、既存で使われていたものを再利用。ただ、そのまま取り付けたのでは存在感が出てしまうので、キッチン本体と同じラワン材で覆うように造作しました。アールを付けているのにも理由があります。

角にアールを取り入れた造作レンジフードカバー

引いて眺めるとパントリーや玄関に繋がるアールの開口部がアクセントに。「取り入れてみたかった」というお客様のリクエストを実現したものですが、開口部だけでなく先ほどのレンジフードや水栓もグースネックのもの(『ハンドホース水栓』の「グースネック混合栓」)をセレクト。

所々に配置した曲線のおかげで、優しく柔らかな雰囲気に仕上がりました。

散りばめられたアールのディテール

色や素材の種類を絞った穏やかな雰囲気の室内。その反面「少し色で遊んでみたい」という冒険心もお客様はお持ちでした。

その欲望を爆発させてみたのがこちらのトイレ!
壁と天井まで、ピンクで塗装。扉の内側も同じ色で塗装しているので、扉を閉めると視界がピンク一色に染まります。こんな思い切った挑戦ができるのも、トイレという小さな空間だからこそ。遊びにきた友人にも「ぜひトイレに入ってみて」と勧めているそうです。

お施主さんとチャレンジした全面ピンクのトイレ空間

もうひとつ、カラーを取り入れたのが洗面です。
近いて見るとよく分かるかも……?『T番タイル』にネイビーの目地を合わせているんです。

お施主さんと色々なサンプルを取り寄せて悩んで決めた色味です。

大きな窓があり自然光が入る明るい洗面室。さりげなく効かせた色のおかげでより爽やかに、気持ちよく身支度できる洗面に仕上がりました。

玄関は既存の床をブラックで塗装。明るいLDKとのコントラストが楽しめるように。

実は、不動産関係でお仕事ではリフォームを経験されていたものの、自分の住む空間を考えるのは初めてで「どうすれば良いか分からない」と悩むことが多かったというお客様。打ち合わせでは、絶対に叶えたいことだけでなく「これがやってみたかったんです」という挑戦したいことも全て隠さずリクエストをいただいたおかげで、予算とやりたいことを一緒に整理しながら、うまくバランスを取ることができました。

フルリノベーションせずとも、既存の良いところを一緒に探し出してその物件の長所ととらえて生かしてくことは、単に予算の話ではなく空間づくりを楽しむという点でも最終的な満足度に影響するのではと思います。

この家に住みはじめて2ヶ月経ったお客様。「想像していた以上の空間に住めている。毎日、気持ちが上がります」と嬉しい感想をいただきました。

現場からは以上です。

Before:日中でもほとんど光が入らないLDKでした

After:明るく広々としたLDKに

After:南北に抜けのあるLDKになりました

TBK
オーダーメイドリフォーム
自分好みの空間を、専属スタッフと一緒に実現するフルオーダーリフォーム
対応地域
東京23区および近郊
ツールボックス工事班|TBK

ツールボックス工事班|TBK

toolboxの設計施工チーム。住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。

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毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。

担当:匂坂

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