撮影:中村晃

最上階の角部屋に位置するマンションの一室。広さ65.5㎡の室内には、明るい光が注ぎます。

撮影:中村晃

所々にガラスブロックが使われているのもこのお部屋の特徴。青空や夕日に照らされた建物など、屋外の色彩がゆらゆらと広がります。

撮影:中村晃

3面に窓があり、たっぷり入る陽射しと開放感に溢れたこちらの物件。リノベーションの際には、この特色を活かすため、水回りは窓のない玄関側に集約。その周りをL字に囲うようにキッチンが配置されました。

撮影:中村晃

水回りを囲う壁は、天井まで閉じないつくりに。頭上にも光がまわり空間が奥まで続いていくのを感じさせてくれます。ちょっとした違いでも、暮らす中での開放感の感じ方は全く変わってきそうです。

そして、このお部屋の中で一際視線を奪われるのが、ステンレスのバイブレーション仕上げのキッチン壁ではないでしょうか。

バイブレーション仕上げとは、表面に細かな研磨模様を施し、傷を目立たなくするための加工。キッチン天板ではお馴染みの質感も、こんなに大きな面積で、壁面に使われているのを見るとなんだか新鮮なマテリアルとして見えてきます。

撮影:中村晃

窓からの光を柔らかく反射し、じんわりと広がっていくよう。初夏の爽やかな青い光が似合いそうですし、冬の朝の淡く弱い陽射しも似合うかな……。部屋の中に、外の光を映す素材があるって、なんだか憧れます。

木の小口がのぞくキッチン天板や、『フラットレンジフード』も同じバイブレーション仕上げで統一され、一体感のあるキッチンになっていました。

玄関との間の仕切りには、ガラス板が使われています。

撮影:中村晃

その理由は、玄関を入った時に見える風景に。

撮影:中村晃

部屋の奥まで視界が通り、窓のない玄関にも光を届けてくれます。ただ開放感をつくるのではなく、キッチンの手元や、奥のリビングは白壁によってゆるく目隠しされているのも、配慮を感じられます。

ステンレスやガラス、白壁に躯体のコンクリートなど、無機質な素材で構成された空間。木目のはっきりした床や、ラワンの造作家具がより鮮やかに見えてきます。

撮影:中村晃

中でも気になる、お部屋の中央にある造作収納。水回りの壁と同じように、頭上に隙間を残しながらも、たっぷり飾ったり、物をしまえそう。実はこの収納は移動ができるようになっているんです。

撮影:中村晃

撮影:中村晃

お部屋の中央に配置すれば、2室を仕切る間仕切り壁として機能します。裏側にはハンガーパイプがあり、子供部屋として使う時にも最適。

リビングを広げたい時は、2室に分けずにこんな配置も。

撮影:中村晃

撮影:中村晃

壁面で仕切らない、間取りの可変性を広げる工夫。暮らしの変化に合わせた模様替えだけでなく、季節によって光の入り具合をコントロールするなんて使い方もできるかもしれません。

そしてこちらのお家は、昼だけでなく夜の明かり、照明による演出も参考にしたいポイントがたくさん。

玄関からのお部屋に続く通路上には『シーリングスポット』を連灯で。電球は40W相当の広角を使っていて、帰ってきてからの通り道を柔らかく照らしてくれます。

特に梁の出が大きい場合、天井付近に広がる明かりでは影も大きく出てしまう。そんな場面でのベース照明に、真下に落ちる明かりは向いているのかもしれません(撮影:中村晃)

使っているのは、躯体現しの天井にも違和感を与えない色と質感の「アルミ」。鋼製の露出配管と一体になった照明器具のようにも見えてきます。

撮影:中村晃

撮影:中村晃

ベースとなる天井からの明かりの他、手元を照らす明かりとしてキッチン壁面には『フラットレセップ』の「アルミ」をセレクトいただきました。

撮影:中村晃

撮影:中村晃

電球は、『フロストLED電球』の「アイス」。水菓子のような涼しげな半透明のバルブが、背面のステンレスの鈍い光沢ともよく似合っています。

点灯すると、ガラス板に反射して、もうひとつの照明が浮かび上がっているかのよう。不思議な感覚が味わえます。

カップボード上にも、「フラットレセップ」が使われています。こちらは壁面に合わせて「ホワイト」を。キッチンよりも少し小さめなE17サイズを合わせています。

撮影:中村晃

手元を照らすだけでなく、何かを壁に飾ってみたくなる、さりげない明かり。家の中でも主役ではない、こうした小さな一角でこそ、照明の存在が印象深い場にしてくれるような気がします。

撮影:中村晃

最後に、寝室にも物件の特色を活かすための、明かりの演出が。

撮影:中村晃

玄関を入って左手。ラワンの引き戸を開けると、奥へと伸びる空間が現れます。

撮影:中村晃

中は、小さな寝室に!最上階のためできた、勾配天井のあるこちらの空間は、なんだか屋根裏部屋のようにも思えてきます。

閉じられた空間ですが、窓からはたっぷり光が入ってきます。間取りの形状の関係で、ここだけ床が斜めに貼られているのも、コンパクトさを感じさせない理由なのかもしれません。

照明は天井ではなく、壁付けに2灯。

撮影:中村晃

シンメトリーに配置されたガラスブロックと共に、壁付け照明も左右均等に。バランスのとれた明かりは、格式高いホテルのような落ち着きを与えてくれるように感じます。

撮影:中村晃

外から届く日中の明かりを、ただ取り入れるのではなく、内装の素材や間取りの工夫によって表情豊かに広げたり、夕方から夜にかけての移ろいを楽しむ照明使いのひと工夫。

心地よく住まうために切っても切り離せない、明かりを内装の工夫でどう仕立てていけるか?そんな、新しい視点を与えてくれるような事例です。

株式会社ルーヴィス

古い建物を活用し、既存のいい部分は活かしながら「懐かしい新しさ」に変化させるリノベーションを行っています。
toolboxでも初期からお世話になっている施工パートナーです。

※お住まいになりながらの改修工事はお受けできません。

テキスト:岩崎

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