「nuリノベーション」で、お客様の家づくりに並走するアドバイザーをしている早見将秀さん。結婚を機に購入したマイホームは、駅近、築36年、54㎡のマンション。物件探しにかかった期間は1ヶ月、内見したのは購入したこの家だけ。商店街が賑わう街にあり、駅近、南東の角部屋、オートロック、新耐震物件でペットも可。「こんな好条件の物件はなかなかない!」と、購入を即決したそう。

スピーディーな決断ができたのは、「夫婦ともに馴染みのあるエリア」「通勤しやすい」「売却しやすい」といった“物件選びの条件”を明確にしていたから。ファミリータイプではない約54㎡という広さを選んだのも、将来の住み替えを視野に入れてのこと。共働き夫婦ふたりの「今」にフィットする住まいを優先しつつ、「将来の変化」にも備えた住宅購入を実現しました。

元々の間取りは54㎡に3LDKという、ギュッと詰め込まれた構成でしたが、忙しい共働き夫婦がのびのび過ごせる空間にするべくフルリノベーション。1LDK+WICに生まれ変わった空間には、限られた面積の中でゆとりを感じて暮らすための工夫が、随所に盛り込まれています。

まずは玄関。たたきはモルタル土間、下足入れはクローズ収納にして、すっきりとした印象に。下足入れは足元が少し浮いたフロート型になっていて、フローリングをその下まで伸ばすことで、圧迫感のない空間にしています。

壁面の照明と飾り棚も「ゆとり」を感じさせるポイント。何もない壁にすることもできるけれど、最小限の要素を添えることで、周囲の余白を際立たせました。また、欲張らずに、棚の数を少なく間隔も狭めにしているので、そこに置ける物のサイズが限定されて、自ずと「見せる場所」として整います。

「空間を無駄なく使うために、廊下を極力なくしたいと思っていた」と話す早見さん。洗面台は、玄関とLDKを繋ぐ廊下にレイアウトして、洗面所を兼ねた場所にしました。

幅広の洗面台は、夫婦二人で並んでの身支度も快適。トイレは洗面台の向かいにあり、手洗いも洗面台でできるようにしています。洗濯機も洗面台にビルトインして、見た目スッキリ。朝や夜、洗面台で作業をしながら洗濯機をオン、というふうに、家事動線もスマートです。

内装材のセレクトにも工夫を凝らしています。色は白で統一し、玄関と繋がりを感じるようにしました。

壁幅いっぱいのミラーと水平に伸びるライン照明は、横の広がりを強調。水栓も、洗面台のフラット感を損なわないよう、壁付けの『壁付けセパレート混合水栓』をセレクト。ガラス入りにしたリビングドアからも視線が抜けて、空間の開放感を高めています。

洗面台の横にあるドアが、寝室の入り口。ミニマルな空間に圧迫感を出さないために、マットレスを選択。その分、床を15cmほど上げてスペースをゾーニングしています。

ベッドスペースの反対側にはウォークインクローゼットがあり、実は「浴室」も寝室内にあります。寝室の一角を脱衣所として使って、「ただの通路」になる場所を徹底排除。空間を無駄なく使う工夫がここにも施されていました。

そうやって、最大限の広さを確保したLDK。

空間に伸びやかな印象を与えているのは、長さが4mあるロングキッチン。対面型でなく壁付け型を選んだのは、空間を広く使えるようにするため。下部は全部収納にしており、表に出ているものが少ないのですっきり。冷蔵庫もピッタリ収まっていて気持ちがいい。

「見せる」キッチンとするために、デザインにはこだわりました。天板に使った素材は、「ビールストーン」という左官材。テラゾーとも呼ばれる人造石研ぎ出し仕上げが薄塗りでできる素材です。

キッチンの壁には、水はねや汚れを考えてタイルを貼っていますが、「タイルっぽい見た目にしたくない」と600角の大判タイルをセレクト。落ち着いた艶のある表情が、ビールストーンの天板と馴染んでいます。梁下にピッタリ収まった「フラットレンジフード」もグレーで統一したキッチンに溶け込み、キッチン全体の一体感をつくっています。

リビングは、壁面からテレビとスピーカー以外の要素をなくして、文字通りの「余白」を感じられる空間に。ソファは設計中から決めていたという、「HAY」のMAGS SOFA。このソファを置くために、リビングをなるべく広くしたかったのだそう。

置く家具をあらかじめ決めておくことも、理想の空間イメージやプランニングを具体的にしていくのに、役立ちますね。

と、ここで気づいたのが、天井に照明がない……?

と思ったら、天井の梁にライン照明が仕込まれていました。「天井にはなるべく装飾性を持たせたくなかった」という早見さん。デザイナーからこの照明器具を提案され、実際に使っているお店にも足を運び、採用を決めたそう。

そしてもうひとつ、「エアコン」も見当たらないことに気づきました。一体どこにあるのかというと……

ダイニングテーブルの奥の壁に見える3つの丸。実はこれ、エアコンの風を送り出す吐出口なんです。エアコン本体は、この壁の裏にあるウォークインクローゼットの天井にビルトインされていて、操作はスマホで行っています。

隠蔽したエアコンやビルトインした洗濯機、存在感のない天井照明など、徹底されたミニマルデザインは、自分の「好き・嫌い」をはっきりさせておいたから貫けたこと。

「シンプルでスッキリとした空間が好き」と話す早見さん。設計段階に入る前に、本やインターネットでたくさんの住宅事例を見て、自分の好きな空間イメージを探っていったそう。さらに、やりたいことや各所のイメージをリスト化して、優先順位も決めていたと言います。

限られた期間の中で、たくさんのことを決めなければいけない家づくり。予算調整が必要になる場面も出てきます。そうした時、早見さんのように「やりたいこと」を明確にしておけば、判断がしやすくなり、迷いが出てきた時も「自分の理想」に立ち返って考えることができそうです。

資産としても活きる物件を手に入れ、54㎡という面積を無駄なく使い、自分好みにデザインした空間で、夫婦ふたりの今の暮らしを謳歌する。中古マンションリノベを考えている人にとって実践的なアイデアが満載の、スマートな家づくり事例です。

※こちらの事例はimageboxでも詳細をご確認いただけます。

nuリノベーション(株式会社ニューユニークス)

“いい時間をつくるリノベーション”をキャッチコピーに、ヒアリング重視のオーダー型リノベーションを提供。アドバイザー、設計デザイナー、施工管理のチーム体制で、物件探しから資金計画・設計・施工・インテリアまで、ワンストップで家づくりをサポートしています。

テキスト:サトウ

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