築50年のヴィンテージマンションの一室をリノベーションして、新しい暮らしをはじめた高山都さん。

モデルや女優として幅広く活躍している高山さんにとって家は、美しい器と料理をはじめとした日々の暮らしを発信する際の背景ともなる大切な場所です。

「持ち家じゃないから思い通りにはできない」と、何かと我慢することも多い賃貸ですが、高山さんはどうしても譲れなかったポイントを絞って大家さんに交渉し、工事費は自分持ちでtoolboxとリノベーションをすることに。

予算と時間が限られた中で理想を形にしていく方法や、苦手だと思っていたインテリアとの向き合い方。toolboxや信頼できるプロに相談しながら住まいを考えた経験は、沢山の気づきを与えてくれたそう。

いつの間にか囚われていた常識や思い込みを取り払い「私はこのやり方でよかったんだ!」と答えを出すまでに考えたこと、そして家づくりをやり切った今、改めて思うことを取材してきました。

賃貸、だけど変えてみたい!

高山さんが引越し先に選んだのは、知り合いの方が事務所として使っていたマンションの一室。

過去にアルバイトとしてそこに通っていたことがあり「こんな家に住めたらいいな」と憧れを抱いていたそう。その知り合いの方が退去することを知り、住み継ぐことを決意。

しかし、自分が住むことを具体的に考えた時に、今の暮らしとフィットしない部分が出てきたと言います。

「築年数が経ってるお家ということは理解していたんです。ただ、いざ自分が住むとなった時にどうしよう!?と思って……。
特にキッチンは、私にとって使いづらいカウンターが付いていたり、持っている食器を収納できなかったり。『変えたいな』と思う部分が沢山あったんです」

入居時期が迫ってくる中で、悩んでいた高山さんの道を開いたのは「大家さんに交渉して、リノベーションしてみたら?」という友人からのアドバイスでした。

そこで「どうしてもここだけは変えたいんです!」と大家さんに直談判したところ、自己費用でという前提の元、無事要望が通りリノベーションを進めることに。

また、高山さんのリノベーション相談に乗っていたご友人からのご紹介で、toolboxが施工を担当させていただくことになりました。

使いやすさと見た目の美しさにこだわった、アイコニックな存在としてのキッチン

とはいえ、賃貸ということもあり予算はあまりかけられない上、引っ越しのタイミングに間に合う様、工期をできるだけ短くする必要がありました。限られた条件の中で、やりたいことを伝え、toolboxから出された提案を取捨選択していった高山さん。

その中でも、何よりこだわったのはキッチンでした。

「キッチンは自分の家の中でも、一番アイコニックな場所にしたかったんです。そこで過ごす時間も長いし、仕事でキッチンを背景に写真を撮る機会も多いので。

作業がしやすいこと・持っている食器を収納できること・見た目が美しいことの3つを要望として伝え、提案してもらいました」

こちらが施工前のキッチンの様子。キッチン本体など、綺麗な状態ではあるものの、全体的に少し時代を感じる印象でした。

完成したキッチンの様子。

まず目に飛び込んでくるカウンターは、元々あったものを撤去し、新設したもの。腰壁を『クラシックリブパネル』で仕上げたことで、北欧のヴィンテージ家具の様な品と美しさがあります。

オーク材の天板は、耐水性のあるステイン系塗料で仕上げ、裏面は食器やカップをしまえる仕様になっていたりと実用性も兼ね備えたカウンターになりました。

カウンターの背景は白を基調としたシンプルな内装に。実は白いキッチン本体は、元からあった既製品。予算の都合でこれはそのまま活かし、周辺を作り込んでいくことで、全く違った雰囲気に変化させています。

正面の壁はマットな質感の『塗装のキッチンパネル』。『アメリカンスイッチ』など細かなパーツもアクセントに。

梁下にすっきりと収まっているのは『フラットレンジフード』。存在を主張せず、背景に溶け込んでいます。レンジフード下、コンロの正面の壁には、タフに使える『ハンガーバー』を使って、道具を引っ掛けておける仕様に。

手を伸ばせば必要な道具に手が届き、無駄な動作がない。

そんな背景の中で、小口に無垢材を貼った造作の棚に目が留まります。

「ここは色の綺麗な食器や、形が気に入っているカップなどを並べて、見せる収納として使っています。」

白い背景の中で、見せるポイントをぎゅっと絞った飾り棚。

器に造詣の深い高山さん。コツコツとコレクションしてきた大切な食器たちを見せながらしまえるオープンな棚は、選ぶ楽しみを広げてくれそうです。

使いやすさにも直結する収納や道具の配置は、どのように計画されたのでしょうか?

「実は収納を考えるのは大の苦手なんです。なので、まず最初に持っている食器を全部みてもらって、きちんと収まる様に計画してもらいました。冷蔵庫とか家電も含めて、手持ちのもののサイズを細かく測ってもらったのには驚きました!

ピッタリ隙間なく作られていたり、(壁に下地を入れて)将来棚板が増やせる様な場所もあったり。『こういう風に作るんだ〜』と感動しましたね」

冷蔵庫とキッチンの隙間にピッタリ収まる造作棚。ゴミ箱まできっちり収まっているのが気持ち良い!

欲しかったのは「眠るのが好きになる空間」

次にこだわったのが「眠りのための空間」。実は、以前から不眠症に悩んでいたという高山さん。

「以前住んでいた家の寝室は、共用玄関の近くに位置していて、人の出入りが多かったり、カーテンも開けられなくて暗いし、あまり好きな場所ではなかったんですよね。だからこの家ではとにかく自分が心地よく感じる空間にしたいなと思って」

無塗装の『チェッカーパーケット』を『ルビオモノコート ダークオーク』で仕上げて、深みのある色合いに。

白を基調とした明るい内装はそのまま活かし、カーペットだった床だけを変えることに。「お部屋に入った瞬間に好きだと思える空間にしたい」と足元に選んだのは、細かな寄木の表情が温かみを感じる「チェッカーパーケット」でした。

「この床は友達みんなから『素敵!』って言ってもらえます。写真を撮る時にも背景としてすごく映えるし、とっても気に入っています。フローリングって、広い面積だと価格もそれなりにしてしまうけど、これは選んでよかったなと思っています」

高山さんのInstagram(@miyare38)より。家の中に、思わずカメラを手にとってしまう様なお気に入りの背景があるのって良いですね。

心地よさを感じる為に、厳選した物だけ置いて、広々とした空間を保っているそう。窓辺に置いたグリーンや高知の作家さんの彫刻など、自分の好きなものに囲まれた空間で眠る様になってから、睡眠のリズムも自然と改善されたのだとか!

「このお部屋は特に、東向きで朝日に強制的に起こされるので、早起きが習慣になりました。やっぱり、生活していく上で、どんな空間で過ごすかって大事なんだなって実感しましたね」

壁や天井など真っ白な内装に、クラフト感のある床材で木の温かみをプラス。ちょっとレトロなブラケットライトにもお似合いな空間に。

苦手意識を生んでいたのは「こうあるべき」という思い込みだった

「味が出ていたり、ちょっと隙のあるものに惹かれる」という高山さんによって丁寧にセレクトされた家具や小物が並ぶリビング。

北欧ヴィンテージのダイニングテーブルや、カリフォルニアを拠点に活動する「Cisco home」の吹きガラスのペンダントライト、キリムのラグ……。「○○テイスト」といった決まった枠組みではなく、多様な背景をもった家具が調和したミクスチャースタイル。
お部屋のどの背景も、高山さんにとてもよく似合っていると感じます。

高山さんは、リノベーション同様、自身の空間のインテリアを一から考えていくのも、実ははじめての経験だったそう。

「以前から、空間をどうやって使うのか考えるのは難しいなと感じていて。友人に『なんてもったいない使い方をしてるの!』って言われたりするくらい(笑)。広さのあるこの家を上手に使うために、何から決めていけば良いの?という状態だったんです」

そんな状態からスタートした空間づくりでしたが、お部屋全体の雰囲気を決めていく点では、キッチンまわりのイメージが先に固まったことが拠り所になったと振り返ります。

「キッチンカウンターの木と扉のブルーグレーは昔からずっと好きな組み合わせなんです。色味や質感を見るのは得意なので、提案してもらった色のサンプルから選んでいくのはすごく楽しい時間でしたね」

扉の塗装色はイメージを写真で伝えて形に。元々の扉のクラシカルな印象を引き立てる仕上がりに。

また、家具選びの際には、仕事で一緒になったインテリアスタイリストの石井佳苗さんに相談。印象に残ったエピソードを教えてもらいました。

「最初にこの丸いダイニングテーブルは置きたいと決めていて、でもソファーも置くとなるとスペースがないなぁ……と悩んでいた時に『一人暮らしでそんなソファ使わないんじゃない?』とアドバイスをもらって、『確かに!』とすごく腑に落ちたんですね。何となく、インテリアのセオリーみたいなものに囚われていたなって気づいたんです」

ハンスJ.ウェグナーのヴィンテージチェアは、日本製の古いガラスキャビネットの隣に置いてお気に入りの居場所に。

リビングには2人掛け以上のソファーにテレビボード・カフェテーブルといった風に、一式セットで揃えることを想定される方も多いはず。何を置くかでなく、自分がどう過ごしたいかを考えることが重要なんだと気がついたんだとか。

「自分が大事にしたいのは、人が集まる場所としてのダイニングテーブル。家でテレビもそんなに見ないし、一人がけのソファがあれば充分。そんな風に、過ごし方って人によって違うし、自分が大切にするもので自由に選んで良いんだって考えたら、気楽に考えられる様になったんです」

住まいを仕立てる時に必要なのは、やはり自分が何を大切にしたいか。この上なくシンプルなことですが、それを貫くのは意外と難しいもの。

高山さんの様に、積極的にその道のプロの力を借りて視野を広げていくことで、「こうあるべき」に囚われている自分に改めて気づけるのかもしれません。

自分にとって、一番心地よい選択肢を

高山さんはインテリアに限ったことではなく、住まい方の選択についても、「自分がどうしたいか」が一番大切なんだと振り返ります。

「引っ越す前は、周囲に『こうあるべき』と言われて焦ったり、そうできない自分に悩んだり……なんとなく閉塞感があった時期で。その状況を変えてみたくて、ちょっと冒険してみようと思ったんです。

特に『賃貸なのにお金をかけるのは、もったいない』と言われることもあったのですが、自分が今一番心地よいことを優先してみても良いのかなって。結果、やってみて後悔はしていないし、逆に、こういう選択肢もあるんだよってことを提示できた様な気がします。

自分が選択して、家づくりをやりきった経験、私が作りあげた空間が、『人と比べなくて良いんだ』って気づかせてくれたし、何より楽しいと思えたんです」

「家づくりにかけた手間も時間も、自分の暮らしへの投資だと思えた」という言葉がとても印象的でした。

完成した空間には、大家さんも見に来てくれて「あらいいじゃない、億ションみたい!(笑)」という感想をいただいたそう。

住んでいる人がそのお部屋を大切に思っていることを知ることができて、大家さんにとっても嬉しい体験になったのではないでしょうか。

契約の時以外に、大家さんと会話したことがないという方も多いと思いますが、そのお部屋がよくなるためのプラスの意見は前向きに捉えてもらえるケースも増えてきています。部分的にお金を出してくれることもあれば、次の住まい手にうまく引き継げる部分は、改装の許可をもらえると同時に原状回復免除となることも。

住まい方を選択する時に、従来の常識に囚われることなく要望を伝えてみることで、選択肢も広がっていくのかもしれません。

「もし、将来この家を引っ越すことになっても、この空間のまま引き継いでもらえたら嬉しいですね」と語っていた高山さん。

賃貸でも、こんな風に愛着を抱ける空間で暮らせることは、とても豊かな時間の様に思います。

プロとのセッションを楽しむ家づくり

窓辺には「朝日が差し込む時間、風にそよぐ姿が綺麗!」という『ガーゼカーテン』が。

新しい家では、お部屋が広くなった分、買ってきた花を沢山活けたり、大きめのグリーンを置いてみたり。「古いものも新しいものも混ぜて、あえてごちゃっとさせている」というガラスキャビネットを眺めながら食事を楽しんだり。暮らしの中で好きな時間や風景が増えた高山さん。

はじめての家づくりを経験して、住まいを見る視点に変化はあったのでしょうか。

「今回の家づくりを通して、自分で選んでも良い、ここまで決められるんだって分かって、自分で空間を作るのはすごく楽しいと思えたんですね。

予算とのバランスで諦めたことも、次回やるならどの位で実現できるかな……と、自分で組み立てられる様になったのは大きな変化だと思います。

ホテルに泊まった時に素敵な洗面空間だったら、水栓のハンドル何使っているのかなーとか、普段の生活の中で細かなパーツに興味が向くようになりました」

最後に、これから家づくりを考えている人にこんなメッセージをいただきました。

「家づくりはセッションだなと思っていて。それぞれの分野のプロがいるんだから、色々不安はあるかもしれないけど、お任せした方が良いものができるし、信じてみると楽しい!

toolboxさんは、センスがあることが事前に分かっていたし、お任せすることに不安がなかった。これから家づくりをする方には、そんな信頼できるプロとのセッションを楽しんでもらいたいなと思いました」

こんなに褒めていただき恐縮です……!
普段から沢山のプロの方と仕事を共にする高山さんならではのアドバイスですね!

要望を伝え、提案・意見をもらう。そこに相手へのリスペクトや「いいものになりそう」という予感があれば、家づくりはもっと幸せな体験になっていくのかもしれません。

そして、そんな関係を築く為には、まず「自分がどうしたいか」にきちんと向き合うことが大切だと高山さんのお話を聞いて改めて思いました。

ツールボックス工事班|TBK

toolboxの設計施工チーム。

住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。

 

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※毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。

高山さんの新しい住まいでの暮らしや、こだわりの空間はInstagramでも見ることができます。

テキスト:岩崎