住宅街の中に佇むのはガルバリウム鋼板と木の組み合わせが印象的な四角い建物。普通のようでいてなんとも異質な存在感。1Fは道路に面して大きく開き、内部が透けて見えるような……つい目に留まってしまいます。これは中が気になる!ということで早速見ていきましょう。

外から透けて見えていたのはお客様とのミーティングスペース。道路に面して大きく開かれた開口部からは街の風景が自然と視線に入り込んできます。まるで屋外空間でミーティングをしているような開放感がありますね。

左側の障子の奥に覗くのはワークスペースです。お客様がいないときには開けた状態で外を眺めながら仕事、なんてこともできます。仕事をしながらも自然と意識が外に向くようなつくりになっています。

窓際を見てみると、まるで外部が入り込んでいるかのように、モルタル→砂利→モルタルと繋がっています。中にいてもまるで外にいるような、ディテールからもこだわりが感じられます。

ミーティングスペースの奥にはワークスペース。ミーティングスペースとは異なり窓は少なく、おこもり感がある集中しやすい空間です。

しかし明るさはしっかりと確保。トップライトを設けたり、階段の蹴込み板を無くして上からも光を取り入れたり、柔らかい光が差し込みます。

既存残しのゴツゴツとした柱の対比が印象的な、合板で作られた給湯スペース。一枚の板で作られたカウンターがなんとも言えない浮遊感を感じさせます。要素を減らしたスタイリッシュなフォルムは窓の向こうの風景も遮りません。

ちょっと一息着くタイミングにも街の様子が自然と目に入ることで、デスクの前とは違ったアイデアが浮かんでくるような気がします。

打って変わって落ち着いた雰囲気の洗面スペースも同じく合板で設えてあります。クロームが輝く『壁付けセパレート混合水栓』が壁面のアクセサリーのように埋め込まれていますね。要素を少なくコンパクトにまとめられている空間は、一つ一つのパーツが際立ち、引き立てあっています。

オフィスの中央には蹴込み板を無くしたスケルトン階段があります。

ここの素材使いも注目してもらいたいところ。階段を囲っているのはホームセンターでもよく見かけるポリカーボネート。間仕切りとしての役目は果たしながらも、柔らかく抜ける光が空間を照らしてくれます。

階段を上がって2階にはコワーキングスペース。時の流れを感じる梁や柱の重厚感とポリカーボネートや合板の軽やかさが、グレー塗装の落ち着いた雰囲気でうまくまとまっています。なんともグッドなバランス感。

オフィスの正面には道路に面して作られた縁側が。ここは地域の人の休憩スペースでもあり、働く人の休憩スペースでもあります。

こういった自然と地域の人と繋がることができる居場所があることで、お客様とスタッフではなくこの街のいち住人として、より街を知り、同じ目線で見ることができるようになるのではないでしょうか。

お散歩中のご近所さんと縁側でちょっと世間話。この風景、素敵です。

内部空間でも外部空間の風景や光をうまく取り入れることで、物理的にも心理的にも街と繋がることができる、そんな想いが伝わってくる事例のご紹介でした。

note architects

鎌松 亮が主宰する設計事務所。「環境的なもの」「社会的なもの」「お客様に関わるもの」建築における3つの大きな文脈を読み解き、本質を形にすることで、“その場所だからできる建築”の実現を目指しています。

紹介している商品

  • 写真の「壁付けセパレート混合水栓 洗面用 クローム L178」は仕様変更前のもので、現在販売しているものとは仕様が異なります。
テキスト:しもむら

関連する事例記事

「広いリビング」だけじゃない。家事ラク間取りが「のんびり時間」を生む、100㎡超えの住まい
「広いリビング」だけじゃない。家事ラク間取りが「のんびり時間」を生む、100㎡超えの住まい
誰もが憧れる「広いリビング」。でも、そこでゆっくり「くつろぐ時間」がなければ、本末転倒。子どもが個室に引きこもるのを防ぐ工夫や家事ラク要素を盛り込んで、「広いリビングで家族がくつろぐ時間」をつくり出した事例をご紹介します。
泊まれる“町工場”!?下町感たっぷり、東大阪の商店街のまちごと堪能するホテル
泊まれる“町工場”!?下町感たっぷり、東大阪の商店街のまちごと堪能するホテル
商店街と町工場がにぎわう東大阪・布施にある SEKAI HOTEL Osaka Fuse。 夕食は商店街の飲食店で、入浴は昔ながらの銭湯で。朝食はにぎわいのある喫茶店で。東大阪・布施の商店街を“まちごとホテル”として楽しめる、町工場をリノベした客室をご紹介します。
10畳の和室が水回り付きのホテルライクな寝室に!部分リノベで叶えた、猫との快適なプライベートルーム
10畳の和室が水回り付きのホテルライクな寝室に!部分リノベで叶えた、猫との快適なプライベートルーム
実家を引き継ぎ、築45年の和室を寝室として使っていたお施主さま。寒さに悩まされていたその空間を、「寝る」「身支度する」「仕事する」「猫とくつろぐ」ができる、プライベートルームへと部分リノベしました。
ミッドセンチュリーと下北沢カルチャーが交差する、“泊まれるリビング”
ミッドセンチュリーと下北沢カルチャーが交差する、“泊まれるリビング”
タイムレスなミッドセンチュリーデザインに、下北沢カルチャーをプラスした空間。ホテルとして快適に過ごせるのはもちろん、仲間と集まって暮らすように楽しめる工夫もいっぱい。家族だけのマイホームとはまた違う、“仲間と過ごす場所”の事例が届きました。