兄弟サイト「東京R不動産」のスタッフが、沖縄に物件を購入して、自らの別荘兼ホテルをオープンさせました。

なぜ遠い沖縄の地で築古物件を買ったのか。どこにこだわって改装をしていったのか、せっかくなので本人から語ってもらいましょう。

「不動産で遊ぼう!」をテーマに、自ら不動産を取得し、企画・改装・賃貸する一連の流れをホビーとして楽しんでいる、東京R不動産スタッフの室田です。

2019年6月に、沖縄本島の北部の今帰仁村(なきじんそん)という、那覇から車で約1時間半離れた小さな村にある昭和40年築の平屋を購入して、改装して宿としてオープンさせました。

妻の実家のある那覇に毎年里帰りで訪れるたびに、いつか沖縄で自分の拠点が持てたらと妄想することかれこれ8年程、心揺さぶられる物件が出ることを待ち続けていました。

そんなある日、相場の約半額では?という破格でこの物件をネット上で見つけた僕は、その日のうちに飛行機とホテルを手配して、翌日の昼には現地に行き購入意思を伝えてきました。

↑BEFORE

相場よりかなり割安で買えたことは間違いないものの、この物件はいわゆる沖縄っぽい魅力が乏しく、隣地にはコピペの建売住宅が立ち並び、反対側の隣地には大手アパートメーカーが4階建アパートを建築中。

そこで、この物件をどのように料理するか?の作戦を練るのが、ホビーとして不動産を楽しむ醍醐味です。

↑余計なものを解体した状態

以下、写真とセットでどう考えたのか、改修のポイントを解説していきます。

・敷地面積は200㎡超と中途半端に広い
→ 庭で寛げるようにすると、隣地の建売住宅とアパートが気になるので、あえて庭は潰して離れを増築しました。

庭はあくまでも母屋と離れをつなぐ導線としてのみ機能させ、そこで立ち止まらせないようにしたうえで、植栽にはしっかりこだわりました。

ポリカで外壁を作った離れのキッチン棟

センスのいいHADANAさんにお願いした植栽。

天候を気にせず屋内BBQが楽しめる離れの「ダイニングキッチン棟」を作ることで、「離れの小屋で家族や仲間とBBQを楽しんだ宿」として記憶に残るように。

「オーダーキッチン天板」を沖縄らしい花ブロックの上に載せる形で作りました。

WEBERのアメリカンなBBQグリル。

冷蔵庫や、基本的な調味料、十分な調理道具と食器類を用意してあるので、スーパーで食材を買ってくれば、ここで自炊ができます。

元は海の家のようなファンシーな水色だった母屋は、4.4mの圧倒的な天高と、セメント瓦現しという沖縄でしか見られない仕上げをすることで、沖縄の古民家に宿泊した雰囲気も楽しめるように。

母屋と離れの外灯に用いた「ミルクガラス照明」は、どこか懐かしい雰囲気を出すのに一役買ってくれています。千昌夫でいうと額のホクロの位置にあるやつです。

母屋の寝室のあり方をどう考えるか。

カップル、家族、学生同士や仕事仲間、女子旅や複数家族の宿泊などあらゆるニーズに応えられるよう、しっかり区画された3部屋に最大7人泊まれるベッドを確保しました。

沖縄で工事をするにあたって難しかったのは、とにかく送料がかかるので、外装とフローリングは沖縄県内で調達できるものを使わざるを得なかったこと。

結果的に、安く手に入る無垢の杉板に、小川耕太郎∞百合子社の「ウッドロングエコ」を塗布して数日置くことで、グレイッシュな経年劣化した雰囲気を作りました。

洗面台には「アイアンスタンドシンク」、「ラワンの洗面ミラー」、「ボールライト」を設置。幅の狭いスペースですが、「棒棚受け」で、ちょっとした棚もつくってソープ置き場としました。

ドアノブは、「ステンレスドアノブ」のラウンドロック。

シャワールームの照明には、モルタルの無機質な印象をやわらげる目的で、乳白の「ボールライト」を使用しています。

本当はタオル掛けの「ハンガーバー」や、トイレには「木のペーパーホルダー」も使用しているのですが、すみません、写真がありませんでした…。

ここで、いったん建物を離れて、この建物が建つ周辺エリアのご紹介。

沖縄本島に泊まる人の多くが一度は訪れる、美ら海水族館まで車で20分という立地です。

周辺ではカヌーやトレッキングなど、やんばるの自然ツアーが楽しめたり、車で沖縄本島で一番綺麗と言われている赤墓ビーチまで10分、人気の古宇利島まで13分、有名な観光スポットである備瀬のフクギ並木まで17分で行けます。

物件から徒歩30秒の距離に、料理家の根本きこさんの手がける「波羅蜜」という人気のカフェがあり、センスのいいお客さんがひっきりなしに来ています。

こんな周辺立地で運営する宿泊施設です。

そこで僕が導き出した答えは、
「センスのいいお客さんにちゃんと評価してもらえるよう、工事とインテリアは中途半端にならないようしっかりと予算をかける」
というものでした。

また同時にこのプロジェクトで、僕が常日頃から感じていた、「自分が泊まりたいと思える宿が、世の中にはなんでこんなに少ないんだろう?」という素朴な疑問の解決と、所有しても結局たいして行かず、それならたまにいい宿に泊まった方がいいという結論になりがちな「別荘」の持ち方のアップデートも目指そうと決めました。

今回、都心ではたらく僕の遠隔地の現場という心細さを全力サポートしてくれたのが、「沖縄不動産文庫」を運営する、「ディ・スペック株式会社」さん。不動産仲介だけでなく設計から施工のアレンジまでしてくれる彼らに現場監理を任せられたおかげで、安心していられました。

そしてインテリアは、toolboxスタッフの渋谷南人にディレクションを依頼。様々な国籍や年代の家具・小物をミックスすることで、どこか無国籍で独特な雰囲気を目指しました。

普通の宿であれば、インテリアはコストや清掃のしやすさ、盗まれないことなどを優先して当然ですが、別荘を開放するというコンセプトなので、効率やコスパなどは一切無視して好きなものだけ集めました。

自己使用で完結する別荘を所有するのは重たいけれど、自分ごととして好きなものを丁寧に集めた別荘を、宿として世界中の方々に公開するというアプローチによって、ただの金食い虫ではなく、経済的に持続可能な形で別荘を所有できるのではないか?

この方法ならば、効率重視で作られたホテルや、いかにもデザインにこだわりました感満載のデザイナーズホテルとはまったく異なる、居心地のよいオルタナティブなホテルを作れるのではないか?

そんな試みが本当に成立するのかを、現在チャレンジ中です。

ここは僕の別荘であるだけでなく、皆さんが仲間と楽しく過ごすための別荘です。ご興味お持ちいただけた方はぜひ、毎年仲間とこの別荘に集まるルールを作ってください 笑。お待ちしています!

(Photo : 渋谷南人)

irregular INN Nakijin

住所:沖縄県国頭郡今帰仁村仲宗根269
URL:http://irregular.co.jp/inn/nakijin/

  • 写真の「ラワンの洗面ミラー」は仕様変更前のものになります。現在販売しているものとはサイズが異なります。
  • 「ボールライト 乳白×ブラック」は販売を終了しました。

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