施主は夫婦と7歳の長男、7カ月の長女の4人家族。同じエリアの賃貸戸建てからの住み替えで、地域を流れる大きな2つの河川が氾濫した場合を考慮して、高さのあるマンションをマイホームに選びました。
ご主人は建築士で、「自分で設計する」という選択肢もあったものの、「自分にはない感性に触れて刺激を受けたい」というクリエイターだからこその思いから、他者に依頼することを選択。数社を検討するなかで、最も施工事例に惹かれたというnuリノベーションにコンタクトをとり、担当アドバイザーや担当デザイナーと波長が合ったことから、同社への依頼を決めたそう。
リノベーションされた約64㎡のマンションに広がるのは、大きな土間と畳の小上がり。掃き出し窓や個室の間仕切りには障子が嵌め込まれ、昔ながらの民家や旅館を思わせる「和」の趣が漂っていました。
LDKは、台所を備えた土間、その先に“茶の間”が続く、日本の昔の民家を踏襲した空間構成。
土間の床仕上げに使ったのは天然素材からつくられているリノリウムで、ひんやりとしない肌触りと抗菌性を備えており、小さなお子さんが床で遊ぶ際にも安心です。
小上がりになった畳敷きの“茶の間”は約6帖あり、ごろりと寝転がってくつろぐのに十分な広さ。土間に足を降ろして腰掛けられる部分は、手をかけて立ち上がる動作に考慮して、手触りの良いアッシュの幅はぎ材を使い、小口を細く加工。見た目もすっきりさせました。
そしてこの空間の和の雰囲気を一層洗練させているのが、各所に設えられたtoolboxの『障子』。桟と組子を極力細くして減らした、モダンな佇まいが特徴のアイテムです。
LDKの一角につくった3.6帖の寝室と3帖のワークスペースは、枠だけの欄間と『障子』で軽やかに仕切りました。閉じていても空間の奥行きやつながりを感じられる、和の“間合い”を取り入れています。
建具と棚のライン、畳の縁の位置など、水平垂直のラインをきっちりと揃えていることも、美しさを感じるポイント。
個室の間仕切りと掃き出し窓の『障子』はサイズを揃えることで、間仕切りにも、掃き出し窓にも使えるようにしています。障子を入れ替えることで、ワークスペースをゲストルームとして閉じたい時や、子供部屋として使うことになった際にも対応できるようになっているんです。
昔の日本の民家では、季節や部屋の使い方に合わせて襖や簾戸、障子を入れ替えて生活していたそう。
和の装いだけでなく、和の建築の「知恵」も取り入れているところに、デザイナーの巧みな工夫を感じます。
意外にも、デザインテイストへの明確な希望はなかったというお施主様。「和」を取り入れるきっかけになったのは、担当デザイナーが過去に古民家リノベーションを手掛けていたこと。それを知ったお施主さまが、「和」のテーマを着想。「リビングに家族の居場所をたくさんつくりたい」「ごろごろできる場所が欲しい」というお施主様の要望も反映しやすいということで、「和」をテーマにした空間づくりに行きつきました。
和の空間は、お施主様が持っていた北欧の家具や照明とも好相性。アルヴァ・アアルトのペンダントライト「A331 ビーハイブ」、アルネ・ヤコブセンの「セブンチェア」、ハンス J. ウェグナーの「Yチェア」、そして日本生まれの名作家具である飛騨産業のロッキングチェアや、天童木工の低座椅子も、しっくりと馴染んでいます。
「実は設計途中で予算が足りなくなったのですが、そこで費用を削ってしまうと満足度も削れてしまうので、思い切って予算を増やしました。実際に住んでみて、変に妥協しなくて本当によかったと思っています」とお施主様。
とはいえ、かけるべきところに費用をかけるために、コストダウンの工夫もしっかり施されています。リフォーム済みで新しい設備が設置されていたキッチン・洗面・風呂・トイレは、既存を利用。キッチンは柄入りの白い面材だったものを、部屋のトーンに合わせてグレーの面材に変更するという手法でリメイクしました。収納キャビネットを一部外して、食洗機も追加しています。
ダイニング横の「木の箱」の中は、約2.3帖の子供部屋。寝室とワークスペースと子供部屋、3つの個室はミニマムなサイズでつくり、子供たちの成長に合わせて使い方を変えていけるようにしています。
家族でくつろぐLDKの開放感と美観を尊重するため、収納にもさまざまな工夫が施されていました。
寝室には、服を掛けられるハンガーパイプと無印良品の収納ボックスがピッタリ収まるニッチ収納を造作。玄関には、家族4人それぞれの通勤バッグやランドセルが収納できる棚をつくりました。
玄関の棚にはコンセントが仕込まれており、仕事用スマートフォンや学校のタブレットをこの場で充電できます。「リビングや寝室で充電していて忘れた!」といった事態を避けられるのは、いいですね。さらに、ロールスクリーンを降ろせば収納物をまるっと目隠しできるという、実にスマートな収納術は参考になります。
ダイニング横の、白い壁のように見える部分も、実は大容量の収納。既製品の折れ戸を使いつつ、建具枠を付けないデザインにすることで、収納っぽさを感じさせないようにしました。キッチンの横には約2.0帖のパントリーもあり、冷蔵庫やキッチン家電を格納しています。
64㎡という面積の中で、3つの個室と収納要素をしっかり確保しつつ、開放感も両立させました。
そうした細やかな工夫を積み重ねてできた、家族でのびのびくつろぐことに専念できる“お茶の間”リビング。お施主様は、お風呂上がりに小上がりで扇風機の風を浴びていると、旅館に来たような気持ちになるのだそう。端正につくり込まれた空間は、お施主さまお気に入りの家具やアート、民芸品も映え、部屋を眺めているだけでも心地よい気持ちになれそうです。
「とにかくストレスが少ないですし、気に入らない部分や不便なことが一切ない。デザイナーさんと一緒に考え抜いた甲斐がありました」と話すお施主様。デザイナーへの信頼と感性への共感が導いた、日常の中で極上の安らぎを感じられる住まいです。
※こちらの事例はimageboxでも詳細をご確認いただけます。
nuリノベーション(株式会社ニューユニークス)
“いい時間をつくるリノベーション”をキャッチコピーに、ヒアリング重視のオーダー型リノベーションを提供。アドバイザー、設計デザイナー、施工管理のチーム体制で、物件探しから資金計画・設計・施工・インテリアまで、ワンストップで家づくりをサポートしています。