toolboxスタッフである、竹沢の自邸、新築・那須への地方移住実録。断熱、地方移住、虫、車生活などのキーワードが気になる方にマニアックにお届けする全4話の最終回です。

高気密高断熱へのこだわり

冬暖かくて、夏涼しい、一年を通して快適な家。優先順位はともかく、誰しもが望んでいることではないでしょうか。

東京の築40年のマンションに住んでいるときのこと。気密性のない玄関ドアから、冬場は冷気が入ってきました。廊下からリビングに入るドアを閉めていないと寒かったので、息子や夫の開けっぱなしにイラっとすることもありました。

移住先の栃木県・那須は山が近く、東京より寒い地域。群馬県の実家が寒かったので「戸建は寒い」というイメージがあり、家を建てる際は冬でも快適に暮らせる家にしたいと思っていました。

日本は欧米の国々に比べると「省エネ基準」と呼ばれる、国の定める基準値が先進国の中で最低レベル。「断熱気密」への取り組みが極端に遅れていることで有名です。ただ、「断熱気密」が重要と分かっていても、この世界は、知らないことだらけ。内装の仕事をしていても、正直まったく知識がありませんでした。

当然ながら気密断熱の性能によって工事の見積りが変わってきます。家を建てる土地が決まり、工務店さんからその土地に合わせたプランの提案を待っている頃の私は、本を読んだり、毎日ひたすらYouTubeで「気密断熱」と検索していました。勉強が嫌いな私にはYouTubeはわかりやすく、通勤時間に見られるのもありがたかった。

よく見ていたチャンネルは以下です。

兵庫、大阪で高断熱高気密住宅専門の建築家集団 松尾設計室
げげさん
「家づくりの知識」 オガスタ新潟の社長チャンネル
姫路の工務店クオホーム 注文住宅
家づくり せやま大学【ちょうどいい塩梅の家づくり】

ユーザー目線を大切にしながら専門家が解説してくれる、こちらの本がとても参考になりました。「あたらしい家づくりの教科書」「これからのリノベーション 断熱・気密編

どこにどうやって依頼するか

我が家が地元の工務店さんに決めた理由は、Vol.1でも書きましたが、正直言ってデザインセンスでした。当初、同時に高気密高断熱を得意とした設計事務所・工務店もたくさん調べました。
いいな、と思うところはあったのですが、対応エリア外……。それに、那須の気候やエリアの特徴をよく知っている人のほうが良いと思い、地元の会社に絞って探し直しました。
探していて思ったのは「性能とビジュアルの両方で満足いく会社がない」ということ。

デザインについては好みが分かれますし、高気密高断熱はそれなりに高額になるため、私の求める条件を万人が好むとは限りません。Vol.3の最後で「自分の価値基準に合っていて、満足のいく家が良い家」だと私の考えをお伝えしましたが、自分が求める「高気密高断熱×ビジュアル満足」はなかなか難しい要望なのだと気付かされました。

こんな海外みたいな家ばかりピンタレストで見てまして。こんな雰囲気で気密断熱性能も求めるなんて、理想が高いのはわかってます……

決めた希望数値はこちら

最終的に依頼した数値は、「国が推奨している省エネ基準」や「ZEH基準」よりも高い、HEAT20 G1相当でC値は1.0以下、UA値は0.46を希望しました。(那須塩原は地域区分4)

C値とは建築した建物の気密性能を示す値。家全体の延べ床面積に対する隙間の総量を、気密測定で計測します。UA値は断熱性能を表す値で、どちらも数字が低いほど性能が高いことになります。地域区分とは、日本の地域を8つのエリアに分け、必要な断熱性能をエリアごとに定めています。

数値で言われてもぜんぜん想像つきませんが、「東京のRCマンションの中住戸レベルの暖かさ」と聞いて、そのくらいならば良いかなと思って決めました。

また、自分達の快適な暮らしはもちろんですが、将来売却する可能性も考え、今の国の推奨基準値は、今後さらに上がるだろうと予想しての判断でした。

性能を突き詰めると上はもっともっとありますし、その分高額にもなります。同じ数値でも、住む地域の気候によって必要度合いも違います。自分で理解し予算も考慮したうえで選んだのと、知らないで工務店任せにするのとでは、納得感が全く違うと思います。

断熱材も種類がいろいろあります。我が家はグラスウールの「アクリアアルファ」でした。

窓が大事

「断熱」は、外の暑さや寒さが家の中に伝わらないようにするということ。窓際ってひんやりするイメージありませんか?それはガラスの性能で防ぐことができます。
「気密」は隙間風を想像してください。たとえば、高断熱で気密がとれていない家は、穴がたくさん空いたダウンコートのようなものです。

気密断熱には窓が重要です。

窓の形状として、引き違い窓は気密性が低いので採用せず、FIX窓、押し出し窓、上げ下げ窓を使うことにしました。

パントリー横の上げ下げ窓。引き違いを使わないことで海外っぽい雰囲気にもなる。

性能は、熱を通しにくい樹脂サッシが最強です。しかし、窓枠が太いのが特徴。デザインも重視したい私は、窓枠が細いアルミ樹脂複合サッシの「サーモスX」を指定しました。

アルミ樹脂複合は内部結露するのでやめた方が良いという意見もありますが、「サーモスX」は、アルミサッシの弱点だった内部結露への対策がされた構造になっていて、樹脂スペーサーも標準だったので選びました。(スペーサーは複層ガラスの中間に使う部材で、アルミか樹脂があり、樹脂のほうが熱を通しにくい)

LIXILのサーモスXにした理由は、見た目だけではなく金額もあります。樹脂サッシはYKKapが有名ですが、工務店さんの仕入れの関係で、LIXILのほうが条件がよく、YKKapだと割高になってしまうという事情です。工務店さんによって仕入れ値が違うので、施主が選ぶ場合は確認が必要です。

結果、見た目スッキリで大満足。暮らしてみての実感としては、夏の暑さは余裕で、寝室はエアコンなしで過ごせました。これからくる冬が楽しみです。

窓枠が細いアルミ樹脂複合サッシの「サーモスX low-e ペアガラス/アルゴンガス入り」を採用。熱貫流率は1.52W/(㎡K)。本当はトリプルがよかったけど、予算オーバー。

寝室の窓は、いまカーテンをつけずに生活しています。

私は、toolboxの商品開発チームにいて、窓回り・カーテンは担当する得意分野。寝室にはカーテンをつけようと思い、引越前にはりきってカーテンを買っていました。

しかし、実際に住んでみると、家の前の道は人通りがなく、夜も真っ暗。何もつけなくても特に支障がなかったのです。むしろ朝は木漏れ日が差し込み気持ちよく目覚め、昼は窓枠が絵画のフレームのようで、夜は月や星を見ながら眠れるという、田舎ならではの素敵さに気がつきました。

結果、カーテンは使わず、無駄な買い物となってしまいましたが、今まで、カーテンがないと落ち着いて暮らせないという環境だったので、嬉しい想定外でした。

トイレとお風呂に窓は要らない

こちらも気密断熱について調べているとよく出てくる情報です。確かに窓がなければ隙間もありませんからね。
東京のマンション暮らしの時も、トイレと浴室に窓はありませんでしたが、不便には思いませんでした。むしろ、実家のときはトイレもお風呂も道路に面した窓があり、車や人の気配が気になったり、雷や台風のときに怖かった経験があり、その頃から窓は要らないと感じていました。

景色を眺めながら朝にゆったりバスタイム、というのも、今までの生活パターンからすると想像がつかず、リビングが開放的なので、裸になる場所は壁に覆われている安心感を求めました。

でも、私の意見も鵜呑みにせず、景色を眺めながらのバスタイムが重要な人はFIX窓にすれば良いし、窓を開けて換気がしたい人は必ずしも従う必要は無く、すべては優先順位で、納得して施主が自分で決めることが大切です。

お風呂にもトイレにも窓はありません。

玄関ドアも断熱仕様で

せっかく壁と窓に気をつけたのに、玄関の気密断熱性が悪いと東京のマンションの二の舞になります。

我が家はLIXILの、寒冷地向け断熱仕様(K2レベル)のドアを採用しました。

窓と同様に玄関ドアも、もっと性能やデザイン性が高い商品はありますが、我が家の玄関は少し奥まっていて正面から見えないので、コスト的にもデザイン的にもいい塩梅なところで選びました。

流行りのスマートキーも便利そうですが、内装にお金をかけたかったので優先度が低く、普通に鍵付きハンドルにしました。品番は「ジエスタ2/M17型/K2/チェスナット浮造り調」。

どきどき気密測定

気密測定は、希望した数値になっているか実測して調べる検査です。一般的に2回行うことが多く、1回目は建築途中に、2回目は工事終了後に行います。

建設途中に行う理由は、測定値が悪い数字だとしても、隙間を見つけて塞ぐことですぐに対処できるから。完成後にもう一度行うのは、その後の内装工事で多少の変動があるため、最終チェックが目的です。

(左)こちらが気密測定器 (右)隙間を見つけて埋めていきます。

1回目の気密測定は2022年4月。人生で初めての気密測定に、期待と不安を抱えながら立ち会いました。

全ての窓とドアを閉じて、測定器で家の中の空気を屋外に出し、「負圧」の状態にします。

負圧って何?と思いますよね。
たとえば、飲み終わったヤクルトを容器の飲み口から吸い込んで、口にくっつけて遊んだことのある人は多いのではないでしょうか?容器の中の空気を真空に近づけることで内側に引っ張る力が生じているのですが、そのことを負圧と言うそうです。

家の中を真空に近づけることで、隙間があると、勢いよく外から空気が入ってきます。

実際隙間を見つけると、エアコンついてる?と思うくらい冷たい風が勢いよく吹き込んでくる箇所がありました。見つけた時は、まるで宝探しのように「よっしゃー!!」という気分になります。そして速やかに塞いでもらいます。家のいろんな箇所に手のひらをあてて隙間を探すのはちょっと楽しい経験でした。

(左)スイッチボックスも気密仕様。(右)ダウンライトの気密施工を電気屋さんに指示しているところ。

1回目の測定結果は、C値1.0と希望数値ギリギリ。ちなみにC値1.0というのは高気密と呼べる最低ラインの数値です。2回目で悪くならなきゃ良いけど〜と不安が残る結果でした。

工事終了後の2回目の測定結果はC値0.7。正直ほっとしました。
突き詰めると0.1以下までできる気密の世界ですが、個人的には満足です。頑張っていただいた大工さん・職人さんに感謝します。

工事終了後のほうが良い数値になっていて嬉しい!

換気がすごく難しい

換気については、ここで説明するには難しすぎるのですが、勉強すると1種換気か3種換気かどちらが良いの?という状況になるかと思います。

1種換気にするなら、樹脂窓で、HEAT20 G2レベルにするべき。そうすると、そもそも気密を0.3以下にできる工務店さんは工法が違ったりします。(数字が低いほうが気密性が高い)

我が家の場合、1種換気はコスト的に高く、ちゃんとメンテナンスできるか自信がない、とくにダクト式は施工に慣れている工務店さんでないと心配、という理由から、3種換気を選びました。

ちなみに24時間換気システムをきっちり動かして、2時間で家の中の空気を入れ替える為には、C値1.0以下が必要だと言われていますので、換気方式を何にするかの前提として気密が大切です。

シロアリ対策、どうします?

工務店では当初「天然ピレトリン」という薬剤での防蟻処理をスペックしていました。現場監督さんから「高気密住宅では、薬品等に敏感なお客様もいらっしゃるので、どうしますか?」と聞かれたのですが、シロアリ対策をどうしたいかと聞かれてもまったくわかりません……。これまたネットやYouTubeで調べる日々なのでした。気密とシロアリ対策って関係しているんですね。我が家はホウ酸でお願いすることにしました。

防蟻処理済の現場。床上1mくらいまで濡れているのがわかりますか?

意外とかかる、外構費用

2022年8月、引越しのあと、夏休みを利用して家の中を整えました。しかし、外構はまだまだこれから。まずはガレージに車を停めるためのコンクリートスロープをつくらないといけないし、大雨が降ると、裏庭には大きな水溜まりが……。水はけを良くする調整が必要でした。

外構は建物とは別の業者さんへお願いしたのですが、土地が広いのでどうしても高額に。
後から知ったのですが、外構費用の相場は建物価格の10%が目安なんだそう。建物と一緒に予算組みをしておくべきでした。

自分の家のために電柱が立つのも驚きました。費用は電力会社負担です。位置の希望を聞いてもらえ、室内から見えない位置にしてもらいました。

ウッドデッキや菜園をつくりたいと思っていたのですが、建物に予定以上にお金をかけてしまったので、お庭は少しずつ作っていけたらと思っています。来年の春には家族で芝生を植えようと思っています。

(左)植木屋さんにお願いしたら、息子もやりたいと意気込み、手伝わせてもらいました。(右)ガレージ前のスロープ工事でコンクリート打設する日の様子。

スロープが完成!無事にガレージに駐車できるようになりました。屋根があるって素晴らしい。雨だけじゃなく夏は日陰が嬉しいです

暮らしてみての生活の変化

夏に新居に越してから2ヶ月が経ちました。移住して、賃貸にいる間は、正直内装とかあまりこだわっておらず、お部屋もおもちゃが散乱して荒れていたし、もう捨てようか悩んでいるような割れても良い食器を使いがちでした。

引っ越した途端、お気に入りの食器を使いたくなって、お花も飾るようになりました。環境で気分が変わって、行動が変わるものだな〜と面白いくらい感じましたね。

(左)花束が道の駅で350円くらいで買える。ススキなど、そのへんから摘んできて飾ったりもします。(右)スペイン旅行で買ってきたお気に入りのグラス。

あとは、季節をとても感じます。とにかく移り変わる自然が美しいし、市場では旬の野菜や果物がずらりと並び、店長さんがおすすめの食べ方まで教えてくれる。ご近所さんからも採れたての食材をお裾分けいただくことも少なくないです。
そのほか、お米や手作り味噌、チーズ工房やパン屋さんなど、美味しくて生産者の顔の見えるお店が多いため、スーパーではあまり買い物をしなくなりました。

秋は田んぼが美しい。

(左)(中)ご近所さんよりいろいろお裾分けをいただきます。(右)幻の果物ポポー。マンゴー+バナナみたいな味がします。道の駅では一般流通で出回らない食材が買えて楽しい。

田舎ならではの悩み

さいごに、移住を考えている人の参考になるように、都内ではなかった悩みについてもお伝えできたらと思います。

都内と違うところは、まず車が無いと生活できません。移住したての賃貸暮らしでは、出社は駅まで歩けるので、1台の車でやりくりしていましたが、新居の完成に間に合うように、2台目も購入しました。予定していたとはいえ、家とは別に費用がかかりましたし、ガソリン代も上がっていますね。そして実は、引越しの日に夫の車がパンクするという事件がおこりまして、思わぬ追加出費がありました……。
車生活なので、運動不足も感じていて、東京へ出社の日は意識的に階段を使うようにしています。

新車は1年待ちとかで、運良く試乗車だったものを中古で購入できました。これから冬タイヤも用意しないとなんですよね。

そして、虫。虫嫌いな私にとってはこれが一番心配でした。虫が嫌いでよく田舎にきたものです。笑

ブヨに噛まれた時は、田舎の怖さを感じました。この1年で、夫は5回、私は3回、息子は1回噛まれまして、ぷっくり腫れ、各2週間ほど痒みが続きました。そうして虫除けや服装に気を付けることを覚えました。

新居は自然たっぷりな環境なので、いろんな虫がいます。夏は窓にアブがよく留まっていましたし、10月現在ではカメムシがいっぱいいます。
そんな私も、今ではだいぶ平気になりました。外にいる虫はさほど怖がらなくなり、たまに家に迷い込んだ虫は、手に触れないような虫取りグッズを使って、外に逃がしています。

(左)息子はトンボを捕まえるのが上手。(右)こういう虫は綺麗だと思えるようになった。

手入れとして悩ましいのが蜘蛛。家のあちらこちらに巣をはられ、蜘蛛の巣とりグッズを購入。しかし、取っても取ってもいたちごっこです。

家の周辺は、夜になると真っ暗なのですが、不審者よりも蛇とか野生動物が怖いです。

しかし、自然はきもちいい。うぐいすなど鳥の声に癒されたり、キツツキを観察するのも楽しいです。

知らない土地での家づくりは、不安がたくさんあると思いますので、一旦賃貸で暮らして、その街での暮らしが自分に合うか、確かめてからでも良いと思います。もし、那須へ移住を考えている方がいましたらご相談ください。それではまた。

那須は大型特殊車両がたくさん走ってます。写真はNasu farm villageのトラクターツアーで撮ったものですが、こんなのも走ってるのを良く見ます。

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