試作や新商品を取り入れるトライアルリノベーション『studyroom#2』
「studyroom」はtoolboxの設計施工チーム・ツールボックス工事班が、普段のクライアントワークではなかなかチャレンジできない空間づくりに自社購入物件でトライし、そこで得た気づきやアイデアを今後のサービスや空間づくりの提案につなげたい、という想いで始めたプロジェクト。
そのプロジェクトの第2弾、都内にある約72㎡のマンションを舞台とした『studyroom#2』のテーマは、「商品を生み出す空間づくり」。工事班とtoolboxの商品開発チームが設計段階からタッグを組み、実際の空間づくりの中で新しい商品やアイデアをカタチにしていく、初めての試みに挑みました。
さらに、「商品を生み出す」空間づくりだけではもったいない!と、「暮らし方の提案」まで踏み込んだ空間づくりを目指し、行き着いたプランのコンセプトは“ベッドルームリビングという過ごし方”。
「リビングを広くとる」ということが多くの家づくりでセオリーになっていますが、一人ひとりがスマホやタブレットを持つ今、家での家族の過ごし方は変わりつつあります。
それぞれ別の場所で好きな時間を過ごしたり、気分に合わせて居場所を変えたり。そんな暮らしができる、LDK以外にも“過ごす場所”がある住まいを考えてみました。
東西南北4方向に窓がある角部屋という好条件ながら、暗さや閉塞感があったかつての部屋。
物件のポテンシャルを引き出しながら、試作や新商品を取り入れ、暮らし方の提案も盛り込む。やってみたいことをとことん詰め込んだ空間は、一体どんな住まいになっているのか。その全貌を、お披露目します!
“家での過ごし方”を広げる「ベッドルームリビング」
まずは個室、「ベッドルームリビング」から見ていきましょう。
ここは、かつてLDKがあった場所。約10帖の個室に、南に面した掃き出し窓からやわらかな光が差し込みます。そんな心地よい環境を活かし、広さを確保する以外にも素材使いに工夫を凝らし、「寝る」以外の時間も自然と居たくなるような空間づくりに取り組みました。
まず、床には『チークウッドフローリング』を採用。輸出制限により今では手に入りにくくなったミャンマーチークの飴色を目指し、インドネシア産のチークに国内で塗装を施した無垢フローリングです。美しい木目が継ぎ目なく伸びる一枚ものの無垢板が、ゆったりとした雰囲気をつくり出します。
ベッドスペースの横には木製パーティションを取り付け、視界の広がりを維持しながら、寝る場所としての落ち着きも両立させました。ベッド周りにはグレーの板壁を貼ってコーナー感を高めつつ、広い空間にメリハリを生む効果も狙いました。
ガラス入りの木製パーティションの先には、大きくガラス面をとったスチールドアが。廊下に視線が抜け、光も届きます。スチールならではのどっしりとした貫禄も、悠然とした雰囲気づくりに一役買っています。
個室に続く廊下は、スチールドア越しに視線が抜け、外に面した窓からの光も差し込む、開放的な場所。
個室側が一段下がったフロアや、重厚感のあるスチールドアによって、個室を「ただの個室」ではなく、主役級の存在感を持つ空間に仕立てました。
ちなみにこちらの個室、「天井の照明、少なくない?」と思った方もいるのではないでしょうか。気づいた方、目の付け所がさすがです。
これは意図的なもの。あえて天井照明の数を絞り、部屋の各所にコンセントを設けて、フロアライトやスタンドライトで必要なところに明かりを置く暮らしを提案しました。
明かりを置くことでコーナーをつくったり、場所の使い方に合わせて「欲しい明るさ」を調整したり。「ベッドルームリビング」として、「寝る場所以外」の使い方も見据えた照明計画です。すっきりとした天井面は、頭上の開放感づくりにもつながりました。
「広さ」ではなく「居場所」があるLDKのススメ
続いては、リビングダイニングとキッチン。
LDKは、大きなひとつの空間にするのではなく、壁を立てて、キッチン・ダイニング・リビングをぐるりとU字型に配置。壁によって視線の向きや視界をコントロールし、ひとつながりでありながら、“それぞれの場所で過ごす”ことができる空間としました。
フロアに「木の色」を配した個室とは気分を変えて、リビングダイニングは壁面に『クラシックリブパネル』の「チューブ」を貼り、木の要素を盛り込みました。
そして床仕上げに用いたのは、現在開発中のペイント済みフローリングパネル。「モノトーンな床が欲しいけど、木ならではのやわらかな歩行感も欲しい」という場面を想定して開発したアイテムが、壁や家具に木を取り入れた今回の空間にぴったりハマりました。
掃き出し窓とFIX窓に面した場所は、ダイニングに。壁の上部には視線の拠りどころとして『木製シェルビング』を取り付け、コーナーとしてのまとまりをつくりました。
廊下に続くドアは『オーダー框ドア』の1パネルガラス入りを採用し、視線と光が抜けるようにしています。
『チークウッドフローリング』のパーケットとのバランスを考え、ペイント済みフローリングパネルは、流し貼りにしました。どちらの向きで“流す”かは迷いどころでしたが、奥へと続いていく今回のリビングダイニングの形には、今回の向きで良かったように思います。
vol.3で、フローリング貼りの職人さんが見事なコーナーバトルを見せてくれた段差の箇所も、綺麗におさまっていました。
キッチンは、壁に向かって集中して作業ができるレイアウトにしました。横に目を向けると、ダイニング越しに窓外へと視界が広がります。
直接目線は交わらなくても、気配や声は届くリビングとの距離感が、キッチンをひとつの居場所として成立させています。
今回、キッチン本体には、開発中のステンレスキャビネットをキッチンの下台として設計し、特注したものを使っています。
業務用のようなフォルムにバイブレーション仕上げを組み合わせ、光を受けてもギラつかない、空間に馴染む存在感を目指しました。
天板は『マットカラーのキッチン天板』のライトグレー、壁は『マットカラーのキッチンパネル』のライトグレーを使い、グレー系のマットな表情で揃えました。
それぞれの「ライトグレー」は微妙に色味が異なるため、その組み合わせを試してみたいという意図もありました。結果として、同系色でまとまっていることと、『フラットレンジフード』と棚板の黒による引き締め効果で、統一感のある空間になりました。
キッチンの背面には、2つの収納スペースを造作。写真手前のオープン棚は、開発中のインロー棚を取り付けました。奥の収納は、ゴミ箱やオーブンレンジがおさまる奥行きで計画しています。
2つの収納の間にはパイプスペースがあり、それを覆いながら、上部にある梁にも考慮しつつ、壁と天井のラインをすっきりとした形状にすることに苦心した部分でもあります。頑張った甲斐あって、キレイにおさまりました!
今回、この空間で目指したのは「広さ」ではなく「居場所」をつくること。
ひとつながりの中にそれぞれの過ごし方が生まれる構成は、コンパクト化が進む都市部の住まいにおける、新しいLDKのあり方の提案です。
おさまりと設えが居心地をつくる、玄関・トイレ・洗面
ここからは、玄関・トイレ・洗面のご紹介。これらの空間にも、toolboxのアイテムを使ってさまざまな工夫を盛り込んでいます。
玄関は、正面にある窓まで視線の抜けをつくり、明るさと開放感を感じられる空間に。『チークウッドフローリング』のパーケットと『塗装ルーバー折れ戸』で、クラシカルな雰囲気に仕上げました。
ホールの空間づくりで心掛けたのは「軽やかさ」。下足入れは足元を浮かせたフロートスタイルに、ホールの隅に造作した収納はオープン棚にして、奥行き感を演出しました。
というのも、ホールの頭上には大きな梁があり、天井高さを出すのが難しかったため、水平方向に開放感が出るように気を配りました。奥の洗面へ続くドアは、サイズオーダーができる『オーダーフラッシュドア』で梁下ぴったりにおさめています。
そんな中、気になるのはトイレの奥にのぞく、ステンレス製のいかついキャビネット。中にはトイレットペーパーが奥行きピッタリでおさまっています。
オールステンレスの収納庫はトイレにはオーバースペックかもしれませんが、今回の自社物件リノベーションは「商品を生み出す空間づくり」がテーマ。「作ってみたい」その一心で作ってみました。
窓のある洗面脱衣所は、その明るさを活かし、白を基調にまとめました。
『プライウッド洗面台』の小口の木や、鏡前に渡した木をアクセントにしつつ、『ホテル金物』や『壁付けセパレート混合栓』のクロームなど、光を受けてきらめくパーツを効かせて、ホテルライクな雰囲気に仕上げました。
異なる視点が重なって生まれた、空間とものづくりのかたち
完成した空間を見ると、「ベッドルームリビング」と「居場所があるLDK」という暮らし方提案に、開発中の試作品や新商品が見事にハマったように見えますが、実際のところ、内装設計を担当した山下はかなり苦労したそう。
「使ってみたいものやつくりたいものはあったけど、それが今回のプランやコンセプトにハマるかは別の話。まずは、この空間を活かす内装にしないといけない。その中で、使いたいものや試作をどう重ねていくかが一番難しかった。そんな中、開発中だった『チークウッドフローリング』が仕上がったので、これを採用しようと決めて。そこに、試作の木製パーティションやスチールドア、板壁材も、ちょうどよくハマっていったんです」(山下)
「僕が基本設計を考える時、スチールドアや木製パーティションも開発中なのは知ってたけど、それありきでこのプランにしたわけじゃなかった。当時から、ハマりそう、とは思ってたけどね(笑)」(一杉)
そうして内装材やパーツを決めていったものの、もうひとつ苦労したのは照明計画だったそう。
「前の間取りから大きく間取り変更していたこともあって、実際の空間スケールを想像しながら照明の数や光量を検討していくのが難しかったです。天井高さも上げられなかったから、照明をつけすぎて天井面がうるさくなるのも避けたいし。必要なところに必要なだけの明かりを、とは当初から思っていました」(山下)
『studyroom#2』では天井照明の数を絞り、スタンドライト・フロアライトを使って明かりを調整する照明計画としています。こうした考え方には、父親が内装設計に携わっている山下の「実家に天井照明がほとんどなかった」という原体験や、作図を担当した東の海外生活経験も影響しています。二人とも、現在の住まいでは天井照明がほとんどない生活をしているそう。
「私たちのそうした照明への考え方が、いろんな場所で過ごすことを提案する今回のプランや、ホテルライクな内装に偶然フィットしたというか。でも、最低限必要な明るさを考えながらの照明器具選びは本当大変で、山下とかなり検討しましたね」(東)
そんなふうに、プロジェクトメンバーの住宅思想が反映された空間になっているのも、自社物件のリノベーションだからこその面白さです。
「商品開発チームが設計のメインに入って空間づくりをする機会は、実はこれまでなかった。日頃から、空間全体をイメージしながら商品を考えてはいるけど、今回はそれを実際の現場の中でできた、というのはすごく大きかった。僕ら工事班にとっても、気づきや学びの多い現場でした」(一杉)
暮らしのあり方と内装材の関係を見極めながら、空間と商品、その両方をつくり上げていく。工事班と商品開発チームがタッグを組んだからこそ実現した『studyroom#2』。空間づくりと商品づくり、それぞれの視点が行き来することで生まれるものづくりの可能性を、改めて感じるプロジェクトでした。
今回の現場に取り入れた開発中アイテムたちの開発背景や『studyroom#2』を通じての開発プロセスは、『ものづくりの現場から』で近日レポート予定。そちらもぜひ、ご覧ください。
それでは、また次の現場でお会いしましょう。
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
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