こんにちは!
目白ショールームスタッフのおすみです。

私は日々ショールームにご来場いただくお客様とお話しすることが、自分の人生の活力になってると言っても過言ではないくらい大好き。
みなさんそれぞれ異なる価値観やライフスタイルを持っていて、それを聞いているとついつい深掘りしたくなってしまう。

そんな中、ある日ふらりとショールームに現れた「アサ」さん。
「マンションを買ってリノベーションするので」と訪れてくれたのが、最初の出会いでした。彼女と私は同世代。話すうちに意気投合し、帰る頃には友達に。

そしてこのたびアサさんのリノベーションが完成したとのことで、ご自宅にお邪魔してきました。

家を衝動買いしたらしい

ショールームに初めて来場した時「自分でマンション買ったって周りに知られると色々めんどくさいから内緒にしてるんです」と話してくれたことを覚えていた私。

めんどくさいとわかっていながらも、なぜ彼女は家の購入を決意したのだろう?
出会った当初から気になっていたので席に着くなり聞いてみました。

「いや実はこれ今までで一番大きい衝動買いなんだよね、誰にも相談せずに買った」

思いもよらないパワーワードがアサさんの口から出てきてびっくり。
確かに”衝動買い”って相談しないでするものではある。

実は未だにご両親や兄弟にも家を買ったことは話していない。「ネガティブな人間だからね、根が。買う時も誰にも相談せず。怖くて。それの方が怖いか(笑)」と話すアサさん(左)。

実際、マンション購入を決めるまでにかかった時間は、なんと1ヶ月未満。
彼女が依頼したのは、物件探しからリフォームまでワンストップで対応してくれるリノベーション会社。検討したのもその1社だけ。

「問い合わせメールを送ったらすぐ電話がかかってきて、その場で次の予定まで決まって。そのスピード感に乗っかってみたら、あれよあれよと話が進んじゃって」

とにかく物件探し自体が面倒で、「絶対にこの街じゃなきゃ」という強いこだわりもなかった彼女にとって、すべてを一任できる存在があったのは大きかったようです。

「条件を伝えたら100件くらい物件紹介されて。エリアで絞らずに“駅近で”という条件だけだったから、紹介された中には『え、ここどこ』みたいな場所もあったり。それもなんか面白かった」

100件あった物件からたった3件を厳選し、内見。すべて1日でまわったそう。

「駅近で、路線もアクセスがよく便利。なんせ外観がかわいい。そんな物件ってそうそうないと思って即決した」

そうして購入を決めたマイホーム。

そういえば内装を決めるためにショールームに来てくれた時も、リノベ会社からtoolboxをおすすめされたようで「ショールームはtoolboxしか見なくていいや」と言っていたのを思い出した。

家を買う、というのはなかなか勢いだけでできることではないけれど、なぜ購入に踏み切れたのか聞いてみると「ローンといっても信じられないくらい借りすぎなければね。毎月払うのは家賃と変わらないし」。

まさに”衝動買い”という言葉そのままに、ここまで迷いなく潔い決断をしてきたアサさん。

居心地の良さは結局自分自身でしか作れない

“衝動買い”とは言いながら、今の暮らしや住まいの形に辿り着くまでどのような経緯があったのか。気になったので深掘りして聞いてみました。

アサさんの「暮らしの価値観」は、大学時代にまでさかのぼります。
初めて彼女が一人暮らしを始めたのは大学生の時。ずっと一人で生活してみたかったのもあり実家のある九州から離れた京都の大学を選びました。

ただ、一人暮らしの生活は荒れていたようで「部屋が汚いから精神を病んだのか、精神が病んでいたから部屋が汚かったのかは思い出せないけど、本当に片付けられなかった。今思えば18歳の自分は精神的に未熟だったし、独立するには早かった」と当時を振り返ります。

社会人になり、上京して住んだ街は練馬区。
「もう2度と学生時代のような汚さにはしないぞ!」という決意のもと、モノを増やさず、とにかく部屋を綺麗に保つことだけを考えて生活をしていました。

東京に出てきてからは、何度か引越しを経験。そんなある時、アサさんの心境に変化があったと言います。

「記録がてら部屋の写真撮るようになったんだよね。きっかけは初めて気に入った椅子を購入した時なんだけど」

今回の引越しを期に手放してしまったと言う、初めて購入したお気に入りのソファ。

ベッドとコタツだけで始まった、東京での一人暮らし。
社会人としての生活にも少しずつ慣れ、心にもお財布にも余裕が出てきた頃、アサさんは新しい家具を少しずつ迎え入れるようになりました。

ものが増えることによって「また部屋を散らかしてしまうかも」という思いから、自分への戒めとしてSNSに部屋の写真を投稿しはじめたのがきっかけで、インテリアにも自然と興味が湧いてきたのだとか。

玄関の土間エリア。そこには思い出のソファと同じ種類のオットマンが置かれています。

その後縁がありアイルランドへ留学、約1年間のホームステイを経験しました。
慣れない土地、慣れない人たちとの生活は一人暮らしの生活に慣れていたアサさんには苦労も多かった。

「やっぱり、自分が落ち着ける場所がないとダメだと確信した」

元々2部屋だった空間をひと続きにしたリビングには大きな窓が出現。東向きなので1日中柔らかい光が室内に拡散します。

だからこそ、「お金をかけてでも、自分が納得できる空間をつくろう」と強く思うようになったと言います。

おこもり感のあるキッチン。元々は対面式のキッチンだったが、収納のことを考えると開けている空間よりも閉じた場所にしたかった。

ビールが大好きと言うアサさん。グラスは手にしやすい位置に飾って取り出しやすく。

賃貸でも居心地のいい暮らしはできそうだけど、購入に踏み切ったのは「こういう空間にしたい」と言うことももちろんあるけど「気に入らない場所があるのは嫌」の方が強かったから。

そして、その象徴とも言えるのが寝室。

「(自分は)答えの出ないことばかり考えてしまう。例えば”あの時あの人にあんなこと言わなければよかった!”っていう考えても仕方のないこととか」

余計な情報が入ったりすると、色々考えてしまう。
眠る時くらい、何も考えず”寝ることだけ”に集中できる空間が必要でした。

「ワンルームのような間取りにも憧れはあったけど、私は閉じこもってないと寝れないから何もないシンプルな個室が必要だった」

寝室には携帯電話も持っていかない。照明も枕元のランプのみで過ごします。室内窓は朝日を浴びるためリビング側に設置。

大学時代に感じた「負の感情」や、初めて買った椅子のポジティブな記憶など、さまざまな経験の積み重ねが、今のアサさんの住まいに繋がっています。

「これからも自分から“家を買った”とは言わないと思う。女一人で家を買ったって聞いたら、どう思われるか分からないから」

そう口にしつつも、世間の価値観に流されることなく、自分の“正解”を信じて選び続けてきたアサさんの姿からは、言葉の奥にある揺るぎない芯の強さが伝わってきました。

初めて一人でやり遂げた家づくり。正直、後悔も心残りもたくさんある。

今までの経験や自分の性格と向き合いながらつくり上げたマイホーム。
実際やりきってみてどうだった?を聞いてみました。

「結局は我儘な人がさ、理想的なものをつくるじゃん。真面目に生きるのは損だなってすごい思う。家づくりはどれだけ自分の我を貫くかどうかだと思う。私も我は強いほうなんだけどさ。それでも”もっとこうしたい!”とはっきり伝えられたら良かった」とアサさん。

態度がでかいから本来の身長より高くみられがち」というアサさん(手前)に「確かに言われてみれば!笑」と答える私(奥 )。

実は家の購入を決めた時、転職活動も行っていたらしい。
人生の転機にもなり得そうなビックイベントを同時期に開催。毎日が目まぐるしく「当時のことはほとんど記憶にない」と言います。

そんな中、リフォームの打ち合わせも急ピッチで進みました。
打ち合わせは全部で4回。限られた回数の中で内容を詰めていくには取捨選択は必須。それでも「除外された案の中に、実は面白い間取りの可能性もあったかも」という気持ちが今でも頭をよぎるそう。

あの時もし別の選択をしていたら……なんて、完成した今考えても仕方ないのは分かっている。

リビングには使ってみたかったという無垢のパーケット材を貼った。リビングからの日差しが廊下まで差し込み、床のコントラストを楽しめる。

その思いはリフォーム完成後まで持ち越し、「マイホームブルー」にもなったそう。

思っていたよりも濃く塗装されていたと言う木製パインドア。船舶ドアパーツとのコントラストがはっきりしていて私はとても好みだった。

きっかけは木製パインドアの色味が思っていたのと違う色で塗装されていたり、照明の位置が少し高かったり。

書斎のミルクガラス照明の位置に少し後悔も。「ここに何か絵とかポスターとか貼れそうでいいじゃん」「確かにそれはそう」と話す私たち。

「他にも、もっと考えて本棚作れば良かったと反省がある。可動にすれば良かった」

本や漫画、グッズなど飾りたい物の大きさがまちまちだった。

でもこの本棚のスペースができたからこそ、「今まで買え控えていたものたちを、これからは遠慮せず買えるのは良い」とアサさんは言います。

まだまだ完成形には程遠いといいながら「玄関すぐにウォークインクローゼットを作ったのは動線的に良かった」「ここには植物をもっと置きたいと思ってる」などもちろん納得できたところもあるし、今後の野望もある。

構造上仕方なくできてしまった段差。だけどその段差のおかげで玄関土間、ウォークインクローゼット、廊下とうまくゾーニングされている。

今の状況を「発展途上の空間だね」と言い表してくれたように、アサさんのマイホームにはたくさんのポテンシャルが潜んでいました。

でも思った、「私ってこういう人だった」

家づくりをしてマイホームブルーにもなったし、後悔もまだ残っている。
“後悔”と聞くとネガティブなイメージだけど、不思議とアサさんからはそんな様子が伺えなかった私。

深く話しをしていると、アサさんは「でも私ってこういう(根がネガティブ)人間だからな」「感想で言えば、まぁうまくおさまったと思う」と言う答えに行きつきました。

このキッチンになってから、料理をするようになった。よく作る料理はお酒のつまみになるような“名も無き料理”らしい。

「実際住んでみて、この駅じゃなかったかも?と思ったけど、実際駅付近にはなんでもあるから困りはしない。料理をしたくない理由の一つに買いに行くのが面倒と言うのがあるけれど、今はネットスーパーもあって届けてくれるし便利さもある。前住んでいたエリアには、近所に素敵なお店もたくさんあったけど、じゃあお前一人でどこか飲み屋に行ったのかと言われたら、行ってないなと」

結局自宅でゆっくり過ごしたり、飲んだりするのが一番好きだから、周りの環境に自分は左右されないことを知っています。

インナーバルコニーにはヴィンテージ柄のタイルをチョイス。ベランダとリビングの境界線を曖昧にしてくれるお気に入りの空間です。

初めての家づくりは後悔もあったけど、住めば都をジワジワと感じているらしい。

大きな窓にはtoolboxの『ガーゼカーテン』をセレクト。ぼーっと外を眺める時間が好き。

今までも、これからも「居心地の良さは自分で作る」

つい話が弾んでしまい、気づけば3時間喋りっぱなしだった今回の取材。

そのなかでアサさんがふと打ち明けてくれたのは、長年付き合っていたパートナーとの別れが、家を衝動買いする1番のきっかけになったということ。

もしかすると、家づくりや転職活動に打ち込んできたのは、自分の気持ちに立ち止まらないようにするためだったのかもしれません。

「パートナーがいることで、生活に彩りが生まれることを知っているからまた恋愛はしたい。最終的に結婚できたらいいなとは思うけど、それがすべてだとも思っていない」

実家から毎年送られてくる『ザ・鏡餅』についてきたチャーミングなへび。「今年の干支だしね」と下駄箱にちょこんと飾っていた。

そう言って、「じゃあ記事に書いといてください、“彼氏募集中です”って。自薦他薦は問いません!(笑)」と冗談めかすアサさんに、どこか吹っ切れた明るさと、しなやかな強さを感じました。

衝動買いで家を買った、と聞くと勢いに任せたように見えるかもしれませんが、その裏には迷いや不安、自分自身ととことん向き合ってきた時間がありました。

「居心地の良さは、自分でつくるしかない」

そう語る彼女の住まいには、まだ発展途上と言いながらも、自分を大切にするための選択が丁寧に積み重ねられていました。

アサさんの人柄や暮らしが見えるInstagramはこちらから

テキスト:アズマ