撮影:Haruki Kodama

「海の近くで暮らしたい」理想の移住先を考える際に、一度は思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、そんな人気の湘南に立つ海を望めるマンションの一室をリノベーションした、夫婦と犬と猫が暮らすお家の事例です。

実はリノベーションするのは今回で2回目というお二人。前回の経験を活かした2回目のリノベーションで、2人は一体どんな住まいを希望したのか。ご紹介していきます。

撮影:Haruki Kodama

部屋に入ってまず最初に「おーー」と感動するのが、玄関からリビングに向かう廊下の先に見えるこちらの景色。きらきらと輝く湘南の海が目に飛び込んできます。

あえて廊下の幅を狭めて照明を絞ることで、景色の抜けを活かし期待感をあおるように狙ったのだそう。朝起きてリビングへ向かうとき、疲れて家に帰ってきたとき、この景色が迎えてくれる。それだけでほっと気持ちがやすらぎそうです。

建物の設計当初から海を望むことを意識して作られたと思われる、開放的なLDK。(撮影:Haruki Kodama)

「木」をベースに、素材感漂うアイテムをふんだんに取り入れ、落ち着きと暖かみのあるオーセンティックな雰囲気に整えられた空間が広がります。

床材に使われているのは、新材ながら色褪せた表情を持つ「燻蒸フローリング」。「燻蒸処理」によって木の赤みや黄みを脱色、経年変化を経たような渋みのある風合いに仕上げています。

窓や建具を囲いつつ壁と一体化するように納められた見た目も美しい壁面本棚。(撮影:Haruki Kodama)

リビングの壁一面には、大切に集めてきたお気に入りの本たちを飾るように収納できる蔵書棚が設けられています。本好きなら、こんな壁一面の大容量の本棚に憧れる方も多いのでは。

撮影:Haruki Kodama

撮影:Haruki Kodama

実はこの蔵書棚、本を収納するだけのものではありません。なんと、キャットステップとしても使えるようにところどころ棚板をでっぱらせてあるんです。なんて素敵なアイデア。

腰壁に使用したのは陶板タイル。タイルの色むらが自然な色合いを作り出します。(撮影:Haruki Kodama)

時間や季節によって移ろい変わる光のニュアンスを楽しめるよう、天井や壁はざらりとしたテクスチャーのあるもので構成。砂や土など、自然素材の揺らぎを感じるアイテムが愛着を生み、ほっと落ち着く空間に。

光の角度によって様々に映し出される影を楽しむことができる。(撮影:Haruki Kodama)

レンジフードを囲い質感のある天井と馴染ませるという一工夫。(撮影:Haruki Kodama)

背面のキッチンカウンターの様子。使われているのは「把手の金物 ステンレス」。

部屋の雰囲気の他に二人が要望として挙げたのは、仕事とプライベートの切替えができること、そして犬と猫と人が快適に暮らせること。

そのため、二人の仕事部屋がそれぞれ別々に設けられています。

1つ目の仕事部屋。扉を設けて個室にし、生活空間と仕事空間をしっかり分けた造りに。(撮影:Haruki Kodama)

もう一つの仕事部屋。(撮影:Haruki Kodama)

仕事の合間のふとした瞬間に、意識が海に抜けていく。そんな「最高の贅沢」ができるようにという配慮から、北側の仕事部屋からも海が見えるよう計画したのだそう。

室内窓を設けて、寝室とLDK越しに海を望むことができます。(撮影:Haruki Kodama)

寝室の扉は、犬と猫のために基本常に開け放しているそう。(撮影:Haruki Kodama)

寝室に併設されたワンちゃんのスペースは、素材を切り替え、掃除がしやすいように。(撮影:Haruki Kodama)

他にも、扉の「把手」や「ツマミ」にもこだわりが感じられます。

ラワンの扉に合わせたのは断面が六角の形をした「真鍮金物」。使うほどに味わいが増していくアイテム。

寝室のクローゼットには「鋳物キッチン把手」のクロームを採用。

小さいからと侮るなかれ。素材の質感が存在感を放ち、扉を引き立て空間の質を高めてくれます。

将来的に物件をリセールすることも視野にいれ、各スタディルームを個室と表記できるように計画し、リセール時の検索性にも配慮。

日々の生活の中でふと感じる光や影や窓の景色。暮らしを豊かにするそれらの情景を家の中に上手に取り込みながら、2人と2匹が心地よく自然体のまま暮らせるよう考えられた、素敵なお家の事例です。

(八)

一級建築士事務所 knof

knof(ノフ)は、菊嶋かおり と 永澤一輝 が主宰する建築設計事務所です。東京 清澄白河/門前仲町を拠点に、国内外問わず活動しています。
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