小鳥のさえずりを聞きながら、キッチンに立ち一日がスタート。

何でもいいは、何でもよくない

森の中にいるような気分を味わえる、リビングに面した広々対面キッチン。ここはスタッフが建てた新築の家。白と黒で統一されたシンク付きの大きなキッチンカウンター上には、水栓が静かに佇んでいるだけ。縦長の窓で切り取られた木々の緑がよく映えます。

キッチンパーツを個人輸入して造作で組み上げていくなど、こだわりたっぷりなキッチンなのですが、そんなデザイン好きの彼女でさえ、水栓に対する要望は、「バランスがとれていれば、何でもいい。ただ、シンクを洗いたいからホース機能は欲しい」というものでした。

水栓に対しては同じような思いの方も多いのではないでしょうか。ただ、こだわり派の言う「バランスがよければ」って、デザイン、大きさ、機能性と価格帯……いろんな意味が込められていて、案外何でもよくないもの。

そんな中、最終的に選ばれたのがこの『ベントネックホース水栓』だったんです。

リノリウムの天板、クォーツシンク、ディスペンサーと水栓はブラックで統一して。

バランスいいってどういうこと?

まずは、デザイン。台座はなく、天板からベース部分がすっと立ち上がり、一回り細いスパウトが曲げ加工で数字の「7」のようなフォルムを描いています。

すっきりしたスパウトの先端には、実はホースが格納されていて、シャワーにも切り替え可。機能性を担保しつつ細部の納まりはすっきりキレイというのが嬉しいポイント。

大きさのバランスも気になるところですが、これは、寸法を見たところで、正直よく分かりませんよね。水栓の場合、大事なのはサイズというよりはキッチンに対するボリューム感。

この水栓の場合、特に対面キッチンにつけた時の、安定感ある根元の太さもポイントだと感じてます。単体で手にしてみた時は、ちょっと太めな印象だったんですが、実際取り付けてみると、奥行きのあるシンクや広め天板に対して華奢過ぎる感じもせず、そのフォルムと相まって、ちょうどよいボリューム感なんです。

「何かすごい特徴があるわけじゃないけど、いやなところがない」
というスタッフの感想が、まさにこの水栓を言い当てている気がします。

バイブレーション仕上げのステンレス天板、艷のある「T番タイル」、「ユニキッチンシステム」とクロームを合わせて。ゆったりとした「スクエア760シンク」ともバランスよし。

微差の積み重ねで、質の良さは出来上がる

「ベントネック」という名の通り、曲げ加工されたスパウト先端は手前側にほんの少し角度を付けて傾斜しています。

奥行きのあるシンクと合わせた際には、伸びやかな印象に。実際使う際には大きな鍋でも洗いやすく、それでいて水跳ねしづらい絶妙な高さから、シンク中央に水が降り注ぐ。デザインと使いやすさが融合したカタチとなっています。

カラーはマットなブラックとクロームの2種類。定番の仕上げのクロームですがぬるっとした輝きを感じるのは、スパウトの直線からなめらかに移行するラウンドライン、自然に指に馴染むようゆるやかに角を削ったレバーの丸みなどが、光の反射によって際立つからでしょうか。

ブラックのマットさは、「クォーツシンク」「キッチンディスペンサー」とも好相性。

クロームは、光のたたえ方でシャープさと丸みを帯びた部分の対比が強調されます。

このフォルムの美しさは、ただ見た目の話だけではありません。いざ、水を出せば、流れ出る泡沫の水はやわらかく、シャワーに切り替えれば、きめ細やかな水流の軌跡が吐水口からフレア状に広がります。

わずかに手前に傾いたスパウトに導かれるように手を添えて、小さな突起を軽く押すとシャワーに切り替わる。そのまま引き出せばするするとホースが伸びてきます。先端は指3本ほどの長さがあり、しっかり握れて水流のコントロールも自在に。

水を出す動作ひとつひとつに対して、「自然に使いやすくあること」を考え抜かれた設計であることが、使ってみると分かります。

シャワーは水流が細かいので、小さな植木の水やりにもおすすめです。

この水栓、つくっているのはスイスの老舗メーカー。1874年に機械式オルゴールの製造で事業をスタートし、その後水栓事業が本業になったというユニークな歴史を持っています。それを知って、精密なものづくりの技術と美的センスの合わせ技により、質の良さは確かに積み上げられているのだと、さらに納得がいきました。

キッチンの多様化、水栓には何を求める?

このメーカーが、機能的な「シャワー付きの引き出しホース水栓」を最初に世に送り出したのは、1957年。和暦で言えば昭和32年。日本中が白黒テレビに夢中で、長嶋の巨人入団に沸いていた頃です。

当時のキッチン事情といえば、白いモザイクタイル貼りの流し台が主流で、公団住宅向けに初めてステンレスシンクが誕生。「DK(ダイニングキッチン)」という概念がようやく生まれた時代でした。

そこから時が経ち、キッチンはどんどん暮らしの真ん中に。家づくりでも、過ごす場の中心として考える人が増えてきました。

それでは、水栓は?キッチンに求める理想が多様化する中で、機能性だけでなく、周囲の家具やインテリアとの調和を重視して選ぶ。そんな時代になってきたと感じています。

「ベントネック」と名付けたこの「7」の字フォルムは、これまでの定番、背が高く優雅な「グースネック」とは異なる、背丈抑え目の新たな選択肢があっていいかなと取り揃えていたもの。これまではミニキッチン向けのサイズしかなかったところ、今回ようやく、大きめシンクに似合う「ベントネックホース水栓」をご紹介できるようになりました。

質が高く長く使えること。そして、こだわりのリビングやダイニングの近くに置いても違和感のない、バランスよい佇まいであること。そんなこだわりでお探しの方にこそ、自信をもっておすすめしたい、キッチン水栓の新たな選択肢。定番候補になりそうな予感がしています。

最初に紹介した家のスタッフの愛猫、漱石くん。こだわりの強い彼は水を水栓から直接飲みたい派。

ベントネックホース水栓の全2商品

担当:青、大迫 / テキスト:来生
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