角がなく、穏やかに佇む
ぽってりと厚みのあるフォルムと、近づくと見えてくる自然に流れるようなカーブ。過度な主張はなく、控えめで素朴な洗面・手洗いシンク。
近ごろは、シャープなシルエットだったり、ゆとりある大きさのシンクが多いこともあって、この見た目に新鮮な印象を覚えます。
空間に置いた時にも、緊張感を与えない優しい形とボリューム感。それでいて、毎日の身支度には不足なく役割を果たしてくれる。 一台で「洗面・手洗い」の場が成立するから、その空間に沿った使い方が見つかるはず。
一見洗面に向かないような場所や、壁の素材であっても、このシンクを添えるだけで慎ましい存在感を発揮してくれる。そんなポテンシャルを秘めた『ハイサイドシンク』です。
機能に即した素直な形
パッと見た時に印象的なのが、背面だけでなく左右にまで、シャツの襟が立ち上がった様なバックガードがついていること。前に立った時には、しっかりと手元が囲われる安心感があります。
高さ6cm、厚みのあるバックガードは、壁面への水はねを防ぐ実用面だけでなく、丸みを帯びた形がゆるさを感じさせる「ハイサイドシンク」の個性にもなっています。
実際に使ってみると、曲面に沿ってなでる様にお手入れができたり、手洗い器には石鹸が滑り落ちない様にわずかな突起がついていたり。小さなシンクの中に、細やかな気配りが込められていることに気が付きます。
誰もが「シンク」と聞いて思い浮かべるシンプルな見た目ですが、少ない要素の中で使いやすさと意匠性が考慮された形状です。
日々の眺めの中にあって愛着の持てる見た目。付き合いやすさも兼備した日常づかいのシンクです。
ゆらぐ面様、滑らかな肌触り
このシンクのもうひとつの特徴が、とろりとした光をはらむ、ゆらぎのある質感。あまりシンクに抱いたことのない感覚なのですが、例えば一点もののマグカップを両手で包み込む時の様に、いつまでも撫でていたくなる様な、滑らかな触感があります。
これは、鋳込み(いこみ)と呼ばれる、今では少し珍しい製法によるもの。パズルの様に組み合わせた石膏型の中に土を流し入れることで、より複雑な形状を成形する技法です。
均一な形状を効率よく量産する手法に比べて、一点一点に職人さんの手と時間がかけられています。昔ながらの製法ではあるものの、その手間と難しさから生産できる工場も少なくなっているそう。
それでも「この製法でしか出せない良さを残したい」と、試作を何度も重ねて製品として形にしていきました。
そうして生まれた、目も心も解きほぐしてくれるようなフォルムは唯一無二の魅力につながっています。
時を超えて、選択肢にあり続けるもの
実はこの「ハイサイドシンク」は、昭和初期に海外の洗面を参考につくられた衛生陶器を元に、現代の暮らし方や空間の中にも馴染む形で製作されたもの。
手仕事の感覚が必要だった昔のプロダクトに漂うおおらかな雰囲気や、一台で日々の身支度が充分にまかなえていたミニマムな暮らしの豊かさを、今の生活の中でも感じてもらえたらという作り手の想いが込められています。
佇まいに素朴さを感じる理由は、そういった背景にもあるのかもしれません。
たくさんの手間と時間をかけてつくられた質の高いものが、手の届かない世界ではなく日常にあり続けていること。時を経ても自分の家づくりで当たり前に選べるということ。個人的にはとても価値のあることのように思います。
ハイサイドシンクの全4商品
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