「DIYをはじめてみたい!けど、何から揃えればいいかわからない」というお悩み、あると思います。

基本として揃えておきたい道具・工具はいろいろありますが、まずは「ビスを打つ」というところから。はじめてDIYをする際に知っておきたい「インパクトドライバー」の基本をご紹介します。

Vol.1では、インパクトドライバーの基礎知識や、併せて使う先端パーツ(ビット)やビスの選び方を解説します。

インパクトドライバーを家づくりのお供に

暮らしにいろいろなパーツを足していくときに必要になる「ビス打ち」。DIY記事how to makeでも毎度のように登場します。

組み立て家具やスイッチプレートの交換などであれば手回しのドライバーでも可能ですが、壁や木にビスを打つとなると、やはりインパクトドライバーが便利。家庭に一台あれば、タオル掛けやフックを壁に取り付けたり、棚やデスクをつくってみたりと、空間を編集する幅が広がります。

ちょっとしたパーツを自分でつけられるスキルと道具さえあれば、欲しくなったら自分で付け足そう、と家づくりにおおらかに向き合えるはず。

インパクトドライバーを使ってDIYした空間事例

人気のハンガーパイプもインパクトドライバーで取り付け可能。

デスクや作業台などもサクッとつくれます。

壁一面の可動棚もインパクトドライバーにお任せあれ!

タイルへのビス打ちだってできるんです。

「ここにあれがあったらなあ」もちょちょいのちょい。

既存のパーツの付け替えもお手のもの。

今回は、ツールボックス工事班の親方・一杉に、インパクトドライバーの選び方や使い方を教えてもらいます。はじめて使う時にふと疑問に思う、「これってどうなの?」ということまで聞いちゃいます!

この人に聞いた
ツールボックス工事班|TBK 一杉伊織

toolboxの設計施工チーム、TBK(ツールボックス工事班)の親方。toolboxで扱う基本の道具工具のセレクトも担当。

インパクトドライバー歴20年以上。愛用はBOSCH。

電動ドリルドライバーと何が違う?インパクトドライバーとは

ドライバーにはいろいろなものがあります。インパクトドライバーの他に、手回しのドライバー、ペン型の電動ドライバー、電動ドリルドライバーなど。

基本的には回す工具であることに違いはありませんが、電動か手動か、コード式かコードレスか、さらにはトルク(締め付ける力)の強さ・充電のもちが変わってきます。

インパクトドライバーは、衝撃(その名の通り、インパクト)を与えながら回転する電動ドライバーです。力を生かしたビス打ちや穴あけに向いている工具と言えるでしょう。コード式もコードレスもあり、力の強さなどにも幅があります。

電動ドリルドライバーとインパクトドライバーの違い

広く「電動ドライバー」と呼ばれる工具は、「電動ドリルドライバー」と「インパクトドライバー」に分けられます。見た目もよく似ていて、どちらもビスを打ったり、穴をあけたりできる工具ですが、実は機能は異なっています。

どちらも電動で回転する工具ですが、電動ドリルドライバーはモーターで回転する工具。一方、インパクトドライバーは打撃を加えながら回転する工具。細かい違いはありますが、基本的には、回転するだけか、衝撃で回転方向に力を加えられるかが大きな違いです。

それぞれの特徴をまとめてみました。似ているようで異なることがわかると思います。

先端パーツをつけるチャックの形状の違い。インパクトドライバー(左)は六角軸を差し込んで使用するが、電動ドリルドライバーは3本の爪で軸を挟んで固定する。

DIY用のおすすめは、インパクトドライバーの10.8v

電動ドリルドライバーもインパクトドライバーも、それぞれ得意不得意があって結局どう選んだらいいかわからないという方もいらっしゃると思います。さらにメーカーや大きさ、強さも様々。ズバリおすすめを聞いてみました。

Q:家庭でのDIY、インパクトドライバーと電動ドリルドライバーどっちがおすすめ?

Answer:ビスを打つと言えば、インパクトドライバー

パーツの取り付けから簡単な家具造作、ちょっとした大工作業までオールマイティに活躍するのがインパクトドライバーです。電動ドリルドライバーはどちらかと言えば家具や建具の作製など精度の必要な作業に特化しているので、その他あらゆる作業を全般的に想定するのであればまずはインパクトドライバーをおすすめします。

電動ドリルドライバーは、最大出力を制限できるため、繊細な作業に向いていますが、DIYにおいて細やかな調整を必要とする機会は経験上あまりありません。丸軸・六角軸など様々な先端パーツに対応していますが、爪で挟んで固定するため、うまく固定できていないと空回りしてしまうことも多いです。

Q:これからDIYを始めてみたい!何をつくるか決めていないけど、ズバリ、おすすめのインパクトドライバーは?

Answer:おすすめは『BOSCHインパクトドライバー10.8v』

電動ドライバーには色々なボルトがあります。各メーカーで一般的なのは、

3.6v、7.4v、10.8v、14.4v、18v

数字が大きいほど、トルクが大きく、バッテリーの持ち、重さが増します。

各メーカーによりますが、ボルト数によって形状も変わってきます。

アマチュアのDIY向けは、10.8〜14.4v。18vはプロ向けと考えて良いでしょう(最近は36vもあるようです)。

3.6v〜7.2vは、スイッチプレートの小さいねじを回したり、下穴の空いている家具の組み立てなど、手回しが可能なくらいの小さな力です。

僕が愛用しているのは、「BOSCHインパクトドライバー10.8v」です。本体はもちろんバッテリーもコンパクトなので、持ち運びや長時間使う時も便利。

14.4vも、10.8vと同じような使い方ができますが、バッテリーの容量が大きくなるので、重さやサイズがアップします。コンパクトさと力強さという点で10.8vがちょうど良いと感じています。

木材にパーツを取り付けたり、合板を組み合わせて簡単な木製家具を作ったりと、木に固定する力が必要なシーンでは、10.8v以上のインパクトドライバーがおすすめです。

10.8vでは、こんなことができます。

パーツや棚の取り付けは、木の下地がある壁の場合。コンクリート躯体への取り付けには、フックなど軽量物なら可能な場合もありますが、14.4v以上が必要です。

また、14.4v以上になると力は強くなりますが、一般的なDIYにおいては力が強すぎて、ビスがなめてしまったり(溝が潰れて空回りすることを「なめる」といいます)、ビスが入り込みすぎてしまったりと、初心者が扱うには難しいレベルかなと思います。

インパクトドライバーの基本的な使い方

ここからは、「BOSCHインパクトドライバー10.8v」を使って、インパクトドライバーの基本的な使い方をみていきましょう。

インパクトドライバー部位別解説

①トリガースイッチ
オンオフのスイッチです。強く引くほど回転数が多くなります。強さは引く力で調整できます。

②先端パーツ(ビット)
いろんなビットをつけることで回転と衝撃の力を使って様々なことができるのがインパクトドライバーの良いところ。

③チャック(ビットスリーブ)
先端パーツを取り付ける部分。チャックを引くことで先端パーツの取り外しができます。

④回転方向切替スイッチ
本体の両サイドについており、押した矢印の向きに回転します。打ち込みたい時は「⇦」、引き抜きたい時は「⇨」にセットして使います。

⑤バッテリーパック
両脇を押しながら引くと本体から外すことができます。使い終わったら充電しておきましょう。

基本的な使い方

0.バッテリーパックを装着

バッテリーパックを装着します。使用前は充電をお忘れなく!

1. 先端パーツの取り付ける

チャックを引くとロックが外れる仕組みなので、先端パーツの付け外しの際は、チャックを引き、手を離すとロックがかかります。外すときも同様にチャックを引き、先端パーツを抜き取ります。

先端パーツについては、次の章でご紹介します。

2.回転方向を確認する

回転する方向は、回転方向切替スイッチで切り替えることができます。進めたい方向に矢印が向いているか確認しましょう。

3. 下穴をあける

下穴をあける際は、ドリルビットを取り付け、ビスのサイズより小さい穴をあけていきます。

回転する方向が正しいかを確認してから、真っ直ぐ突きつけてトリガースイッチを押していきます。

POINT
下穴は毎回あけるべき?

木の強さによって判断するのが良いでしょう。

下穴をあける目的は、主に以下の2点です。
・木が割れないようにする
・ビスが真っ直ぐ入るようにするためのガイドをつくる

あけたほうが丁寧ではありますが、まっすぐあけられないと下穴の意味はありません。やってみながら判断しましょう。

POINT
Q:下穴の大きさは?

下穴を大きくしすぎるとビスが空転して効きが悪くなってしまうので、ビスより細い径にしましょう。長さはビスの半分くらいで十分です。

打ち抜いてしまう心配がある場合は、キリにマスキングテープで印をつけると失敗が防げます。

4. ビスを打ち込む

回転方向が正しいか確認したら、トリガースイッチを少しずつ押して打ち込んでいきます。スイッチを押す力加減でトルクの強さが変わってくるので、最初は押しすぎず、少しずつ回転させてビスを立てます。真っ直ぐ立ててからそのまま奥まで打ち込みましょう。

POINT
垂直に打ち込むコツ

打ち込む前に、ボディとビット、ビスが一直線になっているか確認すること!ビスの先まで芯がある意識を持って構えましょう。下穴をあけるときも同様です。

POINT
木が硬くてビスが進まない時は?

木が硬い場合は、まず下穴をあけましょう。

抵抗が強いとビスを押し込むのにも力が必要なので、少し引いてから押し込むと勢いがついて押し込みやすくなります。何度か繰り返して、最後はビスの頭が5mm程度木に食い込むくらいまでしっかりと押し込みましょう。

最後は少し引いて勢いをつけてから押し込みます。

先端パーツの選び方

基本的な動作がわかったところで、先端パーツ(ビット)の選び方を解説していきましょう。

ドライバービットをはじめ、いろんな先端パーツがありますが、おそらく一般的なDIYで使用するのは、ビスを打ち込む「ドライバービット」、穴をあける「ドリル(キリ)ビット」だと思います。

toolboxで取り扱っていインパクトドライバーには、ドライバービットとドリルビットが付属します。

ドライバービット・・・ビスを打ち込むパーツ

ビスを打ち込むために使用するドライバービットは、プラスドライバーやマイナスドライバー、六角レンチなど、さまざまな形状やサイズがあります。

DIYでは、プラスドライバーで、サイズは2番(+2)、1番(+1)が一般的です。出回っている主な取り付け用のビスは2番、小さい取り付け用のビスやフローリング用の極細ビスなどに1番のビスが多いです。サイズに合わせて使用するビットを選びましょう。

最初の章でお伝えした通り、インパクトドライバーはビットの軸が六角のものしか使用できませんのでご注意を。

先端にマグネットが埋め込まれていると鉄製のビスを落としにくく、取り付けがしやすいのでおすすめです(ステンレスのビスはつきません)。

ビットの長さや形状も様々。左2本は両頭ビット(先端の両側にビットがついているビット)の2番、右はビットの回転による周囲への傷防止を目的としたチューブ付きのビット。先端サイズは1番。

POINT
Q:長さを選ぶポイントは?

短いほうが安定しますが、干渉物があときなどは長いビットが活躍します。例えば、筋交いがある棚受けを取り付ける際、短いビットだと角度がついてしまいますが、長いビットだとなるべく垂直な角度が取れます。

ビットが短いと筋交に当たって斜めにしか打ち込めません。

少し長くすると垂直に近づきます。

さらに長いビットを使うとほぼ垂直に。筋交のある棚受けを使う際は長めのビットがおすすめです。

ドリルビット(キリ)・・・穴をあけるパーツ

ビスの下穴に使う数mmから、30mm程度までの幅があります。DIYで下穴として使うのは2〜4mmが一般的です。真っ直ぐ使えていなかったり、摩耗している場合には、折れてしまうことも多いです。特に細いビットは消耗品だと思っておきましょう。

また、木工用・金属用・モルタル用・タイル用など、穴をあける素材に合わせたラインナップがあります。柔らかいもの用で硬いものに穴をあけようとしてもなめてしまってうまくあきません。例えば、金属用のビットはタイルには使えません。素材に合わせたビットを用意しましょう。

タイル用、モルタル用などドリルビットだけでも多種多様。

POINT
Q:硬い素材用を買っておけば使い回せる?

穴をあけたい材に合わせたビットを使った方が綺麗な穴はあきます。ただ綺麗さを求めないのであれば、硬いもの用があれば事足りるかもしれません。ただ、木工用は先が尖っていて、刺して安定させられるようになっていたり、用途に応じた便利さはあります。

写真は、左が木工用ドリルビット、右が金属用。

ちなみに、他にはこんな先端パーツもあります。

研磨するための先端パーツや、ナット、色々な形や素材用のドリルビットなどなど。先端パーツだけでも奥が深い世界です。

ビスの選び方

先端パーツまで用意ができたら、最後に必要なのはビスです。ネジの一種で、ネジにはボルト・ナット・ビスなどがあります。取り付けに使われることが多く、種類も多いのがビス。

パーツや家具を買うと付属していることが多いですが、自分で調達する場合は用途に合わせて選ぶことが重要です。

驚くのは、その種類の多さ!たくさんのメーカーからたくさんの種類が出ているので、初心者が全て把握するのは大変……。

種類や材質、頭の形状、そしてサイズと判断すべきところがたくさんあるのです。

とにかく種類が多い世界!説明しきれない部分も多々ありますが、一般的な選び方を抑えておきましょう。

一般的な内容は以下の通りです。まず考えるのは、何と何を固定したいかということ。これによって、種類や形状が絞られてきます。

種類

木材用・金属用・コンクリート用など用途に応じて形状が異なります。木材と木材を引き合わせるには、「コーススレッド」か、一回り細い「スリム(細)ビス」、パーツなどを取り付けるのは「タッピング(万能)ビス」を選ぶことが多いです。

長さ

取付対象物の荷重と下地によって決める必要があります。例えば木と木を固定する場合、取付部材の厚さの2倍程度が目安です。取り付けに使用するタッピングビスは、25mm〜32mmビスが推奨されます。ビスが短いと強度が不十分なので、少なくとも20mm以上は下地にビスが効いてる状態が望ましいです。

ビスの長さは、規格である程度決まっているので、正確な長さが手に入らない場合は近しい長さを選んで大丈夫です。

取付対象物の穴の径を要確認。径は太いほど強度が増すため、荷重により選定する必要があります。フックやハンガー程度の軽量用途であれば、3〜4mm程度が一般的。太いほど保持力が強いですが、端に打つと木が割れやすいので要注意です。

材質

本当にいろんな種類がありますが、DIYで使うビスは、ステンレスか鉄製にメッキが施されたもののどちらかでしょう。メッキは、クロメート・ユニクロ・クロム・ニッケルなど様々ありますが、基本的にはサイズや形状重視でOK。錆びたくない・質感重視の場合はステンレスがおすすめです(ただし柔らかいので折れやすく、なめやすいです)。

頭部穴形状

プラスやマイナスなどがあり、プラスが一般的です。プラスの中でも種類は様々ありますが、2番と呼ばれるサイズが一般的です。

頭部形状

鍋・トラス・皿などがあります。取り付けるパーツの形状や取り付ける場所に合わせて選ぶ必要があります。

インパクトドライバーの種類から使い方、付随して使用する先端パーツ(ビット)とビスの選び方までご紹介しました。どれもかなり奥が深い世界なので、今回ご紹介したのはあくまでベースとなる大まかなところです。でも、知ってると知らないでは大違い。ホームセンターで道具・工具を選ぶときやはじめて工具にさわるときの参考になれば幸いです。

次回はインパクトドライバーでいろいろなものにビスを打って、実践的な使い方をお伝えします。
5月中旬の更新までもうしばらくお待ちください!

テキスト:庄司