家づくりキックオフ

2022年の年末、最初の打ち合わせが行われ、ついに家づくりが始動!

着工まではおよそ4ヶ月間。3回の打ち合わせでプランの内容や使用する素材の選定、おおよその予算を固めていきます。

3回の打ち合わせでどんなことを決めて行くのか、着工までにここまで決め切りますと説明があります。

自分の中での「こうしたい!」を伝えるこの打ち合わせでは、リフォームで叶えたいことや、Instagramで見つけてきた好きな雰囲気を集めて資料にまとめ、持っていきました。

理想と合わせて、現状はこうで、どんなところが嫌だと感じているのかもまとめて入れておきました。

やりたいことと、予算を共有した上で、最初のプランが提案されます。我が家のLDKリフォームのメインはキッチン。

キッチンを塞いでいた垂れ壁を全て取ってスッキリさせたプランと、開口部を広げて予算を抑えるプラン、2案の方向性が出ていました。

プランへの要望として伝えたもの。既存のキッチン写真に絵を描いて、希望を伝えます。

キッチン側面を壁付けにして、上部をオープンにしたプラン。これとは別に、既存のキッチン開口部分を広げるという案も出ていました。

私の中で、どうしても譲れなかった“壁を取り払うこと”。コストや施工上の難しさは理解しつつ、開口部を広げたプランに対しては「壁が残ると理想のイメージとは違うな」と思っていました。

とはいっても、鉄骨が通っていたら、そもそも壁を抜くことは叶いません。まずは、現地調査に来てもらい、確認していきました。

採寸し、図面に起こしてもらいます。この時も「やっぱりこの壁面は全部ない方が絶対いいと思うんだよね」と、切々と希望を伝えました。

その時に、建築当初の図面も、確認してもらいました。我が家にずっと置いてあったけれど、誰も見ない、取り出さない重要書類の束。こういう時のために保管してあるんですね。

その上で「多分、壁を壊すのは大丈夫そう」との見立てをもらいひと安心!

設計施工者からの声
後悔の無いように、まずはやりたいこと全て話して欲しい

今回、最初にやりたいことを資料で共有してもらえたのは、非常にありがたいことでした。もちろん、資料にまとまっていなくても、うまく説明できなくてもいいんです。まずはやりたいことを全て話してもらえたら。

本当の要望を聞けないままに「予算も内容も、言われた通りにしました」で、お客さんの後悔が残ることは、僕たちとしても一番避けたいことなんです。

今回のケースでもよくよく話を聞くうちに「人の集まるキッチンにしたい」という想いが出てきました。であれば、開口部を広げただけで、本当に想いが実現できるのかな?と疑問に思って。多少予算が上がっても「壁を全部取る」という結論に持っていけたんです。

ただ、リフォームでは綿密な下調べをしても、計画通り上手くいくか、開けてみるまで不安は常にあります。今回も、稲垣さんの家を建てたハウスメーカーに知り合いがいたので、構造のことを確認するなどして、事前に入念な準備をした上で、プランニングを進めていきました。

“回遊できるキッチンプラン”で、妄想が一気に現実に!

今回のリフォーム工事では、toolbox開発中の商品を試験導入するという目的も兼ねていました。そのため、通常の流れとは異なり、キッチン周りの設計を、商品開発担当であるさくらさんにお願いしています。

現場調査を経て、PLAN1のキッチン側面を壁付けにする案で進んでいたある日、さくらさんが「これもありかな?」と、ふと閃いたというプランを出してきてくれました。

キッチン内を回遊できる、アイランド型プラン。

それを見た時の第一印象は、「おおー、すごくいい!!え、こんなこともできちゃうの?」

それまで全くこのレイアウトのイメージはなかったのですが、これだったら、ゲストが自由に冷蔵庫にビールを取りに行ける、まさに目から鱗なプランでした。TBK(ツールボックス工事班)メンバーも一緒に「いいね!」となって、ぐいっと、計画が前に進みました。

キッチン商品開発担当より
収納場所を減らしてでも、キッチンの周りで会話ができる過ごし方を選んだ

今回のケースで良かったな、と思うところは、稲垣さんの求めていたものがはっきりしていて、料理が好きで、そこに人が集まってきて、子供たちの顔を見ながらご飯を食べて……という一番大事なところを最初に伝えてくれたこと。家にも招いてくれて、好きなものや暮らしの様子も聞けたので、イメージが掴みやすかったです。

キッチンに関わる仕事をしてきた中で思うのは、何を大事にするかは、人によってそれぞれで、それに応える素材やプラン形式も多数の選択肢があります。その中で、何を大事にするか。今回だと「木の天板」のように大切なポイントをいくつか共有してもらえたので、難易度のある壁を取り払うプランに対して、皆でそれが実現できるだろうかと動けたんだと思います。

今回提案した回遊型のプランには、4面仕上げるのでコストが上がったり、通路の分、収納が減ってしまったりと、いいことばかりでなくマイナス面もありました。

ただ稲垣さんは、収納場所が減ってしまっても、子供たちやゲストがキッチンの周りに集まってワイワイ会話ができる過ごし方を優先。結果、子供たちが大きくなっても冷蔵庫に来たついでに会話ができる。そんな未来を描いたプランに着地することができました。

素材選びは天板のアカシアを中心に

打ち合わせでは、その場で実際にサンプルを組み合わせながら、使う素材を決めていきます。

プランが形になってきたところで、2回目以降の打ち合わせでは、使う素材や色味など、細かな仕様を決めていきます。

事前に想像していた通り、決めることはたくさんありました。

1回の打ち合わせは1時間程度。お互い事前に宿題として考えてきたことを確認するように決めていきました。

まず最初に決まったのがキッチン本体で使う素材。キャビネットは艶消しのホワイトのメラミンを、天板はイメージに近い「アカシア」を選びました。この組み合わせを中心に、周りの素材を決めていきます。

「アカシア」は柔らかく傷がつきやすいという懸念点も教えてもらいましたが、ここはイメージ優先で選択。傷に強い塗装を施した上で採用することに。

難しかったのが床材選び。色味のコントラストが強い「アカシア」のどの部分を基準に選ぶか。また、広い面積を占め、雰囲気がガラッと変わる部分なので、決断するまでに時間がかかりました。

TBKからは木の色味が穏やかな『スティルオークフローリング』をおすすめされる一方で、もう少し黄味がかった『ラスオークフローリング』も気になり決めきれず。次回打ち合わせまでの宿題となりました。

私はキッチン天板だけ、好みのものであればそれで充分だったので、例えばその背面の棚板の木の種類だったり、色味や厚さとかは正直なんでもよかった。極端なことを言うと、木だったらなんでもいいんです。

最終的に棚板は、たくさんの候補の中から、価格の手頃さや、インロー金具で取り付けて支障が出ないこと、そしてほんのり赤味のある色が「アカシア」と相性が良さそうとおすすめされ「アガチス」を選びました。

背面の棚板の樹種だけでもこんなに選択肢が!

樹種の特性・個性をひとつひとつ教えてもらいながら候補を絞っていきます。

自分の中で「これは絶対やる、これは絶対しない」と大枠が固まっていたので、それ以外の部分は、施工的にリスクの少ないものだったり、プロのすすめに乗っかって、引っ張ってもらうような形で選択していきました。

そこまでこだわりが強くない私にとっては、この進め方が合っていたなと思います。

白熱する打ち合わせ、最後は全員スタンディングスタイルで。

最後まで悩んだ、色選びのこと

提案してもらい選んでいく中で、唯一「ちょっと違うな」と思ったのが、キッチン背面壁の色選び。打ち合わせの中で、この一面だけアクセントを付けようとなり「キッチンとのバランスを考えると、グレーで淡いニュアンスをつけるくらいが、良いのでは?」とアドバイスがありました。

実際に自然光が当たると、どう見えるのか?こんな風にTBKメンバー2人がかりで、一生懸命プレゼンしてくれました。(笑)

でも、そもそも私はグレーが好きじゃなかったんですよね。空間の中で合う色という狙いは理解しつつも、これからずっと自分の側にある色。「嫌だ!」と思って。

では何色がいいのか、2回目の打ち合わせ時点では結論が出ず、次回までの宿題となりました。

考えていく中で軸にしていたのが、好きで集めていたキリムラグ。私は、カラフルな刺繍が施されていたり、人の手仕事が感じられる民族的なアイテムが、昔も今も変わらず好きなんです。それらを受け止めてくれるのはどんな色なのかが、選択する上でのヒントになりました。

「ラスオークフローリング」と最後まで迷ったフローリングも、キリムラグに似合うものと言う基準も追加して「スティルオークフローリング」に軍配が上がりました!

ショールームにある“edit”roomで「この方がいいね。意外にこれいいと思ったけどダメだったね」と、さくらさんと一緒にサンプルを組み合わせたり、改めて好きな空間写真を見返したり。

そうしていく中で、自分が好きなものは、茶系の砂っぽい色味が合うんだろうなというのが見えてきました。

3回目の打ち合わせでは「私が幸せを感じるのはこんな色」と画像を見せながら提案!

カラーチャートを広げて色選び。名前に惹かれて「モロッコ」にしようかと思ったところで「もうワントーン明るい色味がいいかも」とさくらさんから意見が。

「ちょっと並んでみなよ」と謎の確認が入ります。みんなに「今日の服装にも、とっても似合う!」とお墨付きをもらい、笑顔の図。

設計施工担当者より
お客さんが言語化できない感覚でも、表情で分かる

お客さん自身も言語化できない感覚ってありますよね。こちらとしても、お客さんにドンピシャの提案を毎回持っていくというのは中々難しい。そんな時は、よく選ばれる選択肢を持って行って、お客さん自身が考えて、納得して答えを出すためのきっかけにしています。

今までの経験の中で、その空間に似合うのは分かっていつつも、絶対これだよねって言う形で出すのではなくて「よくうちはこうやっています。でもあなたこれ好きですか?」という投げかけをするんです。そこで答えがはっきり出なくても、仕草や表情で「なんか微妙なんだな」というのはなんとなく感じ取れるんですよね。

今回のケースでは、グレーを持って行ったところ、稲垣さんが「うん……」と黙ってしまって。少し心配していたんですが、時間が経って、「実は私、グレーがそんなに好きじゃなくって」と言ってきてくれた。「あ、やっと出てきたんだな」と安心しました。

毎日使う場所に、きちんとお金をかけたい

人生初めての家づくり。予算を聞かれたところで、金額感が全く分からないというのが正直なところでした。以前、友人がフルリノベーションでこのくらいかかったというのを聞いていたので、その総額を部屋数で割って「このくらいじゃない?」という金額を最初に伝えました。

でも、「その予算だと、キッチンだけやっても足りません。なおかつ、壁を壊すとなると、もう100万くらいかかるかもしれないです」という話が出て。であれば、「まずは希望の内容でかかる金額を教えてください」と、お願いしました。

背面キャビネットは、IKEAの置き家具をアレンジしてDIYすることも考えたものの、キッチンと合わせてお願いすることにしました。

最初はキッチン背面のキャビネットや棚、リビング側の床張りは、キッチン工事が終わった後に、自分でやっていくのもいいなと考えていたんです。ただ、仕上がりの精度や早さを考えるとプロにお願いしちゃった方が絶対楽だなとも思っていて。

結局、出てきた見積もり金額を見て「これなら支払える」と思い、全部お願いする方向に気持ちが傾いていきました。DIYは他の場所でもできますしね。

側面まで天板を繋げたのも、当初予定にはなかった案。色々考えていくうちに閃いて、せっかくだからとプランに入れてもらうことに。

一方で、そんなにこだわりが無いところ、例えばスイッチプレートや、ダウンライトも色々提案してもらったのですが、そこはコスト重視で安いものにするなど、割り切って考えていきました。

以前、toolboxのスタッフが「車をポイっと買い替える人でも、そのお金でリフォームは、あまりやらないよね」と話していて。それがなんだか印象的だったんです。「確かに、毎日過ごす場所なのに」って。

私は、お金は自分のためだけじゃなくて、家族はもちろん関わってくれる人たちも幸せになれることに使いたいと考えています。大きな金額なら尚更のこと。だから、今後20年は多くの人と過ごせるキッチンのためなら「車一台分、出しても絶対に損はない」と納得できました。

「住みながら」でも、引越しと同じだけの大変さはある

住みながらの工事となるため、当初は工事期間中だけホテル暮らしを考えていましたが、子供たちの希望もあり、2階の母が暮らしている家にお世話になることに。

「同じ家に住みながらリフォーム工事ってできるの?」と疑問に思う方もいるかと思いますが、個人の感想としては難しいなと思いました。階が分かれていたりすれば可能かもしれないですが、暮らす上でメインになるLDKが使えないので、普段と同じ生活はできません。

また、工事が始まったら粉塵もあり、毎日綺麗にしながら住むというのはとてもじゃないけど、できないなと感じました。

今回はすぐ上で生活できて、工事中の様子もすぐ見に行けるという、恵まれた環境だったと思います。

工事中に現場となるLDKと、資材置き場となる洋室は家具などを片付け空の状態にします。また、人の出入りがある場所は養生をしますと、この図面を元に、片付ける範囲の説明を受けます。

最終打ち合わせ時に、工事期間や、それまでに準備しておくことの説明がありました。「子供がいる春休みは避けて、あとは職人さんの都合に合わせます」と伝え、キッチンの搬入日なども考慮し、2ヶ月後に工事開始と決まりました。

現場となるLDKの家具は全部どかすこと、そしてリビング横の部屋も、資材置き場とするため、スペースを空けておく必要があります。

元々空きがあった納戸の部屋に、荷物を収めることに。

納戸への収め方は手書きで計画を立てて。

家具を測って、マスキングテープでサイズも確認!

直前までは生活ができるようにして、箱詰めは一週間前から。それに並行して粗大ゴミ回収の予定も立てて断捨離……これ、やっていることは、ほぼ引越しと一緒ですね。とっても大変でした。

予定通りに納戸にソファが入らなくて、解体したり、食器棚を粗大ゴミに出したら、その中の食器たちはどこに置いておけばいいんだっけ!?となったり。事前に計画は立てていましたが、それでも工事直前は、家の中はごちゃついたまま過ごしました。

ただ、この作業で事前にどこに何を置くかがシミュレーションできていたので、工事後にスムーズに生活が始められました。必要な作業だったと思います。

なんとか全てを納戸に詰め込みました。自分を褒めたい……!

キッチンリフォーム前夜

解体直前のキッチン。最後だからと、子供たちを呼んで盛大にお絵描きをする「キッチンありがとう会」を行いました。

工事開始までの数日間は、キッチンと部屋を片付けながら、ありがとうの気持ちで過ごしました。今は亡き私の祖母のために作られたキッチンは、私には少し低くて、けど子供たちには届きやすい高さだったなと思い返してみたり。

私が大学生の時にできたこの建物。祖母の家に顔を出すたびに、祖母自慢の手製のお漬物をお裾分けしてくれたんです。出汁と醤油で漬けられた、色鮮やかなその薄味のお漬物は、大学生の私は全然好きじゃなくて、けど断るわけにも行かず、菜箸を震わせながら丁寧にタッパーに詰める小さな祖母の横で、じっとタッパーの蓋が閉まるまで横に立っていたことを思い出しました。

今回の片付けで、床下収納から出てきた祖母作の梅酒やウィスキー。このキッチンとリビングで祖母と交わした会話などが思い出されて、ジーンとしました。

何かが無くなると前のことって忘れてしまうじゃないですか。祖母が立っていたキッチンがなくなることで、その思い出も薄れてしまうのかもと一瞬不安にかられたけど、ううん、きっと大丈夫だって思えたキッチンラストDAY。

おセンチな気持ちになったのも束の間。前日の夜はワクワクが優って眠れなかったです(笑)。朝、職人さんが到着するまでに、子供たちにご飯を食べさせて、送り出して……「首尾良くやらないと!」と、頭の中では起きてからのことをシミュレーション。

2週間後には、今まで妄想して計画して相談に乗ってもらって叡智が結集されて、実行に移して……という、とてつもなく楽しいことが終わってしまうのかと思うと、まだ始まっていないのに、既にキッチンリフォームロスが始まっているような不思議な気持ちに。

次回はいよいよ着工です!

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