今回は「toolbox工事班」略してTBKでおなじみの施工チームのメンバー、矢板(やいちゃん)と匂坂(サギー)にインタビュー。次々と変化球が飛んで来るtoolboxの現場で、あたらしいことに挑戦し経験を積んできたふたり。仕事観や現場のリアル、最近のTBKのしごとについて話してもらいました。

「大きくつくる」から「広がりをつくる」へ

ー お二人は2022年に中途採用で入社されていますが、toolboxに入る前はそれぞれどのような仕事をしていたんでしょうか?
サギー

元々は大手自動車メーカーで、車両の生産プロジェクトのエンジニアを務めていました。新車をリリースする際に、各工場の職人とインハウスのデザイナーの橋渡しをするような役割です。学生時代から建築に興味がありましたが、大学の専攻は建築系ではなかったので、当時は「ものづくりで大きいことやりたい」と考えて自動車業界に進みました。でも、どこかで建築の世界への心残りを感じながら働いていて…30歳になるし、変わるなら今だと、転職を決めたんです。 自動車メーカーで働きながら夜間の建築の学校に通い、卒業後はダブルワークでアトリエ系の建築事務所で1年間働きました。 ゼネコンや組織設計のような大手の建築業界と自動車業界は作っているものが違うだけで「大きな歯車のなかで働く」という意味では同じだろうと考えて、アトリエ系へ。大量生産によって世界中に供給するという自動車メーカーの仕事から、熱量を持ちたった一つのものをつくる仕事へと変わりました。

やいちゃん

以前のインタビューでも話していますが、僕は建築学科の大学院を卒業して、新卒で入社した組織設計の会社で7年間働きました。図書館や学校や市庁舎などの公共施設、集合住宅などの設計が主な仕事です。案件が多く知識量が豊富なイメージもあり組織設計に進んだのですが、とにかく忙しい業界で、家に帰れるのは終電間際ということも日常でした。また、大きな建築ということもあって施主=建物を使う人ではなかったため、頑張って仕事をしても設計したものを喜んで貰えているという実感が少なく、寂しい思いもありましたね。(↓過去のインタビュー記事はこちら)

[働く人] 「健全な建築業界」って?設計施工チームのふたりが見つけた絶妙なバランス
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TOOLBOXで働く個性豊かなメンバーが、どのような想いで仕事と向き合い、どんな未来を描いているのかをインタビュー形式でお届けします。
ー 業界は違えど大企業でスケール感のあるものを作っていたという意味では近しいキャリアを持っているんですね。それぞれの場所で、それぞれの想いを抱えながら多忙な20代を過ごし、前職からtoolboxに入社したきっかけは何だったんでしょうか?
サギー

建築の仕事をしているうちに「なんて広がりのない世界なんだろう」と感じてしまったことですね。もともと携わっていた自動車メーカーは、いわゆる大量生産の世界です。つくる過程で苦労もするけれども、完成すれば年間何万台もの車が売れる、という世界。一方、設計事務所の場合は、熱量を持って一つのものを一人のクライアントのために作って、それで終わりになってしまう。建築条件やクライアントの要望が違うから再現性もないですし、丸々コピーして次に活かすこともできません。情熱を持ちながらも、社会的な広がりをつくれるような企業や設計事務所はないものか?…そう考えて転職先を探し始めたときに出会ったのがtoolboxでした。

30歳を前に一念発起して自動車メーカーから建築・設計の世界に飛び込んだというサギー

やいちゃん

30歳になった時、周りの先輩たちを見たら、体力と気力でどうにかやっていけている人たちが多くて、慕っていたマネージャーもそんなタイプの人。自分にそれができるだろうか?と考えたときに、難しいかもしれないと思ったんです。組織設計の世界に少し寂しさを感じるなかで「もっと生活に近い、直接施主の方とやりとりできるようなところで仕事をした方が、幸せを感じられそう」という思いもあって、toolboxの施工チームに応募しました。

住み手の選択肢を広げるための空間づくり

ー お二人が入社した2022年頃から施工チームの人材が厚くなり、2025年には「toolbox工事班」(通称TBK)が誕生するわけですが、TBKのはじまりはどんなところから?
やいちゃん

それまでのtoolboxは建材の会社というイメージが強く、世の中的に施工をやっていることの認知度が低かったと思います。施工もできる、という認知拡大のためにユーザーにとって親しみやすい名前をつけよう!というのがはじまりで、もともとあったチームに「ツールボックス工事班」というキャッチーな名前がついた感じですね。

サギー

名前がついたことによってデビューした、みたいな感じかもしれません。笑
新卒採用のスタッフも含め2022〜23年に入社したメンバーが多く、みんな社歴も経験も浅かったので、先輩たちに色々と教えてもらいながら2年、3年と経験をつんできました。今の体制なら色々な施工の受注にも対応できそうだということで、名前をつけて認知を広げていこうという流れです。 もともとは空間づくりをやっていた人たちが、世の中のニーズを汲んで建材物販のサービス「toolbox」を始めて、それが形になった。今後はさらにユーザーの選択肢を広げるために、あたらしい空間づくりをしながら建材もつくっていくという、ありたい姿に向かうための意思表明のようなものですね。

toolbox工事班の発足当時を思い出しながら楽しそうに話す二人(左:サギー 右:やいちゃん)

作って試して、次の空間へつなぐ

ー こんな空間を実現したいという欲求から新たな商品が生まれるのは自然な流れで、空間づくりの自由と楽しみを提案するというステートメントを体現していると感じます。TBKという名前がついたことで、コラムの連載が始まったり、施工チームのメンバーが表舞台に出てくることも増えました。「ReMake」をテーマにした#studyroom#1の試みが始まったのもその頃で、まさに会社のポジションや目指すビジョンを体現するようなプロジェクトですよね。
やいちゃん

studyroomのプロジェクトは、会社のスタンス、空間だけつくっているわけじゃなく商品だけをつくってるわけでもないという姿勢を見せるものです。TBKの特徴を出すためにコラムを連載しながらスタッフたちも登場して。あたらしいことに挑戦している会社の雰囲気が伝わるコンテンツになっています。

『studyroom#1』ついに完成。“既存を活かすリノベ”でここまで変わった!
『studyroom#1』ついに完成。“既存を活かすリノベ”でここまで変わった!
ツールボックス工事班による新しい空間づくりの手立てを探すリノベの実験『studyroom#1』が完成。既存内装に手を加えていく「ReMake」なリノベーションで、空間はどう変わったのか!?
商品を生み出しながら、暮らしの提案にも挑んだ『studyroom#2』完成!
商品を生み出しながら、暮らしの提案にも挑んだ『studyroom#2』完成!
toolboxが自社購入物件を舞台にリノベーションに取り組んだ『studyroom#2』。試作や新商品を取り入れながらも、出発点にあったのは「どんな暮らし方を提案するか」という視点。そこから導き出されたプランを活かす内装のあり方にこだわりながら、商品の可能性や魅力を引き出すことにも向き合った空間が完成しました。
サギー

自社で物件を購入して作るので、斬新な手法にチャレンジできて、かつお客さまに迷惑をかけるようなことはありません。プロジェクトが終わった後には、そこで得た手法を使って、その先のお客さまの要望を叶えていくところまでできています。ノウハウの蓄積というのはある程度チャレンジをしてためていくものですが、そもそもこういう場所や機会を得られる環境がなかなか他の会社ではないと思います。

ー リノベーションというと、内装を一度まっさらにして一から作っていくフルリノベーションのイメージがまだまだ強いと感じます。でもリノベーションは手段なので、色々なやり方があって良い、まさに業界に一石を投じるプロジェクトですよね。今はstudyroomプロジェクトが2つ終わったところだと思いますが、施工チームとしてはどんな仕事をしていますか?
やいちゃん

今は、それぞれがクライアントの物件を担当して現場に入っていますが、今後もstudyroomのような取り組みは継続していきたいと思っています。 また、最近は年に何回かイベント出展用の什器を設計しています。出展用のブースを自分たちで施工すると、建材は良いものを使ってコストを抑えられます。でも実はそれ以上に社内的な副効用が大きくて。ブースや什器を作るときにはtoolboxの建材を使うので、僕たち施工チーム以外の人間も施工に関わって、建材を使って空間を作っていく工程を間近で見ることができるんです。自分たちが実際に何を売っているのかを、見て触って作ってリアルに知ることができる、すごくいい体験ができる場になっていると思います。

ほぼ日主催「生活のたのしみ展」の展示ブース施工には、コーポレートチームのメンバーの姿も

サギー

チームとしては小規模工事に力を入れていますね。物件価格や建材価格が高騰するなか予算に限りがある方は少なくありません。一方で、状態の良いきれいな物件がベースになることも多い。だったら、活かせるスペースはそのまま活かして、LDKだけとか洗面室だけ、洋室だけなど、部分的にリノベーションを施すのでも住み手にとっては十分なんですが、やはり業界的にはフルリノベーションがスタンダードなので引き受けられる業者さんがあまりいないのが現状です。

フルリノベーションを雰囲気良く仕上げてくれる業者さんは増えていますが、小さな工事だと設備を新しくするだけになってしまうことが多い。この誰も幸せになれない構造を変えていくための新たなチャレンジです。部分リノベーションもフルリノベーションもやることの手間はあまり変わらないので、そういう意味では利益は少なくなりますし、既存との兼ね合いがあるから設計者も職人さんも苦労はします。でも、だからこそチャレンジしてビジネスとして成立させることができれば、独自の立ち位置をつくっていくことができます。

ー 住み手の選択肢を増やすという意味でも、小規模工事のようなサービスは伸び代がありますね。
サギー

小規模工事のノウハウを蓄積して、この手法で解くというパターンをためていければ、毎回ゼロから設計せずとも住まい手の要望を叶えることができます。設計や現場での検討を減らしていければコストも下げられる。まだまだこれからですが、仮説と実験を繰り返しながら、仕組みとして回るようにしていきたいですね。

施工の現場から関わる商品づくり

ー 先ほど話が出ていた展示会出展のように、チームを横断して仕事をすることも多いと思います。どんなチームと一緒に仕事をしていますか?
やいちゃん

イベント出展では、PR、MD(商品開発)、TBKの3チームが集結して取り組もうという話がありました。各々が得意な分野をやりながら、みんなで意見を出すかたちです。結果的に、ブース設営に参加したコーポレートチームから施工に関するフィードバックがきたり、当日会場に立つショールーム担当からは「こういう風に商品展示するとお客さんが手に取りやすいよ」というアドバイスがあったりと、多様なチームとの関わりのなかで、新たな視点に気付かされるいい機会になりました。

チームを横断した取り組みからは、お互いに得るものが多いと語るやいちゃん(右)

サギー

商品開発の過程で、MDチームと一緒に工場に行くこともあります。毎回、工事が始まる前にMDとTBKで案件共有会があるんです。試作したいものやこれからつくってみたいものを施工時に使うことで初期の段階で現場に収めることができるので、使い勝手や佇まい、売れる売れないの判断材料にもなります。 設計事務所でもオーダーで建材を作ることはありますが、一度作って終わりになってしまいます。でもtoolboxなら、量産して販売するという出口があるから、その出口に向かって進めて行ける。施工のしやすさもそのタイミングで確認して、細かなことも商品の改善につなげたいという思いがあるので、たくさん意見を出します。CS(カスタマーサービス)には、問い合わせがありそうなポイントを事前に共有することもできます。

本音で向き合い、家づくりの幅を広げていく

ー 商品として販売する前に、施工して空間に落とし込むところまでやれるんですね。設計事務所単体や工務店単体だとそういう機会は得られないでしょうから、toolboxらしい部署間・人と人との関わりと言えそうです。そうやって仕事をするなかで、自身の考え方や生き方に変化はありましたか?
サギー

もともとある程度のコミュニケーション力はある方でしたが、よりフランクになったと思います。お客さんとも職人さんともたくさん対話をしますし、チーム内でもみんなよく喋ります。以前は会社という組織のなかで生きていて、会社としての利益を考えていましたが、今は一人の人間として相手のこと、自分のことを考えながら仕事をしています。 利益にならない仕事を職人さんに断られることもありますが、人間対人間の人付き合いならそれも受け入れるべき。無理なお願いを通すのではなく、どうすればお互いに気持ちよくやりたい仕事ができるのか?という根本の部分を考えるようになりました。

やいちゃん

今まで以上に、本心で話すようになった気がします。たとえば前職では「デザインがいいかどうか」みたいな問いへの答えは、たくさんの関係者がいるなかでなんとか落としどころを見つけていかなければなりません。でも、この会社ではみんな「良くないものは良くない」と正直に言うから、自分も置きにいくのではなくフィルター抜きにして語れるようになりました。最終的にかたちにしなければならないので、意見の衝突や葛藤もありますが、それも仕事の醍醐味だと思って楽しんでやっていますし、完成したときに関わった誰にとっても納得感があるものになると思います。

ー 最後に、これから仕事を通して実現したいことや、当面の目標があれば教えてください。
サギー

TBKのメンバー同士でよく話していることですが、建材からつくれる設計・施工者になることです。空間デザイナーは空間の絵は描けるけど、その先どうやって作っていくのかまでは考えられません。toolboxには、職人さんや工場の人とのつながりがあって、自分たちの一つ前に材を作れる人たちがいるから、誰にどう伝えればこの空間を実現できるのか?を考えられる環境です。 空間デザインから建材ひとつまで作れるようになっていくのは、ここにいるからこそできることで、そういう人材になりたい。現場で特注で作ったものが商品化されることもあるので、部品も作れる空間設計施工者になるのは面白いだろうなと思います。