オープンなキッチン空間の上空に
対面キッチンの魅力は、料理する人と待つ人が同じ時間を楽しめること。
キッチン側にいる人にとっては、窓の景色やリビングの様子を見ながら料理ができ、料理を待つ人にとっては、その出来上がっていく過程をのぞきながら、会話が生まれる。オープンキッチンのレストランのような一体的なワクワク感があります。
片側だけ壁に接した、半島を意味する「ペニンシュラキッチン」は、対面キッチンの中でもスペース効率と開放感のバランスが取れたスタイル。
ただ、リビングと一体的な空間だからこそ、視線が抜けるキッチン上空で、レンジフードをどう唐突感なく存在させるかは、設計上気になるポイントの一つだと思います。
料理をする際の使い勝手はもちろん、使っていない時も含めた日常の佇まいのありようが、すっきりと美しくあるためには?そこにゼロから向きあって開発したのが、横付け専用の『フラットサイドフード』です。
理想のありようを考えてみました
まず大切にしたのは“空中での存在感”。リビングからオープンに見える位置に設置されるからこそ、設備感をできる限り抑えることに注力しました。
レンジフードは、煙を吸い込むファンを内蔵し、どんな形状のフードでコンロ上を覆うのか、ダクトをどう接続するか、本体を壁や天井からどう設置するか、という合わせ技。
シンプルな箱が、コンロ上にすっと浮遊したように見せたい。ボルト露出の天吊りでなく成立し、ダクトも隠せるように……となると、壁付け一択。壁付け専用のブラケットを開発しました。重量のある本体を垂れずにしっかり支えます。
本体の大きさは、シロッコファンを内蔵した上で、壁からのコンロの離隔距離などを考慮した出来る限り最小限の寸法に抑えました。
排気ダクトは壁内にルートをとっていただければ、理想的なスッキリ納まりが実現します。
リビングと一体的な空間では、レンジフードの照明も、ただ手元を照らす作業灯以上の役割があると思っています。幅広のフード下をしっかり照らせるよう、ダウンライトを2灯。
料理中はもちろん、食事中にそっとキッチン付近を照らしたままでも雰囲気を邪魔しないよう、温かみのある電球色を採用しました。底面につけたトグルスイッチでパチパチと操作します。
下からの見上げは、整流板と合わせてとにかく余計なものが見えてこないよう、開閉金具にはマグネットラッチを採用して、スッキリを追求しました。
煙は拡散前にしっかり捉えて
オープンなキッチン天板上は、気流の流れを遮るものがなく、空気の対流が起きやすいもの。特に天井高のある空間は、煙が上がってきたところを拡散する前にしっかりキャッチして吸わなければ、いくらカタチにこだわっても本末転倒です。
そこで、煙をしっかり吸いこむべく、オリジナルの整流板スリット「エアグリップ」を採用。幅15mmのスリットが煙を掴むように吸い込み、しっかりと捕らえます。
排気ダクトは、ダクトが露出しない横排気の他、上方排気タイプもご用意しました。また、本体のブラックとホワイトに合わせたカラーダクトも選択可。状況に応じて使い分けください。
こんなペニンシュラキッチン空間ができることを夢見て
今回の開発中、何人かの親しい設計さん達に、このサイドフードが採用できそうな現場がないかとヒアリングをしたのですが、「こんなサイドフードが存在すると思ってないから、吹き抜け下のオープンなキッチンは、プランの選択肢から外していた」という回答が……
そもそも、“脇役”であるはずのサイドフードが、その選択肢の無さゆえ、知らず知らずのうちにプランニングの可能性を狭めていたという衝撃の事実。
この「フラットサイドフード」があれば、レンジフードの天吊りも難しいような、高い吹き抜け下にすっと伸びやかに構えるペニンシュラキッチンなんてプランも実現可能なんです。
設計者のみなさん。ぜひ「フラットサイドフード」を頭の片隅にインプットしておいていただき、お客さまと一緒に理想のキッチン空間の設計を叶えてください。キッチン空間の可能性が広がることを楽しみにしています。
イラスト:オノタツヤ