©︎YOUNHYUN / 写真提供:YOUNHYUN

映画、音楽、ファッション、コスメ、フードなど、あらゆるものが日本でも人気となっている韓国。コンセプチュアルなアパレルショップや町工場を大胆にリノベーションしたカフェなど、斬新な空間デザインも注目を集めています。2024年1月、韓国・ソウルの江南エリアに、toolboxのポップアップスペースがオープンしました。海外でのポップアップ開催の舞台裏と、その地下にあるイベント会場で代表の荒川がトークセッションに登壇した模様も併せてお届けします。

toolbox渡韓の裏側

そもそも、今回のポップアップスペースの企画は、グループ企業のスピークで働く韓国人スタッフ、ミンさんの働きかけから始まりました。スピークで設計に携わりながら、建築や設計という文脈のなかで母国の韓国でも何かできないだろうか?と考えたときに着目したのがtoolboxです。連日行列ができている古い劇場や工場をリノベーションしたカフェに、観光客に人気の伝統的な韓屋づくりの宿など、いま韓国はリノベーションブーム。住宅やオフィスのリノベーションにも注目が集まっています。

元々は町工場が立ち並ぶエリアだったソンスの工場や倉庫をリノベーションしたカフェ。

韓国の伝統的な住宅「韓屋」を現代風にアップデートした宿は海外からの旅行者に人気。

ミンさんが、韓国の設計事務所や建材ショップにtoolboxのカタログを送付して「toolboxと一緒に何かやってみませんか?」とコンタクトをとってみたところ、ソウルにある建材商社「YOUNHYUN TRADING」の目にとまり、ポップアップスペースでの展示を提案していただきました。
提案を受けて、やるなら商品の輸出ではなく、toolboxのビジネスモデルとカルチャーを輸出したいと考えた私たち。扱う建材をエンドユーザーに紹介し、現地のかっこいい職人さんやセンスのいいデザイナーさんとの繋がりをつくり、その国の楽しく豊かな家づくりに関わっていく。韓国でチャレンジしたいことは、いま日本でやっていることの延長線上にあると捉えて、このプロジェクトを進めることを決意しました。

建材もスタッフもいざソウルへ!

商品開発チームのメンバーを中心に、toolboxのビジネスモデルやカルチャーを伝えるべく展示プランを考えて、建材や什器の準備を進めていきます。最終的にトラックに載せた数は、大小あわせて約130点!

トラックいっぱいに積まれた建材たちがひと足先にソウルへ出発!

ポップアップスペースがある「YOUNHYUN Material Library」は「YOUNHYUN TRADING」が運営する設計者・クリエイター向けの建築材料やインテリア関連プロダクトのショールーム。ずらりと並んだ棚に、さまざまな表情のタイルや意匠を凝らしたガラス材・アクリル材などが陳列されています。

まるでtoolboxのミニショールーム

今回のポップアップスペース用に用意していただいたのは、フロアの一角の広々としたエリア。現地のスタッフの力も借りながら、設営を進めます。

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数日後には、おなじみの商品たちが並ぶ、まるでミニショールームのような空間が完成。商品の展示はもちろん、動画コンテンツや韓国語に翻訳されたコラムのパネル掲示なども用意し、日本のショールームとは異なる工夫もこらしています。そして2月2日には、地下のスペースを使って代表荒川が登壇するトークイベントが開催されました。

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안녕하세요,밥 먹었어요?

トークイベント冒頭ではまずミンさんが展示スペースを案内し、自身が関わる株式会社スピークの仕事や、東京R不動産について韓国語で紹介します。見慣れているはずの写真や資料も、韓国語で書かれているだけでなんだか新鮮でワクワクするような気持ちに…私だけですか。

その後は、TOOLBOX代表の荒川にバトンタッチして、流暢?な韓国語の挨拶「안녕하세요,밥 먹었어요?(こんにちは、ご飯は食べましたか?)」でスタート。toolboxの成り立ちやビジョン、事業内容について話を展開していきます。会場に集まった約30名の参加者は、メモをとったり写真を撮ったりしながら真剣に耳を傾けていました。

日韓建築談義

続いて、日本の建築にも造詣が深い、韓国の建築家パク·チャンヒョンさんと荒川のクロストーク。韓国が抱える建築にまつわる課題や昨今のトレンドを切り口に、日本の状況やtoolboxの視点を交えて対話が進んでいきます。

都市が抱える古ビルの問題

パク·チャンヒョン氏

ソウルでは、都心の古い賃貸ビルの市況が厳しいため、現代的にリノベーションをする会社が増えています。空間に対する価値観の変化が芽生えているように感じますが、 日本でも既存の建物に新たな機能を与えた良い事例はありますか?

荒川

日本のオフィスビルでは、オフィスフロアの需要が減っていて、コワーキングスペースに用途変更するような事例が自然発生的に増えています。また、人口減少により学校が減っているので、使われなくなった学校をインキュベーションオフィスにするような事例もあります。

パク·チャンヒョン氏

東京・千代田区の3331 Arts Chiyodaも、古い学校をアートセンターに生まれ変わらせた事例ですね。

荒川

残念ながら、3331 Arts Chiyodaは2023年に閉館してしまいました。課題解決をきっかけに新しいカルチャーが生まれていくのは素晴らしいのですが、一方でカルチャーとエコノミクスは常に戦っている。結果的にカルチャーが負けてしまい、新しい取り組みの継続が難しいという現状もあります。

自分らしい家づくりのインフラ

パク·チャンヒョン氏

韓国では、建築家やインテリアデザイナーが提案して進めていく従来の家づくりが一般的です。 しかし、最近は自分らしい空間を求める人や、SNSで住空間を紹介する人も増えてきています。一方で、工事内容や予算など不明瞭な部分も多く、まだまだDIY文化が未成熟なのですが、その理由の一つがインフラの不足だと感じています。 日本の状況はどうでしょうか?

荒川

SNSやYoutubeで色々な情報が流れてきて、それを真似して自分で作っていくという動きは日本でも起きています。SNS上には、DIYの人、古民家暮らしの人など多様なスタイルがあります。見様見真似で家づくりをしている人もたくさんいると思いますが、リノベーションやDIYの「インフラ」という意味では、toolboxはその一端を担っているかもしれません。何と何を組み合わせたら雰囲気よく見えるか、価格はいくらか、そういう情報はしっかり提供できていると思います

クロストークのあとには、荒川が参加者からの質問に答えていきます。「建材の仕入れ・オリジナルの比率は?」「お客さんはエンドユーザーとプロユーザーどちらが多い?」「哲学やビジョンは素晴らしい、でも実際ビジネスとしてどうなんですか?稼げますか?」なんていう鋭い質問も。沢山の方が挙手してくださり、toolboxの事業や日本の建築・リノベーションを取り巻く環境への関心の高さが伺えました。

建築も国境を越えられるはず

今回の渡韓とポップアッププロジェクトは、toolboxにとっても大きな刺激になりました。韓国のさまざまな建築物や空間、人々の暮らしを目にして、私たちの知らない建築の進化のかたちにワクワクしましたし、ソウルのまちの古いものとあたらしいものが入り混じるカオティックな雰囲気に胸が高鳴りました。 簡単に国境を越えてあたらしいカルチャーが入ってくるファッションやグルメと比べると、建築や空間づくり、家づくりの分野は様々なルールや慣習に縛られていて難しい側面があります。 でも、本当は建築だって、国境を越えられるはず。 日本の建築や建材ももっと世界中の人に知ってもらいたい。私たち自身も、世界中の多様な歴史・文化を吸収して、より広い視野で空間づくりを捉え、情報発信やビジネスにつなげていきたい。改めてそう考えるきっかけになりました。海外展開への夢が膨らみます。

ソンスにある老舗の食堂。サインのあしらいこそ現代的だが、建物と提供される料理はクラシック。

やってみたいが叶う(かもしれない)会社

実は、トークイベントの最後には、こんな質問がありました。

「TOOLBOXのスタッフは、フリーエージェントですか?」

TOOLBOXの前身、東京R不動産の働き方に関する書籍(『だから、僕らはこの働き方を選んだ』韓国語版)を読んだ方からの質問でした。対する荒川の答えはこちら。

「事業成長に伴い、今のTOOLBOXは組織になっていますが、フリーエージェントのマインドは受け継いでいます。実は今日のこのイベントも、独自に準備を進めたメンバーから呼ばれたから、僕はここに来たんです。ミンくんが韓国にカタログを送りたいと言ったからやってもらったら、展示できませんか?という話になって、3人のメンバーでその準備を進めてくれた結果が今。
やってみたいことがあれば、それを実現するための土壌として会社という場を使ってもらうのは大歓迎ですし、今までもそういった試みから新規事業が生まれています。今回のこのプロジェクトを通して事業性が見込まれれば、韓国拠点ができる可能性もありますね」

事業としての可能性やあたらしい価値観、眼を見張るような面白さがあれば、「やりたいこと」をかたちにできるかもしれません。どうしたら実現できるのかを自分で考えて、具体的に動ける人にとっては、自分らしく働ける環境が用意されています。建築・設計のスピークやOpenA、不動産仲介の東京R不動産、スタジオ検索サイトの[R]studioといったグループ企業に、領域を横断したナレッジが蓄積されている点も魅力だと思います。

ポップアップは4月末まで開催中

こちらのポップアップスペースは4月末まで開催予定です。もし韓国に行く機会があれば、ふらりと立ち寄ってみてください(予約不要)。同じフロアに韓国で流通している素材がたくさん展示されているので、空間づくりの刺激やヒントをもらえると思いますよ。

『YOUNHYUN Material Library』
Instagram:@younhyun_library
住所 : 서울 강남구 논현로132길 5 문영빌딩 2층
期間: 2024年1月31日〜4月30日(予定)