本来なら施工会社が行う作業を施主が行う施主支給は、家づくりのパートナーとなる施工会社の理解と協力を得ることが大切になります。施主支給への対応は施工会社によって異なり、受け入れる会社もあれば、「施主指定ならOK」という会社も。どうして施工会社によって違うのでしょう? 改めて「施主支給」とはどんなものなのかを確認しながら、各社の施主支給へのスタンスと、その背景にある「空間づくりのプロ」としての考えを聞いていきましょう。

「施主支給」とは?

「施主支給」とは、建材の発注・受け取り・検品・現場への支給といった取り付け工事以外の作業を、施主自身で行うこと。一般的な家づくりでは通常、それらの作業は施工会社が行います。建材の仕入れは専門の商社を通じて行うケースが多く、取引価格は施工会社や仕入れ先によって異なり、施主は見積もりの段階で建材の値段を知ります。一方、施主支給では施主が自分で購入するので、例えばネットショップで売られている建材を、値段を確認した上で購入できます。

通常の家づくりと施主支給で違うのはもう一点、保証のこと。施工会社経由で仕入れた建材に不具合があった時は、施工会社がメーカーや配送会社への確認、工事のやり直しなどの対応をしてくれますが、施主支給品は基本的に施工会社の保証範囲外。明確な施工不良以外は、施主の自己責任となります。

「施主指定」という方法も

自分で発注から行うのは大変そうだな……という時には、使いたい建材を指定する「施主指定」という方法もあります。指定した建材を売っているネットショップを施工会社に伝えて買ってもらう方法もありますし、施工会社の仕入れルートで手配できることもあります。施主指定の場合、指定した建材に破損や不具合があった場合には、施工会社が対応をしてくれます。

家づくりのプロたちに聞いた「施主支給」事情

施工会社によって、施主支給の受け入れ度はさまざま。どうして違うのか、注文住宅やリノベーションの設計・施工を行っているプロたちに、各社のスタンスとその理由を聞いてみました。

株式会社ルーヴィス
代表取締役 福井信行さん

ルーヴィスでは、施主支給も施主指定も受け入れています。理由は、コミュニケーションコストがかからないから。僕らが専門の商社の取扱品から探してきて、施主に提案して「ちょっと違うな」となるより、施主が気に入ったものを自分で見つけてきてくれた方が早いですよね。建材の選定がスムーズになることが、施主支給と施主指定のいいところだと思います。

施主支給を希望された時は、施主に行ってもらう作業や、取り付けの施工費はかかること、不良品だった時は施主の自己責任になることを説明して、判断してもらっています。あと、使いたいものがある時は、買う前に相談して欲しいとも伝えています。施主が建材を用意した後で「それはここには取り付けられない」といったこともあり得るので。関連部材が必要になる場合は「これも用意してね」とアドバイスしています。

「これを使いたい」と施主が希望する建材の種類は、照明器具などの小物だけじゃなく、キッチンや洗面機器などの大物、床材やタイルなど広い面積に使うものまで、幅広いですね。その中でも施主支給になることが多いのは、施主が受け取りも管理もしやすい小物。数量のあるものや大きいものは、発注ミスや施工後にトラブルが起きた時の影響が大きいことを考えて、施主指定を選ぶ方が多いです。

施主支給はコストダウンできるイメージがあるかもしれないけれど、施工会社が専門の商社から仕入れた方が安い場合もあるし、ネットショップで売られているものが一番安いとは限りません。でも、どんな建材がいくらなのかを知って、比較して、納得した上で選ぶことは、とてもいいことだと思います。

株式会社アートアンドクラフト
取締役兼設計監理部門マネージャー 枇杷健一さん

アートアンドクラフトでは施主指定はOKで、施主支給は基本的に受け入れていません。どうしても施主支給したい物がある時は、施主の作業と保証対象外になることの了承を頂けたら、受け入れています。以前は施主支給の希望全般に応えていたけれど、実際に行ってみるといろいろな問題が起こる可能性がわかってきたからです。

ひとつは工事の進行管理の問題。工事で使う材料は工事進捗に合わせて手配する必要があり、遅れても早く届きすぎてもダメ。受け取りの問題もあって、建材の配送は玄関まで持ってきてくれなかったり、受け取りに複数人が必要なこともあります。そうしたことを考えると、僕らが手配をした方が進行がスムーズ、というのが理由です。

ふたつ目は保証の問題。施主支給品にトラブルが起きた時、何が悪かったのか?誰が保証するのか?が、はっきりさせにくいんです。その時、一番リスクを被るのは施主です。引き渡しが遅れる可能性もあるし、入居後なら解決まで不具合がある状態のまま住むことになります。建材の発注も施工も一貫して僕ら施工会社が引き受ければ、責任も僕らが引き受けることになって、素早くトラブル解決に臨むことができる。それが、施主のベネフィットになると考えているからです。

建材は「買って終わり」じゃないんですよね。今はいろんな建材がネットでも売られているから、値段だけを見てしまいがちだけど、僕らの提示する工事費には、材料費と施工費の他に、発注や受け取り、検品、管理、トラブル対応などの手間賃も含まれています。施主支給を相談された時、お客様にそう説明するとみなさん納得してくれるので、家づくりの見えない手間と費用について理解してもらういい機会になっています。

EcoDeco
コーディネーター兼設計 岡野真弥さん

EcoDecoでは、私たちの方から施主支給を提案することが多いです。予算内におさめるために何かを諦める、ということをなるべく無くしたいからです。

コンロやキッチン水栓、換気扇や食洗機、洗面器やトイレなどの設備機器は、そもそもの価格が高いので、安く買えた時の金額差も大きくなります。これらの設備機器類は取り付け工事のみで済むことが多く、壁や床をつくる工事に絡まないことがほとんどなので、何を使うかが先にわかっていれば、工事進行がしやすい利点もあります。施工会社経由で仕入れた場合の値段と、施主がネットショップなどで買った場合の値段を比較検討していくのは大変だけど、積み上げていくとそれなりの額を削減できます。

ただ、施主支給品は基本的に施工会社の保証対象にならないので、製品に不良があった時は、施主が自分で購入店やメーカーに問い合わせる必要があることを説明して、ご理解いただける方のみに施主支給をお願いしています。あとは、製品名や品番の間違いによる発注ミスに気をつけることと、施工会社が指定する時期に合わせて支給することを注意点として伝えています。

私たちEcoDecoはリノベーションの設計を担当していて、工事は別の施工会社にお願いしています。支給品の手配がスムーズに進行するよう、施主には支給品のリストを作って渡したり、現場の工事進捗を伝えるなどしてサポートしています。支給品を現場に送って施工会社に受け取ってもらう時は、施主と施工会社でやりとりしてもらっています。そういうことが面倒だなと思う人には向かないかもしれませんが、頑張れる人にはおすすめしたい方法です。

株式会社 匠陽
部長 木村雅紀さん

私たち匠陽では、施主支給は基本的に受け入れていませんが、施主指定はOKです。施主が見つけた建材は、アンティーク品などの一点ものでなければ、大体のものは私たち施工会社経由でも仕入れることができます。そこに取り付け施工費がかかるのは、施主支給でも施主指定でも一緒です。

じゃあなぜ施主支給は受け入れていないのかというと、工事を円滑に進めるため。例えば「家電量販店でエアコンを買って施主支給したい」と言われることが多いのですが、工事の状況によっては、室外機だけ後日現場に搬入したいという場合があったりするんです。施工会社の仕入れルートだと、そんなふうに工事状況に合わせて融通が効かせやすく、結果、工期も守りやすくなります。

保証のこともあります。施主支給品にトラブルが起きたら施主の自己責任になりますが、私たちが建材の手配をすればトラブル対処も私たちが行います。

あとは、施工上の理由。施主支給されたものが下地がないと取り付けできないものだったり、関連部材が足りなくて取り付けができない、なんてことも。でも施主指定だったら、それを取り付けるために何が必要になるか施工会社側であらかじめ考えて計画や手配をするので、そういう事態を避けられます。

「これを使いたい」を叶える方法が施主支給だと思っている方も多い気がします。一番叶えたいことがその建材を採用することなら、施主指定で実現できることもあります。

元ハウスメーカー社員
(現:株式会社TOOLBOX) 森村 慧

自分が勤めていたハウスメーカーもそうでしたが、さまざまなハウスメーカーで働く知人たちに話を聞いたところ、「基本的に施主支給は受け入れていない」という返答でした。

ハウスメーカーの住宅は、建物の構造や性能を標準化していて、工法や工事進行もシステム化されています。使う建材は品質保証も考えてセレクトされていて、提携している建材メーカーや専門の商社から一定数を仕入れることで、建材を安定確保したり、住宅価格をコントロールしています。そこへ標準仕様外の建材を入れるとなると、システムや保証が維持できなくなりやすいんですね。融通が効かないように見えるかもしれませんが、そうした家づくりによって、家の完成イメージや価格をわかりやすくしたり、品質保証ができるようにしているんです。

ハウスメーカーや担当者によって判断が異なるので一概には言えませんが、「これを施主支給したい」という強い要望がある場合、ハウスメーカーによる保証の範囲外になること、取り付けの施工費がかかることに納得してもらえれば、受け入れることもあるそうです。建物の構造に関わるような大きな設備や使う面積が広いものは難しいですが、照明器具やペーパーホルダーなどの小物なら応えてもらいやすいみたいですね。施主指定については比較的受け入れやすいそうですが、ハウスメーカーがあまり取り扱ったことのないメーカーの建材や輸入品などは、施工性の観点から敬遠されることも。手間賃が追加で発生することもあります。

とはいえ、ハウスメーカーもお客様が満足する家を提供したいという気持ちで家づくりをしています。「これを使いたい」というものがあったら、まずは一度相談してみて欲しいですね。

ツールボックス工事班|TBK
一杉伊織

僕たちTBKでは、施主から「これを使いたい」という話があった時、それを採用するには施工側で手配するのがいいのか、施主支給してもらうのがいいのか、どちらが最適かを判断して対応しています。

例えば、買う時に現物を見ておいたほうがいい作家ものやアンティークなどの一点もの、お店で買ってその場で持ち帰らなければいけないものは、施主に用意してもらった方が確実です。建材の購入先や発注タイミングがバラバラになるのは施工側としても手配が煩雑になってミスが生まれやすいし、購入先ごとに決済をまとめたいという経理上の事情もあったりします。施工側で手配することもできるのですが、そういう建材の手配を施主に行ってもらえることは、プロにとっての施主支給のメリットと言えるかもしれません。

工事が始まるまでに使うものを決めきれなくて、施主支給になるケースもあります。工事進行を優先して、本当は施主があまり気に入っていないものを使って「なんだかなぁ」となるよりは、施主の満足度を優先したいと思っているからです。

ただ、施主支給をしてもらう時は、副資材や関連部材はどうするのか、受け取りをどうするのかを考える必要があるし、支給が遅れたり部材が足りなかったりすると、工事が遅れて再度工程を組み直す作業が発生することもあり、その点は施主に説明しています。建築の工事は状況に応じた判断や下準備が必要になるので、できる限り計画的に効率良く進めることが重要。施主支給を取り入れた家づくりをスムーズに進めるには、施主と施工会社が一体感を持って取り組むことがとても大事だと思います。

「目的」に合わせて、プロと一緒にベストな手立てを考えよう

施主支給では、本来施工会社が行う建材の手配作業を施主が行いますが、施工会社にとっては通常と違う流れの中で家づくりを進めることになり、工事の遅れやトラブルが起こるリスクが生まれます。それは、施主にとっての不利益につながる可能性もあります。施主支給に対するスタンスはそれぞれですが、家づくりのプロたちが大事にしているのは、「施主が満足と安心を得られる家をつくる」こと。そうしたプロの考えも尊重しながら、自分たちの目的の実現にベストな手立てを一緒に考えてくれるパートナーを検討しましょう。

今回お話を聞いたプロは「職人さんが気持ちよく仕事ができる家づくりは、いい家になりやすい」と話していました。施主支給を取り入れた家づくりでは、工事がスムーズに運ぶかどうかは施主の仕事ぶりにかかっています。次回Vol.3では、施主支給で施主が行う具体的な作業と、気をつけたいポイントについて説明します。

illustration:Kazuya Mougi

株式会社ルーヴィス

古い建物を活用し、既存のいい部分は活かしながら「懐かしい新しさ」に変化させるリノベーションを行っています。
toolboxでも初期からお世話になっている施工パートナーです。

※お住まいになりながらの改修工事はお受けできません。

株式会社アートアンドクラフト

建築設計/施工/不動産仲介/建物再生コンサルティングのプロ集団です。
大阪・神戸・沖縄を拠点に、マンション1室からビル1棟まで既存建物の再生を得意としています。

大阪R不動産も運営しているtoolboxのグループ会社です。

EcoDeco(株式会社Style&Deco)/ エコデコ

中古マンションの仲介から資金計画、リノベーションにまつわるあらることをトータルにサポートすることを得意とした会社です。
コーディネーターは、不動産探しから設計まで一貫して担当できる不動産と設計のプロ。

株式会社 匠陽

「お客様に本当に喜ばれるものを作ろう」をモットーに、新築からリフォームまでを手がける杉並区/西荻窪を拠点とする設計・施工会社です。

ツールボックス工事班|TBK

toolboxの設計施工チーム。

住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。

 

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