撮影:Masanori Kaneshita

After Reformという選択肢

家づくりというものは、妄想を広げて楽しくスタートするものの、計画を進めるうちにどんどん予算が膨らんでいき、費用のために何かを諦めなければいけない場面が出ることも。

そんな時、すぐに必要でないものは最初の工事でつくり込まず、お金に余裕ができたり、生活スタイルに変化があったタイミングなど、自分たちの暮らしのペースに合わせてつくり足していく。toolboxは、そんな「After Reform」という家づくりの選択肢を、もっと広げていきたいと思っています。

今回ご紹介するのは「After Reform」を実行した、神奈川県藤沢市にお住まいのファミリー。ご夫婦と小学生3年生、幼稚園年中の娘2人の4人暮らしです。

2年前に中古戸建てを購入してリノベーションしており、完成時の様子は「かわいい戸建てリノベ」でもご紹介しました。

リノベーション当時から、空間はつくり込みすぎず、DIYなどしながら整えていこうという方針だったのですが、住み始めて2年目に、リビングの一面に職人サービスを利用して『可動収納棚』を取り付けました。

2022−2023年のtoolboxカタログ後半の「after reform」という見開きページでもご紹介した、こちらの壁一面の収納棚。今回、「可動収納棚」を取り付けようと思ったわけ、住みながらの工事はどうだったのか、その後の暮らしぶりを、夫のこうへいさん、妻のさくらさんに取材してきました。

リノベ時は、東京R不動産・馬場さんの「とにかく白く塗れ」の教えに忠実に

中古マンションのリノベーション事例はたくさん見かけますが、戸建てのリノベとなると、まだまだ圧倒的に事例が少ないもの。間取りは大きく変えず、余白を残してリノベーションした、この家の事例「かわいい戸建てリノベ」は、「間取りを変えたりしなくても、表層の仕上げを変えるだけで、こんなに雰囲気が変わるんだ」というのが、すごく印象的でした。

(左)before (右)after  白と明るい木の組み合わせに変えるだけで、廊下と階段スペースがすっきり明るい印象に。

before

after リビングは和室を壊して、『ラスオークフローリング』に。

こうへいさん

昔から東京R不動産(toolboxのグループ会社)のファンで、東京R不動産のコラム東京R不動産のディレクター馬場正尊の初期オフィスの改装の奮闘記)で目にした「リノベはとにかく白く塗れ」という教えがずっと頭に残っていたんです。予算のこともあって、当時はそれを忠実に実行したんですよね(笑)。

今回、追加で工事をしたリビングの壁は、元々和室だったところ。リノベ当時も棚を作りたいと思っていた部分です。

僕が持っている大量の雑誌をそこにしまいたいと思っていたんですが、すで予算ギリギリの工事内容だったので、泣く泣く諦めた因縁の箇所でした。

とりあえずの白い壁と向き合い、妄想する日々

住み始めた頃の様子。ソファー横の壁が、造作棚を諦めた部分。

とりあえず白い壁のままにして住み始めたものの、リビングで過ごしていると常に目に入る箇所なので、だんだんとその空白が気になるように。こうへいさんは家具を置いて絵や本を飾ることを考え始めますが、デザイン的に納得のいく家具を追求していくと、100万円くらいになりそうだ、となかなか決断できずにいたそうです。既製品でちょうど良いものがないならDIYでつくってしまう、という選択肢も人によってはありますが……。

こうへいさん

この壁については、DIYで何かつくろうという発想はなかったですね。引き渡し後に追加で職人さんに頼んで庭にウッドフェンスを立ててもらったんですが、やっぱり出来上がってみるとプロはクオリティが全然違って。当初は、DIYしようかなと思っていたので、事前に知り合いがDIYした庭を見に行ったりしたんですが、相当DIYが得意な人のつくった塀と比べてもレベルが全然違った。そこでプロのすごさを痛感しました。

このリビングの白い壁面に対しても、いい家具とかを置いて出来上がるであろう世界観と、自分のDIYスキルで出来るものでは、クオリティが乖離しすぎているのは想像できていたので、DIYという選択肢はなかったです。

あと、家の中には他にも、追加で手を入れたい箇所はいくつかあったので、白い壁面については検討しつつ、しばらく決め手にかけた状態のままになっていました。

ただ、リノベ完成当時は幼稚園年長だった長女が就学して、リビングに机を置いて勉強しだしたあたりから、リビングに子どものものが溢れてきたんです。これらをどうにかしなければと、リビングの壁面の優先度が一気に上がり、改めて色々検索する中で、あのキャンペーンを知ったんです。

家族の大切なモノ、コトを表すものにしたい

2020年〜2021年にかけて、toolboxのWEBサイト誕生10周年を記念して、いくつかのキャンペーン企画を行いました。ご夫婦はその中の一つ、お好きな商品を提供する代わりに、その商品の注文から製作、ご自宅に取り付けられるまでの工程を動画で撮影させてくださいという企画に応募してくれました。

こうへいさん

「可動収納棚」のことは、キャンペーンを知る前からPinterestで見かけて知っていました。ただ、悩んでいた時期は下の方に学習デスクを置くかもという考えもあったので、全面を棚にすることは選択肢から外れていました。

その後、学習デスクはダイニングの一角に置かれることになり、リノベーションした友人宅で可動棚が使われているのを見たりして、動かせる棚ってやっぱりいいなぁなど心が動いていき、そんな時にタイミングよくキャンペーンを知って、申し込んだんです。

僕たち夫婦は、常に家の困り事、不満を共有して何かいい解決策がないかネット検索する、気になるお店はインスタなどをフォローするっていう習慣が出来ていたので、キャンペーンにも気付くことができました。

imageboxの「#可動収納棚」でも金属製の溝のついたレールに棚板を渡す事例がたくさんありますが、柱のピッチ、棚板の素材によって見た目の印象がいろいろ。

こうへいさん

リノベ当時に妄想していた棚は、自分たち大人の飾るもの、持っていた雑誌などを置くことに重きを置いていたのですが、やはりリビングは家族が長く過ごす場所なので、家族みんなの大切なモノ、コトを表せるものにしたいと思って。

アウトドアグッズ、植物、絵本、これからも増えるであろうものをインテリアとして飾ってソファから眺めたり、本を取り出して読んだり、子どもたちの成長、趣味の変化、季節の移り変わりなどに合わせて、棚を変化させながら楽しめたらなぁと思ったんです。

「可動収納棚」のサービスは、toolboxがお客様の要望をヒアリング。その後に施工パートナーが、現地調査にお伺いし採寸などを実施。後日、面積にもよりますが、1日で取り付け作業が行われます。

キャンペーンで制作した動画がこちら。この家を舞台に、現地調査から、工房での製作、実際に取り付けるまでの様子を、約4分の動画にまとめています。

妹が小さいうちは、下の段が彼女の部屋代わり

そうして出来上がったリビング一面の棚がこちら。上の方は、日々増えていくグリーンや、趣味のアウトドア用品を飾る場に。下の段には、姉妹の本やおもちゃなどが並びます。

さくらさん

いまは棚の下の方は、次女の部屋代わりですね。とはいえ、職人サービスに申し込んだ当時は、ここまで子どもの生活感を出す予定はなかったんですけど(笑)。

次女は幼稚園の年中。朝は、この棚の前で制服に着替えて、帰ってきたら鞄や帽子をしまって、制服を掛けてと、ここで身支度を整えています。

棚板の下にハンガーバーをつけて服をかけられるようにするアイデアは、棚板の位置を自由に変えられる可動収納棚だからこそですね。

撮影:Masanori Kaneshita

あと数年したら、子どもは2人とも小学生。その時には、棚に置かれるものや、配置も変わっていくのでしょうね。家族の成長を映し出すリビング一面の棚。可動棚って、結局ものを入れちゃうと実際そんなに動かさないよね……というのが、使ってる人の大半の意見なのですが、長い目で見た時に、変化を楽しめる余地があるというのは、いいですね。

悩んで足を運んで決めた、色選び

この「可動収納棚」の職人サービスでは、棚の背面に好きな色を選べます。3400色もの色数がある『ベンジャミンムーアペイント』。どうやって、この色を選んだのでしょう。

撮影:Masanori Kaneshita

こうへいさん

色は、すっごい迷いました(笑)。落ち着いたアースカラーにしたいっていうのは最初からあったんですが……。横浜駅にある好きなイラストレーターさんの壁画の色味がいいなと思って、参考にするために家族全員で見に行ったりもしました。

JR横浜駅構内にあるエキナカ商業施設「エキュートエディション横浜」にある花井祐介さんの絵。

「ちょっと冒険しようかな」と、絵の中にあるマスタード色を検討したりもしたそうですが、最終的には、キッチンの床のシートの色に合わせたAmherst Gray(品番:HC-167)というグレーになりました。

キッチンのグレーの床。

湘南にベンジャミンのショールームがあるのを知り、そちらも実際に見に行ったそう。そこで候補色のサンプルをいくつかもらって、家の壁に貼ってイメージしてみたりしながら、色を検討していきました。

ベンジャミンのショールーム。同じ色の系統でもすごくたくさん種類があるので、ある程度イメージを絞り込んでから行くのがおすすめ。

自分の家の壁でサンプルを見比べると、実際の自然光や照明の光に当たった色味を確認できたり、家具や小物とのバランスも確認できます。

さくらさん

ショールームを見に行ってよかったのは、いくつかある艷の具合を実際に確認できたことですね。ネットだけで見ていた時、最初は艷があるよりマットがかっこいいと思っていたんですが、棚に置いたグリーンに霧吹きをして水がかかる可能性があるなら「エッグシェル」の方が拭き取りやすく、水染みもできにくいと聞いて、最終的に「エッグシェル」にしました。

少し艷のある「エッグシェル」の方がのっぺりしすぎず、重厚感もあってよかったです。完成して実際にものを置いてみるとすごくしっくりきて、この色にしてよかったなと思ってます。

住みながらの工事ってどうでしたか?

住みながらの工事は、まわりにある家具などに汚れがつかないよう、一時的に荷物をどかしてもらったり、工事をする側も周辺をしっかり養生をしたりするなど、大変な側面もあります。

ですが、今回の「可動収納棚」のサービスは、棚の背面の塗装の壁も現地で塗るのではなく、あらかじめ採寸して切り出した板に塗装した状態で現地に持っていき、組み立ててビス留めするだけ。時に微調整が発生し、ちょっとベランダなどをお借りして、板を削ったりすることもあるかもしれませんが、基本的には作業する壁面まわりが空いていれば、現地でペンキや粉塵が飛ぶような作業はないので、大げさな養生などは必要ありません。施工面積にもよりますが、約1日で終了です。

作業しているのは、職人サービスのパートナー ANGLO 石岡さん。

さくらさん

動画でもあったように、施工当日は、実はすごいどしゃぶりの雨だったんですが(笑)

朝9時に来られて、途中1時間くらいお昼で抜けられ、作業自体は15時頃終わった感じです。子どもたちが朝、学校や幼稚園に出かけて、帰ってきたら出来上がってました。

(注:今回は動画撮影も兼ねていたので、通常より少し時間がかかっています)

工事直前の白い壁。

工事後の様子。

こうへいさん

実は、いわゆる可動棚のレールって、ホームセンターとかにもあるから存在は知ってたんですが、あんまりいいイメージがなかったんですよね。家具というよりも「収納用品」ってイメージが強くて。

だけど、この「可動収納棚」は、レールは色壁の中に収まっていてすっきり見えるし、レールと棚のピッチも絶妙でうるさくないし。組み上がっていく過程を見ていて、これは自分のDIYレベルや、ただ材料を買って取り付けだけ頼んだのでは出来ない領域で、デザインセンスがある職人さんにやってもらうから、こうして細部までキレイに納まっていて、全体として絵になるスペースになるんだなと感動しました。

レールが色のついた板壁に挟まれたデザインですっきり。

幅木やコンセントを避け、細かい隙間に合わせてぴったり納めていきました。これぞ職人技!

「このボリュームの可動収納棚を実際にオーダーしていたら約25万円という費用感にも、出来上がりのクオリティにも満足しています。結果としてこのタイミングで棚をつくってよかったです」というこうへいさん。

リノベーション当時は、予算が足りないという理由もあったものの、暮らしていくうちに増えていくものの現状を見ながら、必要になったタイミングで手を加えていく。そんな選択肢と、そうした工事を頼みやすい環境が、もっと当たり前に広がっていったらと思います。

2年間の間のちょっとずつのDIY

今回の「可動収納棚」以外にも、住まいの各所をカスタマイズしてきたご家族。最後にこの2年間の他の部分の変化や暮らしぶりをご紹介しましょう。

計画時から、ライティングレールの向きに対して、テーブルの配置が90度変わってしまったダイニング。『ソケットランプ METAL』のコードを長いものに変え、ループさせることでテーブルの上にランプが垂れるように工夫しています。

写真がお上手なさくらさん。工務店が撮影したリビングの様子をその後も定点観察中。子どもの成長とともに、リビングの使い方、変わってきますよね。

撮影:Masanori Kaneshita

当初は照明にポストだけだった玄関周りもにぎやかに。板壁の壁面にハンガーバーを打ち付け長靴を吊るしたり、水やりのホースを掛けたり、増えゆくガーデニンググッズが楽しげに置かれていました。

床は『土間タイル』のグレーを外まで続けて敷いて。(撮影:Masanori Kaneshita )

外遊びが大好きな子どもたちは、近所にある海岸から帰ってきて、玄関を砂だらけにすることもしょっちゅう。そんな時はドアを開け放ち、箒とデッキブラシで豪快に外に洗い流しているそうです。

すっきり暮らせている秘密は、リビングの可動収納棚の裏側にあたる、この階段下のスペースにあり。キャンプグッズやストック類はここに収納。(撮影:Masanori Kaneshita )

リノベーション時は、予算が回らなかったリビングから続く庭。土中に埋まっていた木の根を夫婦でコツコツと掘り起こし、ウッドフェンスと植栽は業者さんに依頼して、整えていきました。

プライバシーが確保された気持ちいいスペースは、コロナ禍で外出が出来ない期間も大活躍。タープの日よけを張った下で、ランチを食べたり、子どもたちと楽しい時間を過ごしています。

before 夫婦で休日のたびに作業をすすめました。

外壁にタープを固定する金具を打ち付けてあり、さっと設置できるように。(撮影:Masanori Kaneshita)

こうへいさん

最初にこの庭を見た時からキャンプ用のタープを付けたいと思ってました。アウトドアのお店で天井に金具をつけて展示してあるのを見たりもしていたので、そこから固定方法のヒントをもらいました。

新築の家だったら、こんな気軽に金具を打ち付けたりしなかったと思うんですけど(笑)、中古で買った家だし板壁だったので、わりと自由にやっちゃってます。

自分たちで出来るところはDIYしつつ、時にはプロの手を借りて変化していく住まい。子どもたちももう少し大きくなったら参戦して、自分たちのスペースを自らつくり上げていきそうですね。

理想的な「After Reformの在り方」を見せていただきました。ありがとうございます!

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