自分にあった料理・家事スタイルは?どこにこだわる?
家づくりの中でも、その家の特徴が表れやすいキッチン空間。toolboxにも日々色々なキッチン空間の事例が集まってきます。キッチンのデザイン、レイアウトはもちろんのこと、家族構成や料理スタイルによって、理想のキッチンのカタチは人それぞれ。だからこそ、キッチンの在り方に“正解”はないと思うんです。
toolboxがおすすめするのは、まず最初に、自分の料理スタイルや家事スタイルにじっくり向きあってみること。
世の中、効率のいい家事動線や、キッチン配置のおすすめガイドなどは沢山ありますが、例えば壁に向かって集中して料理したい人がいれば、複数人でキッチンに立つことが多いからオープンなスタイルがいいと思う人もいる。時短、効率重視で食洗機などの機器に頼りたい人もいれば、お気に入りの器たちを手洗いしたい派もいます。
それぞれが心地よいと感じる、料理の向きあい方、片づけ方、キッチンでの過ごし方を見極めて、そこからキッチンを組み立てていくというアプローチ。そう考えると、もっと自由なキッチンの発想が広がっていくと思うんです。

今回のガイドでは、数々の素敵なお家を訪問してきたPRチームが、写真だけでは伝わらない「住む人のこだわり」や、それを叶えるためのアイテム選びのポイントをお届けします。toolboxのキッチン担当も一緒に、その魅力、ポイントを紐解いていきます。
青島さくら
toolboxの商品開発チーム所属。前職時代から、造作キッチンの世界に携わり、キッチン、水回りアイテムを担当する。
キッチンは、パーツの組み合わせ。欲しい要素を分解して考えてみる
キッチンは、一つの“完成品”というイメージがありませんか?でも実は、キッチンは「パーツの組み合わせ」でできています。水を扱う場所、火を扱う場所、煙を吸う場所、調理や盛り付けをする作業スペース、食器や道具をしまう収納。それぞれを自分の暮らし方に合わせて選んでいくことで、理想のキッチンが形づくられていきます。
たとえば、「魚を丸ごとさばきたい」人なら大きなシンクと広い作業台が必要だし、「飲み水の味にこだわりたい」なら浄水機能付きの水栓を選びたくなる。「中華鍋でガッツリ料理したい」ならコンロは火力重視、「お気に入りの器を飾りたい」、「生活感をとにかく隠したい」なら収納重視。
求める暮らしによって、必要なパーツの優先順位はまったく違ってきます。パーツを分解して考えていくと、「水」「火」「煙」「作業スペース」「収納」といった機能の集まりでキッチンが成り立っていることが見えてきます。
限られたスペースや予算の中で、どこにこだわりを置くか。
世の中では、ハイグレードなキッチン=サイズが大きく、設備もハイスペックというイメージがあるかもしれません。でも、「サイズは小さくていいけど、コンロだけは海外製のハイパワーなものにこだわりたい」そんな自己満足を叶えたキッチンがあってもいいと思うんです。
自分が心地よく感じる“こだわりのバランス”を見つけることこそが、あなたらしいキッチンをつくる第一歩です。
まずは、自分がキッチンに求める要素をパーツごとに書き出してみましょう。そして、既製品のキッチンで叶えるのか、造作でつくり込むのかを見極めていく。
このキッチンガイドでは、そんな“自分仕様のキッチンの組み立て方”を一緒に探っていきたいと思います。
こだわり強めなキッチン事例を解剖!どんなパーツでつくってる?
自己満足な思いを叶えたキッチン事例たちを、ご紹介していきます。住み手に、どんなこだわりがあったから、このカタチのキッチンが生まれたのか。それを叶えるためには、どこに重きを置いてアイテムが選ばれ、キッチンが組み立てられていったのか。それぞれのポイントを解説していきます。
case1 気に入った古家具に設備をはめればキッチンに。気分と役割に合わせてシンクもコンロも2つずつ
はねだし部分を含めると、約3mにもなる大きな木製のキッチンカウンターが主役のIさんの家。「座っている場所の近くに水場があるといい。便利なだけじゃなく、なんかワクワクする」と、キッチンというよりは、水の湧くテーブルをつくりたいという発想で、古道具屋で購入したワークテーブルを部分的にくりぬき、パーティーシンクとIHコンロをはめ込んでキッチンに仕立てました。コーヒーを入れたり、料理の盛りつけをする場として使われています。
「料理が好きで使いたいアイテムだけは明確に決まっていた」と、壁沿いの御影石のカウンターには、実験用シンクと、IH、銅鍋を使うためのラジエーター。下部には、海外製の洗濯機に食洗機、スチームとコンベクションオーブンが2台といった大きな設備たちが、高さ940mmで造作した木製のフレームに納まっています。
気分や何をするかによって、作業する場所を使い分け。まさに「キッチンはパーツの組み合わせ」を体現したキッチンです。
天板の上からかぶせるカタチで設置するオーバーシンクは、造作のしやすさもあって、海外ではよく見かける人気のスタイル。天板とシンクが一体的につくられたシステムキッチンに見慣れていると、すごく工作的に感じるかもしれませんが、施工性もよく木天板に憧れる方にはおすすめのスタイルです。
case2 つくると食べるの距離を近づけたい。シェフズテーブルのようなIHを一体化したダイニング
料理をつくるのも、料理教室にいくのも、人をもてなすのも好きというAさん。スペースの狭さと、「あたたかいものをそのままサーブしたい」という思いからつくりだしたのは、IHの埋め込まれたセラミック素材のキッチン天板兼大きなダイニングテーブル。IHの下には、電気オーブンもビルトイン。壁側には、シンク、食洗機、冷蔵庫、収納がビルトインされた4mの長いカウンター。熱々のオーブン料理ができあがれば、熱に強い天板にそのまま大皿を載せられる。料理をしながら、会話がはずむキッチンです。
ダイニングテーブルにコンロ又は、シンクを組み合わせて使いたいときに気をつけたいのが、天板の高さ設定。キッチンの高さは850〜900mm前途、テーブルは750mm前途推奨なので、150mmほどの差が発生します。配管スペースを考慮して床を少し立ち上げる、椅子をハイスツールにするなど、配慮が必要です。
ただし、コンロを組み込む場合は、高さはテーブルに揃えて低めでも、実際は鍋などを置いて使うため、使い勝手に問題はありません。
case3 大量のツールや食器を見せて愛でたい。3mのステンレス天板とアイテムに合わせた収納たち
昔、海外旅行先で出会った、壁付の長いキッチンに憧れていたOさん。「とにかく長いキッチンが欲しい」「たくさんの好きなものを見せながら収納したい」と、使いやすい好きな高さに設置出来る、天板だけのキッチンをオーダーしました。
オープンな下部は、どう使っていくかの自由度が高いので、既製品のステンレスラックの高さを調整して食器棚代わりに設置。カトラリーなどの細かいものは、ケースを引き出し代わりに。持ち物の増減や気分に合わせて、思い立ったらすぐに収納を組み換えていける自由さがあります。

事前にしっかり計画しても、食器類が増えていったり、ごみ箱、調理器具の置き場なども、より使い勝手のいい場所はないかと、少しずつ手を加えたくなるもの。置き家具を組み合わせて収納を計画すれば、生活スタイルの変化に合わせて、自分の好きなタイミングで模様替えが可能です。
case4 手元スッキリ。頭上もスッキリ。リビング空間とつながる秘訣は、天井に埋め込まれた換気扇
子供も小さく、共働きで忙しい日常生活。「雑多な生活感をとにかく見せずに、すっきりと」「天井低めの空間でも開放感を」を望んだSさん。玄関から入るとすぐにキッチンカウンターがお出迎え。奥のリビングまで視界がつながる、一体感のあるつくり。手元を隠せるカウンターの裏は、IHコンロのあるキッチンが設置されている。キッチン背面にある大きな木目の引き戸を開け放てば、調理家電と食器などが使いやすいつくり。さらには、天井に四角く空いたスリットがレンジフード代わりに煙を吸ってくれ、設備感を徹底的に隠したつくりとなっています。
特に対面キッチンの場合、大きなレンジフードが頭上に存在すると、「設備感」が目立ってしまいます。特にマンションのリノベーションで、本来の位置からキッチン位置を動かす場合は、ダクトのルート、天井の高さとのバランスも大事なポイントです。
パーツにこだわった自己満足なキッチン事例たちをご紹介しました。次章からは、「水」「火」「煙」「収納」とそれぞれの要素を深堀して、解説していきます。
Vol.2は、実は最初に考えて欲しいと思っている「水」とのつきあい方編です。お楽しみに。(10月下旬公開予定)