「未来社会の実験場」と位置づけられ、世界中から最新技術やアイデアが集まる大阪・関西万博。
半年限定で建てられたパビリオンは、解体を前提とした設計や期間限定ならではの建材の使い方も見どころです。
関東在住のスタッフが多い我々toolboxのスタッフも現地を訪れ、各パビリオンを見学。素材や建材の使われ方に注目した時に印象に残ったポイントを紹介します。
外観からその国の歴史や環境を想像して楽しむ(ポルトガル館 / ハンガリー館)
豊田(大阪ショールームスタッフ)
京都住みの私は「こんな幸せは人生にそうそうあることじゃない」と、大阪万博開催の半年間を海外旅行しまくる気持ちで、期間中毎日入場可能な通期パスを手に入れました。
この期間のためだけに準備された、海外パビリオンの非日常な建物や建材。コストを抑えてシンプルな骨格を大きくみせた外装やその国ならではの素材など、各国の工夫を読み取るのが面白くて楽しいのです。
特に印象に残っているのは、ポルトガル館とハンガリー館。
海で繁栄してきたポルトガルのモチーフは海。
パビリオンをまとったシルバーのロープが風に揺れるとキラキラした波のように輝いていました。
ハンガリーは森がモチーフ。ピラピラとした短冊のようなものはテント生地で作られたもの。茶系4色で構成されていて、木々の揺らぎを表現しているそうです。
各国が環境や歴史を外観で表現しているので、外観を見てなぜこのデザインになっているのか想像を巡らせて、列に並んでいる時に現地のスタッフさんに聞くと色々教えてくれるので、答え合わせができます。そんな待ち時間も楽しいです。
木漏れ日や花を連想させる照明(ハンガリー館)
岩崎(PRチーム)
ハンガリーの民謡を生で聴ける機会なんてそうそうないだろうと、事前に目星をつけていたハンガリー館に1時間半並んで入場しました。
民族音楽の生演奏ももちろん素晴らしかったのですが、記憶に残っているのは照明による演出。
演奏に合わせて木漏れ日や星空など自然の光を思い起こさせる光の演出が、民謡の良さをより引き立てているように感じました。その環境に浸っていたので写真はないのですが、歌唱と照明だけのあれこれ飾り立てていない演出の仕方がすごくよかったです。
照明による演出はこんなところにも。施設の中へ入場後、生演奏が行われるシアター前の待合室の天井にハンガリーに馴染みのあるスズランを表現した照明がありました。
小さなガラスシェードの弱くて優しい光を、レースのような素材でできた大きなシェードで束ねて、スズランの花の姿を表現。中には明かりが灯っていないものもあり、すりガラスでできたシェードの美しさ、繊細さが際立って見えました。
普段、家の照明は60Wくらいを選んでいるのですが、淡い光源の方が実は照明器具を一番美しく見せてくれるのではないかと感じました。
シンプルな内装の中でも、明かりの使い方ひとつで感情に訴え、記憶に残すことができるのだなと。照明の持つ力に気づかされた体験でした。
透明素材の使いどころ (ポルトガル館 / カタール館)
来生(PRチーム)
大屋根リングへのエスカレーター横、シルバーのロープが目印のポルトガル館。
展示ゾーンを見た後、最後のお土産ショップ手前で見つけたのが、この透明アコーディオンの仕切りでした。
奥はレストランになっていて、基本閉まっている場所。スタッフだけが開閉して出入りできる裏動線のようでした。
兄弟サイトである「東京R不動産」がはじまった2003年頃。グループ会社openAがリノベーションしたオフィスの入口はドアがなく、透明のビニールがのれんのようにかかっていただけだったんです。リノベオフィス=スケルトンでかっこいいけど、すごく寒い時代(笑)。
そんな思い出もあり、夢の万博に親近感ある仕切りがある!と吸い寄せられました。
最初はポリカーボネートだと思ったんですが、近づいてみると、アコーディオン状で折り畳みできる仕様に。こういう透明のアコーディオンの商品があるんですね。気になって思わず調べてみると、ウェーブロックアコーディオンと言うものらしいことが分かりました。
ラボの仕切りとかに使われることが多そうですが、光と人の姿をぼんやり通してくれるのでオフィスの仕切りに使っても良さそうだなと思いました。
透明の仕切りシリーズでもう1つ。カタール館で見かけた、砂丘の風景を表現した仕切りも印象に残っています。
筒状になったメスシリンダーのようなもの1本ずつにカタールの砂漠の砂が入っていて、それを横につなげて、立体的なグラデーションの砂丘を描いています。カタールの各砂漠で集めてきた5色の砂は、時間帯で変化する砂漠の様子を表現しているそうです。
砂の入った筒は水平に走るバーで上下を支えられ、お土産ショップとの間の光を通す間仕切りになっていました。
内装材というより、アート作品的な意味合いが強いかもしれませんが、映像中心の展示の中で、こういうリアルなものが個人的には響きました。
ちなみに、撮影NGだったので写真には収められていないのですが、メイン展示室を囲う深いブルーの巨大カーテンも要チェックです。
海を取り巻く生態系や石油のパイプライン、産業インフラなどが入り交じる様子が、刺繍とパッチワークで描かれ、寄り引きで見る楽しさがありました。展示パネルの背景となる部分ではありますが、注目してみてください。
ペットボトルが照明のブラケットに!?(西ゲートゾーンのトイレ)
森村(TBK、ツールボックス工事班)
パビリオンを色々回って疲れたーって時に休憩兼ねて向かったのは、西ゲートゾーンのトイレでした。
手を洗いながらこんな形のブラケットあるんだーとボーッと見ていたら、なんだか違和感が……。
よくよく見てみると、照明のブラケットがペットボトルでできていることに気づき、衝撃を受けました。
ペットボトルも塗装すると結構いい感じになるものなんですね。
時間がなかったのでしっかりは見れなかったのですが、寄って見るとブラケットがペットボトルの上部とぴったり。
ペットボトルの蓋の形状に合うように、このためにブラケットを特注で作ったのかなと思ったり……。これを実現させる為の努力がかっこいいなと感じました。
もしこの照明を自宅に取り入れられたとしたら、コカコーラやお〜いお茶など、家にあるペットボトルを用いて、その時の気分で色々な形状を楽しむこともできるなと気づいて更にわくわくが。ペットボトルってよくよくみるとみんな違う形してますし、気軽にアレンジを楽しめるのが、他にはないこの照明の良さだなと思いました。
色々パビリオンを見る中で面白いものも沢山ありましたが、なんだかんだこれが1番印象的で、好きでした。遊び心が溢れた良い出会いでしたね。
石がつくる壁をすり抜ける楽しさ(サウジアラビア王国)
石田(ディレクター)
石が貼られた入り組んだ建物群の隙間を、スルスルすり抜けるように進むワクワク感がたまらなかったサウジアラビア館。
サウジアラビア産の軽量石材として話題だった壁面も魅力的でしたが、白い石材の隙間を遮る黒いフェンスが1番印象に残っています。
墨汁に浮かぶ泡のような細く繊細な黒はガラスとはまた違った透明感のある造形。その向こうに見えるのはエアコンの室外機ですが、その景色さえ美しく感じました。
人の立ち入りを遮るためのフェンスですが、嫌な感じがまったくないすごさにも感動でした。
おまけ。toolbox商品が万博デビュー!
シグニチャーパビリオンエリア南側のトイレ8。
人間のスケール感を重視した従来の建築計画から離れ、新しい「かた」から設計をした、色んな太さや高さの筒が集まったトイレ。
個性ある異なるもの同士が、へだたりながらもひとつながりの群となる風景を表現しているそうです。
そんなトイレ個室にtoolboxの照明を発見しました。
室内に使用していただいたのは『工業系レセップ』のグレー。
toolboxと、この照明を生み出すルーツになったKASAMATSUの刻印が入った照明が、大阪万博で実際に使われているのを見つけて、とても感慨深い気持ちになりました。
みなさま、このエリアに立ち寄った際はぜひ覗いて見てみてください!
最後に。大阪中津にあるtoolboxのショールームにも是非
大阪万博会場の夢洲駅から40分ほどの場所にある大阪・中津。
大阪・梅田から一駅という大都会にありながら、昔ながらの空気が漂う街にtoolboxの大阪ショールームがあります。
古民家を改修したお店も多く、インテリアやリノベーションのヒントもあちらこちらに。大阪万博に行った次の日など、大阪にお越しになった際はtoolboxショールームと合わせて中津という街にぜひ遊びにきてみて欲しいです。
中津に魅力を感じたtoolboxスタッフが、おすすめしたいお店を紹介した記事とYouTubeも公開していますので、そちらもご覧ください!