大阪の京阪電車「枚方公園駅」から歩いて5分。歴史情緒あふれる「枚方宿歴史街道」に佇む「鍵屋別館」の3階に、green建築工房のオフィスはあります。

江戸時代に宿場町として栄えたこの街道沿いは、昔ながらの風情ある街並みが広がり、毎月第二日曜日には「五六市」という手づくり・こだわり市が開かれるなど、ぶらりと散歩するのにぴったりの場所。

green建築工房が入居するユニークなビル「鍵屋別館」

「鍵屋別館」は、江戸時代創業の料亭「鍵屋」の別館をリノベーションした商業ビル。格子窓やすりガラスなど、当時の面影を残すノスタルジックな空間に、雑貨店やカフェ、ベーカリーなど個性豊かな店が並び、かつての“おもてなしの心”を受け継ぎながら、まちと人をつなぐ交流の場として親しまれています。

こちらが、今回ご紹介するgreen建築工房のオフィス。

そんなユニークなビルの3階に拠点を構えるのがgreen建築工房。大阪・枚方を中心に活動をしているデザイン集団で、新築や住宅のリノベーションに加え、店舗の設計施工も手掛けています。

「自然と暮らそう」というコンセプトを掲げ、日々の暮らしの中で自然の移ろいや変化を楽しめる家づくりを目指している彼ら。その考えはオフィスにも息づいていて、たくさんのグリーンに溢れたオフィスからは、淀川の雄大な景色を眺められます。

自然の力を暮らしの中へ。心と身体がほどける住まい

「素材にしても間取りを考えるにしても、自然のもつ力を住空間にできる限り取り入れ、暮らしそのものが豊かになる家づくりを目指しています」そう話すのは、green建築工房の代表・松村さん。

(右)代表の松村さん(左)設計担当の田坂さん

例えば、窓から差し込む柔らかな光と、部屋いっぱいに吹き抜けるそよ風の心地よさ。無垢材の床からじんわりと伝わるやさしい温もり。時間とともに深みを増す木の香りや、手仕事の跡が残る左官の壁。

「自然の中に身を置くと癒されたり、安心感を感じますよね。それと同じように、家のあちこちで自然を感じる瞬間があれば、“心地よさ”や“癒し”が生まれ、心も体も健やかに過ごせると思うんです」

オフはもっぱらアウトドアという松村さん。特に新緑の時期の雨の日に山を歩いたり、テントの中で雨の音を聞いてる時間が一番好きだそう。

そんな松村さんは、大のアウトドア好き。トレイルランニング、キャンプ、テニス、釣り、スノーボード、素潜り、サーフィン、スラックライン、スケボー、マウンテンバイクなど、驚くほどアクティブな趣味を持ち、プライベートはもっぱら自然の中で過ごしていているのだそう。「自然の中で過ごす時間が最高の贅沢」と語る松村さんの暮らしぶりからも、自然との深いつながりが感じられます。

green建築工房が手掛ける、自然とともに暮らす住まい

そんなgreen建築工房が手掛ける、事例の一部をご紹介します。

木のやさしい風合いが漂う住まい。

こちらは、「将来子供たちに残す家は、地球環境に負担のないものにしたい」そんな思いを持つお客様のために手がけた戸建てリノベーションの事例です。

この住まいでは、天井や壁にビニールクロスを使わず、全面板張りで仕上げることで、自然素材の温もりを感じられる空間を実現。また、水回りにはクッションフロアの代わりにタイルを使用するなど、素材選びにもこだわり、環境にやさしいものをセレクトしています。

照明の素材も和紙やガラスなど、自然素材のものがセレクトされています

アウトドア好きなご家族が暮らしていることが伝わってくる土間の様子。

玄関とLDKをつなぐ広々とした土間空間は、子供の遊び場としても、DIYや趣味の作業スペースとしても活用でき、その使い方は無限大。趣味を育むことができる、自由な空間です。

庭先での暮らしが自然に生活の一部として溶け込んでいるのを感じさせる縁側空間。

土間とLDKは、縁側を介してもゆるやかに繋げて。季節の移ろいを感じながら、腰を下ろして庭の景色を楽しんだり、鉢植えの手入れをしたり。暮らしの中で自然を身近に感じることができる空間づくりがされています。

外とのつながりを大切に計画された、開放的な雰囲気漂う住まい。

こちらは、吹き抜けからたっぷりと陽の光がこぼれ落ちる新築戸建ての事例です。

家の中心に設けられた中庭には、四季折々の実をつける植物が植えられ、季節ごとの変化を楽しめるようにしています。土の温もりを感じさせる塗り壁が、家族の暮らしをやさしく包み込み、心やすらぐ空間を創り出しています。

中庭が視界を広げ、明るく心地よいリビングに。

窓際に設けられたヌックは、いつの間にか子供達のお気に入りの場所に。

中庭やヌックなど、外の気配を感じながら過ごすことができる工夫が至るところに施された事例です。

「居心地がいいからか、気づいたら3歳の娘が1人ヌックで絵本を読んでいて、驚きました」と話す、この家の施主でもある設計の田坂さん。自然とのつながりが、日々の暮らしに穏やかな時間をもたらしている様子が伝わってきます。

足を踏み入れた瞬間、ふっと肩の力が抜け、どこかほっとする――。green建築工房の手掛ける家は、そんな安心感が息づいています。

未来へつなぐ、持続可能な家づくり

仲間やボランティアの方と一緒に淀川に自生する「ヨシ」刈りへ。丁寧に仕分けて約100本程度の束にしていきます。

「自然と暮らす」をコンセプトに活動しているgreen建築工房は、環境への負担を減らした「持続可能な家づくり」も大切にしています。使用する建材によっては、将来のこどもたちや地球環境に負担をかけることもある。だからこそ、土や左官、テラゾーなど、その土地ならではの素材を活かしながら、やがて土へと還る自然素材を積極的に取り入れています。

上の写真は、事務所を構える「枚方」の地域資源を活かした仕上げ材の提案ができればという思いから、“ヨシ”の保全活動に参加した際のもの。ヨシを刈ることで新たな成長を促し、地域の生態系に良い影響を与えるための活動です。

左: ヨシの穂先部分を珪藻土に混ぜて塗っている様子。右: モルタルにヨシを混ぜ、表面に模様が出るデスクを製作している様子。

“ヨシ”は、抗菌作用、消臭効果、水質浄化作用などがあるとされており、集めたヨシを珪藻土に混ぜたり、モルタルの骨材として活用。枚方の地域資源由来の素材を仕上げ材に取り入れることで、自然素材の新たな可能性を広げています。

つながりで広がる「自然×暮らしマルシェ」

green建築工房が年に一度主催するマルシェ。ブースデザインから設置に至るまで、すべて自社で手掛けています。

もうひとつ、green建築工房が家づくりと同じように大切にしているのが、「暮らし」について共有しあえる「場」をつくること。その代表的な取り組みが、毎年枚方T-SITEで開催している「自然×暮らしマルシェ」です。

このマルシェは、サスティナブルなライフスタイルをテーマにしたイベントで、温かな交流を通し、訪れる人たちが楽しみながら「豊かな暮らし」について考えるきっかけになれば——そんな想いが込められています。

オーガニックのお菓子やグラノーラ、ハンドメイド雑貨、季節のお花、ペットグッズなど、環境や身体にやさしいこだわりの商品がずらりと並ぶ会場。出店者の多くは、green建築工房が手がけたお店や、共通の知人を介してご縁が生まれた方々。そうしたつながりが広がり、イベントは年々賑やかになっていってるのだそう。

「住まい」の話よりも「暮らし」の話を。雑談の中で、その人の大切なものがみえてくる

マルシェを始めたのは、「greenを知ってもらうきっかけになれば」という思いからだったそうですが、実際のところ、マルシェから直接家づくりのお客さまにつながるケースはほとんどないとのこと。ではなぜ、6年間もマルシェを続けているのでしょうか。

「どんな家をつくりたいかよりも、どんな暮らしをしたいか。それを共有しあえる場があることが大切だと思っていて。このマルシェでは住まいの話よりも、暮らしについての会話が自然と生まれる。それがすごくいいなと思って」と代表の松村さんは話します。

「打ち合わせでも、お客さまが本当に大切にしていることは、雑談の延長のような自然な会話の中で、ぽろりとでてくることが多いんです。だから実際に家づくりを提案するときも、住まいの話よりも暮らしの話に重きをおいて会話を進めています。その人の『好き』を知ることを大切にしてるんです」と設計担当の田坂さん。

家づくりに関してはよく分からなくても、自分が暮らしの中で大切にしていることについてであれば話しやすいもの。松村さんは、「自分を知ってもらうことこそ、家づくりにおいて一番大事なこと」と言います。

いつもポケットに理念を。目の前にいる人を自分事のように大切にする

会話を大事に接客を心がけているgreen建築工房のスタッフ。たしかに、みんな親しみやすく話しやすい。いい空気感だなと思い、率直にそのことを伝えると、出てきたのは「CRED」という名刺サイズに折りたためる行動指針表。

この行動指針表は、スタッフ一人ひとりが主体的に考え、行動できるようにとつくられたもので、「今、目の前にいる人を幸せにすること」をミッションとして掲げています。

「良いものをつくるには、良い思考が必要。だけど、話すだけでは伝わらないし習慣化されていかない。だから、ちゃんと言葉にしようと、スタッフの人数が10名を超えたくらいに思い立ったんです」と松村さん。

この『相手を自分ごとのように大切にする』という気持ちがgreen建築工房の根底にあり、その気持ちがカタチになって現れたのが、以下の MAP製作に至ったエピソードです。

green建築工房のオフィス周辺に点在する、設計施工を手掛けた店舗を紹介するMAP。

これまで、green建築工房が設計施工を手掛けた店舗の事例を紹介する際、お客さまから「このお店はどこにあるの?」と尋ねられることがよくあったそう。けれど、口頭で店舗の場所を説明するのは意外と難しく、もどかしさを感じることもしばしば。

そこで、お客さまの「行ってみたい」という気持ちにどうやって応えるかを考えた結果、社内から自然と生まれたのが「SHOP MAPを作ろう」というアイデアでした。

プロジェクトを通じてつながった店舗とのご縁が、さらに新たなつながりを生み出していく。そんな広がりを感じさせる、心温まるエピソードです。

つながりのある生産者さんやお店の方と共同してワークショップを開催することも。

思いやりの精神と暮らしの対話を大切にしながら、住まい手が日々の暮らしで大切にしていることを雑談の中から引き出し、そのうえで、自然素材を活かした温もりのある空間を提案してくれるgreen建築工房。

彼らとの家づくりは、単に住まいを建てることにとどまらず、家族とともに「暮らし」を育む大切な時間になるはず。自然の中で過ごすことが好きな方や、自然素材に囲まれた暮らしに憧れる方は、スタッフとの何気ない会話を通じて、自分にとって本当に心地よい暮らしのカタチが見えてくるかもしれません。

今回ご紹介したプロはこちら

会社名    株式会社green建築工房
所在地    大阪府枚方市堤町10-24 枚方鍵屋別館3F(MAP
創業     2012年
社員数    18名(2025年4月9日時点)
サービス概要    リノベーション/新築・リフォーム/店舗改装/物件探し/ライフスタイル提案型イベント事業
対応エリア  大阪/京都/奈良/滋賀 など

※green建築工房が手がけた事例は下記の「プロ情報を詳しく見る」から、ご覧いただけます。

株式会社green建築工房

無垢や木の質感を感じる家づくりを得意とし、大阪・枚方を中心にリノベーション・注文住宅・店舗デザインを提案しているデザイン集団です。

pro list(プロリスト)

toolboxでは、商品を使ってくれたり、imageboxに空間づくりのアイデアを提供してくれる全国の家づくりのプロを「pro list(プロリスト)」で紹介しています。

第2回「リノベ“ご縁”日」開催! 2025年5月10日(土)大阪・中津で家づくりのヒントとプロに出会う
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「家づくりのパートナーって、どう見つけるの?」自分らしい家づくりを実現するには、価値観の合うプロと出会うことが大切。そこで私たちが企画したのが、お買い物を楽しみながら、相性のよいプロと出会えるイベント。第2弾となる今年は、関西のリノベーション会社8社と一緒に、内容もスケールアップして開催します。