手を動かしたのもデザインを考えたのも二瓶さん。でも、話を聞いてみると、二瓶さんたちを大きくサポートしてくれた、工務店の存在があったようです。

二瓶さんたちが自分たちで手を動かすことにした理由。

そして “何もしない” 家づくりのパートナーの存在。

これらについて深掘りしていきたいと思います。

二瓶さん宅は、ご夫婦と双子の娘さん4人家族。

こだわりが強すぎて お願いができなかった

普通の空間づくりなら、設計者や工務店がデザインを提案してくれたり、素材をコーディネートして、それぞれの職人さんの手配から、現場の管理をしてくれたりするもの。

それらをやってもらうことなく、各所のデザインも、素材選びと購入、施工まで、自分たちで行った二瓶さん。

自分で手を動かすことにした理由について尋ねると、教えてくれたのが「こだわり」という理由でした。

「例えば、フローリングを貼るとなったら、板の微妙に変わる色合いだったり、節の出方のバランスまで細かく調整したいんです。実際この床はめちゃくちゃ時間をかけて、どこにどう貼るかを考えました。」

幅の違うフローリングをミックスで貼り付け。塗装済みのフローリングを購入しましたが、ホワイトカラーのオイルを塗って、乾く前に拭き取り、ヴィンテージ感を増す塗装仕上げにも挑戦したそうです。

自分たちではできない水道・電気、建具のはめこみなどは、工務店に職人さんと大工さんを紹介してもらい、施工をお願いしたそう。その際も、施工の仕方や仕上げ方を二瓶さんが細かく指定。

「電気屋さんに「配管は出てもいいからこうつけて」と言っても隠されてしまったり(笑)。雑誌を見せて「こんな感じで」と説明したり、自分のこだわりどころを伝えるのに苦労しました。」

建具のはめ込みをお願いするときには、はめ込む位置は「下から何センチ」と図を書いて、細かくお願いしたそうです。

家具ぴったりに合わさった室内窓。

もともと物づくりが好きで、学生のころから美術が得意だったという二瓶さん。自分で手を動かす方が細かくこだわれるし、もちろん施工費がかからないので節約にもなる。手間に思うよりも楽しいという感覚の方が大きかったので、自分で手を動かすというのは自然な選択だったようです。

「とりあえず」で仕上げることはしない

住み始めて3年。でも、まだリノベーション途中だという二瓶さん宅。

少しずつ手を加えていて、今は子供部屋のように使われているお部屋も、住み始めてから「パーケットフローリング」を貼ったそうです。

「次は玄関をやりたいんですが、どうするかが決まらなくて手がつけられないんです。こだわりの部分は捨てられないので、中途半端に始めるのであれば途中の部分はそのままにして、いつかやろう。という風に思ってます。現状のままで住むのに問題はないですし。」

写真の左側を見ると、途中の様子が伺えます。

取材でお邪魔したのは1Fでしたが、2Fはまるっとこれからなんだそうです。

階段横の壁の様子。モルタル風に塗ろうかとアイデアを練ってる途中。

やればなんとかなる

フローリングからタイル貼り、漆喰塗装。普通なら、やり方がわからなくて、難しそうと感じてしまいそうな作業ですが、二瓶さんにとっては「知識は調べればいくらでも出てくる」ので問題ではなかったんだとか。

とはいえ、実際トイレ床の「ハニカムタイル」を貼る時にはボンドをつけすぎて一度剥がすことになったり、洗面室の壁の色は「イメージと違った」と塗り直したり、スムーズに行くことばかりではなかったそう。

でも、失敗ありきの家づくりだと考えていて「何かあってもやり直せばいい」というスタンスで “自分が気に入る仕上がり” を追求することを大事にしたそうです。

「家づくりは自己満足ですね」ときっぱり言いきる二瓶さんが、かっこよかったです。

なんでも「いいですね!」と言ってくれる安心感

手を動かしたのもデザインを考えたのも、素材を選んで手配したのも二瓶さん。では、工務店の人はいったい何をしてくれたのかなと思い、聞いてみました。

「実際何してくれたかな(笑)?そもそも立ち位置が微妙ではあって、リノベで入ってもらったというよりも“ちょっといてくれた”って感じでした。電気、水回り工事の職人さんや大工さんの紹介はしてもらったのと…あ、あとは、タイルを色混ぜてこんな風に貼りたい、とか、床をミックスで貼りたい、とか、どこのどんな相談しても必ず「いいですね!」って言ってくれました。」

人と違うことをやりたくなるという二瓶さん。失敗したらやり直せばいいと思ってはいたとしても、不安がまったくないわけではありません。そんなときに専門的な知識を持ちつつ、住む人の意見を尊重してくれる工務店さんの存在は大きかったようです。

「自分で手を動かす上で重要な存在でした。」

そもそも工務店さんとは、二瓶さんの友人の友人という近い関係。もともとの関係性もあると思いますが、二瓶さんが自分で決めたいこと、やりたいこと、逆に相談したいこと、協力をお願いしたいこと。その棲み分けが上手くいっているので、心地よく家づくりを進めることができたんだろうなと思いました。

住まい手のやりたいことを、そばで見守ってくれる。そんな、家づくりのパートナーの在り方も、ありえるんだなと感じました。

手に入れたのは、心地良さと子供の笑顔

「リビングから見える、庭。自分たちの目線に子供の姿がうつるこの風景が一番好きです。」

子供が生まれたことをきっかけに始めた家づくり。

自分たちの好きなものに囲まれているので心地よく暮らせているのはもちろん、お子さんと一緒になって家づくりをしているのでお子さんも、「ここはママが塗った。ここはパパが塗った!」と家に対して自然と愛着が深まるそう。
他の家にお邪魔したときも「ここは誰が塗ったの?」と聞いてくるんだとか。

「今は子供部屋として使ってる部屋も何年かたったら変わっていくかもしれない。家はこうあるべきという考えもないので、必要なときに必要な姿にしていきたい。」

家族が楽しむために “家づくり” が生活の一部にあって、それがとても自然なことのように行なわれている。そんな姿がとても印象的なお家でした。

(梅川)

リノベーションの様子は
二瓶さんのInstagramでも見ることができます。