毎回テーマに沿ったゲストをお呼びし、toolboxスタッフと対談形式でテーマを深堀するYouTube番組「toolbox channel」。

第5回のゲストは、建築設計事務所ブルースタジオの石井健(いしいたけし)さん。リノベーション創世記をつくりあげ、20年強、さまざまな家づくりを通して私たちの視野を広げてくれたブルースタジオ。「設計者のコミュニケーションで施主の本質的な思いを引き出すには」をテーマに語っていただきました。

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動画を見られない方のために、今回の内容を前編、後編に分けて振り返った、後編をお届けします。

>>>前編コラムを見る

ゲスト紹介

ゲスト:ブルースタジオ 執行役員 / クリエイティブディレクター 石井 健(いしいたけし)

1969年生まれ。建築・内装設計、不動産商品開発を中心業務としつつ、関連するマーケティング、ビジネスモデル開発、ITプラットフォームの設計などにも従事。株式会社ブルースタジオで日本のリノベーション・シーンの創成期から手がけてきた。
「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)を始めグッドデザイン賞6度受賞。「FURNITURE半身浴」を始めリノベーションオブザイヤー7度受賞。著書『LIFE in TOKYO』(エクスナレッジ)。

対談相手:toolbox クリエイティブディレクター 石田 勇介(いしだゆうすけ)

toolboxの定額制パッケージリノベーションASSYやSETUPのデザインなどを手がける。

社内のあだ名はイッシー。石井さんと石田で似ているので以下イッシーでいきます。

司会:toolbox PRチーム 来生ゆき

動画の目次

<コラム前編>
00:00 | オープニング
03:24 | リノベーション黎明期 ブルースタジオのはじまり
09:55  |  自由な住まい方の広がりと妄想をカタチにするアプローチ
<コラム後編>
25:26  |  妄想の着地点
32:34  |  リノベした家に長く住んでから2回目の改装へ 部分リノベ実例
39:34  |  ローコストではなくスモールバジェットという考え方
48:47  |  Q & A
56:51  |  おわりに

「考えようによって、空間が倍になるんです」

妄想の着地点

司会

お客さんが(自分の思いを)うまく言語化できなかったけれど、深層の思い引き出して実現できたケース……、例えば最初は「赤い壁が欲しいんです」というお題だったのが、結果として全然違うカタチで思いが叶ったというような事例とかってありましたか?

石井さん

それは不動産探しのレベルではありますね。

「どうしてもルーフバルコニーじゃないと嫌だ」って言う人がいて。「じゃあ、なんでルーフバルコニーなんですか?」と話をしていったら、結果的にインナーテラスでよかったという。

石井さん

間取りなんかの方が、そういうケースはありますよね。

「あれもやりたい、これもやりたい。でも(全部の要望は)入らない」っていう時に。

石井さん

何かを諦めるっていう選択肢もあるんだけど……(例えば)空間にやりたいこと全ては入らないけど、時間で区切ったらいんじゃない?昼と夜で使い分けするとか。

そうすると、考えようによっては、空間が倍になるんですよね。

それって、お金のこととかも関わってきて。「それは、今やらなきゃいけないことなんだっけ?」って(優先順位をつけて整理して考えることも必要です。)

イッシー

(施主側の)妄想がありながらも、それを受け入れる部分と、(その妄想を)壊しながら別の手法で解決していく部分と、(整理する)手法ってあるんですか?

石井さん

手法っていうか(笑)……自然と。

やりたいことはいっぱいあるけれど、なかなか全部は叶わない。お金も、時間も無制限ではない。そこで整理をしていく。

石井さん

本当に「何が大事なんだっけ?」って考えていくと、3つあると思っていたことが実は、1個だけしかなかったりとか。

自分の好きを表現するっていうことも関係していて。自分である程度、答えを出してからオーダーしようとすると、3つの要望になっちゃうかもしれないんですよ。

「シューズインクローゼットと、パントリーと、○○が必要なんです」みたいな。

でも、「それってどうしてなのか」と紐解いた時に、もしかしたら、出かける時と帰ってきた時の時間を短縮したいってことが本当の課題かもしれない。そしたら、「それ2つともは要りませんよ。シューズインクローゼットとパントリー、繋げちゃえばいいじゃん。」というような、違ったソリューションがあるかもしれない。

さっき言った、時間軸で分けるという考え方もあるし、お金の使い方も例えば「家具造作にするの?既製品にするの?」って話だったり、求める目的によって、それにどうお金をかけるの?(が違ってくる。)

石井さん

「フルオーダーだったら造作ですよね!」ってそれが目的になっちゃってる人もいますけどそうじゃなくて、それは何を目的にしているの?同じ値段だったら、どっちがいいものつくれるの?

自分の買った不動産がどこまで有効利用できるの?とか、そこまで引いて考えられると変わってくるんじゃないかな。

「いま使わないけど将来使うかもしれない部屋をつくると、必ずそこは倉庫になる」

イッシー

いまの話の流れで、住みたい家、暮らしたい家が、予算とか時間の関係だったりとかで一気に(実現)できないっていうこともありますよね?

「全部一気にやらなくて良い」って答えもあったりするんですか?

石井さん

それはあると思いますね。

例えば、リアルな話で言うと、不動産購入した時は、工事費も含めて住宅ローンが組めるんで、なるべくその時に借金した方がいい。みたいなのは、一つあります。

工事自体も、2回に分けるより1回でやった方が安く済む。という解決もあります。ただ、それで終わりってことでなく、「(将来的に)暮らし方がどうなるか分からない」ということもあるし、「ちょっと、いまはお金が足りない」っていう場合もあるかもしれない。

いまやるべきことと、将来やるべきことを分けていくっていうことはありますし。

例えば、「全面リノベーションします」って人でも、これから子供がどうなるのか、自分のキャリアがどうなっていくか分からない時に、時間軸で考えて、いまはこういう風に使おう。将来的には、こういう風になるかもしれないから、その時になるべく少ないコストで実現出来るようにしておこうとか。

石井さん

あとは、空間効率(にも関わってくる)。

いま使わないけど将来使うかもしれない部屋とかつくると、必ずそこは倉庫になるわけですよね(笑)

そうすると必ず、要らないモノを買うことになるんですよ。

イッシー

そうですよね(笑)

石井さん

注文住宅つくったりリノベーションした人たちって、「そのあと暮らしがどう変わりましたか?」ってインタビューとかすると、「家にいる時間が長くなった」、「夫が掃除してくれるようになった」とか、色々な暮らしの変化があるんですけど、

石井さん

「モノを必要以上に買わなくなった」ってすごく多いんですよね。

今日前半で話した、「この家具買ったんだけど飾るところがない」とか、「買いたいけれどうちにこの家具置くところがない」ってところからスタートして、(家づくりをして)自分の理想の空間をつくると、いままではモノが欲しいから買ってたけど、家づくりしてからは「欲しい!」って思ったあとに、じゃあどこに置こうか、はたして家に合うんだろうか、これ持って帰ったら、あそこのモノどうしようとか考えるようになって

その結果「不要なモノを買わなくなった、(いまある)モノを大事にするようになった」っていうことは、よく聞きます。

だから、いまやるべきこと、あとでやるべきことは、自然と考えていくべき。

ご新規も2度目のアップデートも。ブルースタジオでも部分リノベの相談が実は多い

リノベした家に長く住んでから2回目の改装へ 部分リノベ実例

司会

会社を立ち上げて20年経つ中で、当初のお客さんが第2ステージとしてまた手を加えたいという依頼がきたり、アップデートしていくことってあるんですか?

石井さん

そういう相談は、月に1件くらいは来ますね。過去のアップデートと住み替えの相談ですね。

司会

ちなみに……「ブルースタジオさんに、200〜300万の部分リノベなんて頼めるの?」って、思ってる人も多いと思うんですが。どれくらいから受けていただけるんですか?

石井さん

え!でも、100万円とかやってますね。

司会

え!本当ですか?それは、設計料が100万とかじゃないですよね?(笑)予算が100万円ですよ!

石井さん

でも、予算100万円台とかもやってますよ。

司会

部分リノベの事例ってあるんですか?

石井さん

結構ありますよ。

司会

部分リノベに限らず、ステキな事例がいっぱいありそうだから見たいです。ぜひ!

リノベした家に長く住んでから2回目の改装へ 部分リノベ実例 その1

石井さん

最初にこれ、15年ぐらい前につくった家ですね。今でこそ「小上がり」とか「土間」とか、結構普通になってますけど、(それを取り入れた事例としては)多分、相当最初の頃じゃないかな。

畳の小上がり事例も、たぶんこれがはじめてじゃないかな。

この当時って、共働きで子育てをしていて、時間がない人たちが多くて。その中で、自分たちのリズムを作っていくために(こういうプランに)。畳があるって、ちょっと昔の生活ですよね。江戸時代の生活。

先ほど出た時間軸の話でいうと、畳の上で朝起きたら寝室だけど、片付けるとダイニングっていう。で、時に勉強部屋になってみたいなことをやっていこうと。それでリズムを作って同時にスペース活用していくところが、かなりオリジナリティのある事例です。

石井さん

当時から、玄関あけると、広い土間があって。(いまだと)結構普通ですけど。こういう大きな土間部分をつくったのは、これが初めてだったかな。

自転車を置いて、ワークスペースにして。外の空間、家の中に外部空間。当初からここはね、将来個室にしようかと(話があって)。

で、かなりの時間が経って。この間、去年かな?「ようやく娘に部屋が必要になって」ということで「家」を作りました。

石井さん

で、ここはですね、最初お客さんから壁を作ってくれればいいと。けどせっかくね、ここは元々、箱を割るというか、空中に平屋があって、東屋を作ったり、前庭があったりとかそういうコンセプトを作っていたので。

なんか、やっぱり前庭の空き地に「不動産の新築戸建てをつくる」みたいな、そんな形にしようということで、

イッシー

へー物語的な。

石井さん

そうですね。それによってですね、廊下が狭いので、こういうちょっと傾斜した屋根をつくって、廊下に開放感を出したり。逆に内側から見ると、篭り部屋というか、ちょっとした屋根裏部屋みたいな。

司会

ポストがありますね。

石井さん

そう、ポストと表札。

イッシー

最初、外の写真かなと思いました。あれ、戸建て事例だったっけ?って。

前の長屋に作ったときのストーリーから、つながってる感じが(いいですね)

石井さん

そうですね。2回目の人たちも、必ず最初のコンセプトを崩さないようにしようよと。

コストのこととか、いろんな制約があってね、どこまでできるのかっていうのはケースバイケースですけど。

石井さん

やっぱり、ちっちゃいからといって、コンセプトメイキングしないとかいうことではなくて。エリアとか工事内容とか予算の大小に関わらず、そこは毎回大切にしていきたいな。

それじゃないと、つくってる方もね、楽しくないし。

不動産の値上がりが進む中、新規依頼の3割くらいは“部分リノベニーズ”

司会

今は、どんどん不動産も高くなってるので、何とかその全体をやろうと思ったら予算が本当に合わなすぎるというか……。

石井さん

そうですね。予算が合わなくなくなるっていうのもあるし、やっぱり物件もちょっとずつ築年数が浅くなってきてるので、性能向上みたいなところは、必ずしもやらなきゃいけないっていうことでもなかったり。

そういった(築古すぎて性能向上が必須な)ケースも、場合によっては少なくなっているんじゃないかなと思いますね。なので、私達も今ね、新規購入の方でも、部分でやる方、部分的に何かを残してやる方が相当増えてますね。

(依頼を受けるお客さんの)半分とは言えないけど3割ぐらいはそうじゃないかな。

司会

それって、元々再販業者さんが作って、割と綺麗に仕上げられた状態からのスタートみたいなことなんですか?

石井さん

そういうことばかりでもないですね。下地はまだ使えるからとか、それは適材適所で。やっぱり限界がありますけどね。

あとは、リフォーム済みって言っても、必ずしもそこがスケルトンからリフォームしてるとは限らないんで。

そもそもリフォーム済みといっても、表層しか工事をやってなかったら、もうちょっとこうした方がいいっていうケースもあるし。

リノベした家に長く住んでから2回目の改装へ 部分リノベ実例 その2

司会

部分リノベの事例って、他にもあったりしますか?

石井さん

先ほどの事例は(最初のリノベーション時の)想定通り(後から部分リノベーションをしたケース)で、もう一つは「想定外」という事例です。

この方も15年ぐらい前、(先ほどの事例と)同じ頃ですね。

石井さん

最初こんな感じで。比較的、片寄りの間取りで。私はよくやっていますけど。最近新築でもね、なんか廊下を無くすみたいな間取りが増えてますけど。その間取りを取り入れた、比較的初期(の物件)ですね。

当初、2人暮らしで。この時も、和室をつくったりとか。(和室の上に抜けのある)中間領域をつくったりしてました。

オレンジの丸い土間が印象的。玄関側のカーブした部屋。将来子供部屋にしようと決めた、夫婦のアトリエ兼資料室だった。(&Wのリノベーション・スタイル 事例231 予定は変更しても目的は達成! 住みながら必要な部分だけリノベーションより

石井さん

これは玄関ですね。ここにオレンジ色の丸い土間があって、将来子供部屋にしようって。当面は夫婦2人のアトリエ兼資料室としてつくっていて。

ちょっと円形にしたり階段みたいになったのは、(将来)子供部屋にした時に、それが楽しくなるよ。ということで計画していました。

この方々もね、(子供が大きくなったタイミングで2度目の相談がきて)住み替えも含めて検討したんだけど、最終的にここに住み続ける方がいいねと。

「じゃあ、このスペースで子供部屋作りましょうか」って言ったときに、「いやここね、実は手放したくないんだよね」って、お父さんたちが。「ちょっとね、手離したくないんだよね」って言って(笑)。

2回目のリノベーション前の間取り。右側の丸い壁が玄関すぐの夫婦のアトリエ。(&Wのリノベーション・スタイル 事例231 予定は変更しても目的は達成! 住みながら必要な部分だけリノベーションより

石井さん

それで、当初の想定してなかったリビング側のスペースを子供部屋に。(当初は)玄関側の丸い壁のスペースを子供部屋にしようとしたんですけども。

石井さん

いくつか案を出しながら、最初に和室と寝室があったところを3分割して、最終的に黄色いドアの中を子供の寝室に。元の和室の茶室だったところは、畳の延長にオレンジクッションのちょっとしたソファをみたいなのを作って、昼はソファーとして使いながら夜はここに布団を敷く。畳のスペースの上には布団の収納を作りました。

石井さん

畳の横の子供スペースは部屋にすると無窓居室になってしまうので、ブースみたいな形にして、二つに分けながら立体的に使ってね。

今まだお子さん小さいので、上でも遊べたりするといいよねと。

窓際は子供が小さいうちは夫婦のコンパクトなワークスペース兼仮眠室に。(&Wのリノベーション・スタイル 事例231 予定は変更しても目的は達成! 住みながら必要な部分だけリノベーションより

石井さん

一番奥はですね、ちょっと仮眠室っぽいベッド+ワークスペース。

今はまだ、下の子が小さいので、夫婦2人の、仮眠室兼・仮のワークスペースで。隣は、あんまりスペースがないので、片付けがきちんとできるかとか、そういうことを考慮しながら。

上から見ると、非常にコンパクトなんですけども、こういう2畳とか3畳とか、こういったスペースでもきちんと(有効に使えています)。

建築やってる人だったらわかると思うんですけど、きちんと設計すると、狭いには少し狭いんですけど、別にそれが窮屈とかね、使えないっていうことでは全くないし。

あとは、特に子供の場合はね、成長にしたがって、また空間を考え直さないといけないけれど、やっぱり体が小さいっていうのと、親たちの気配が感じられる空間にいるのが悪くない間ってのは、こういう方法ってのは、すごく有効なんじゃないですかね。

 

司会

こういう小さいサイズ感で、特に空間を立体的を利用するって、なかなか自分で平面図で考えてるだけじゃ出てこない。

既存の価値観で、「やっぱり最低、小さくても5畳ぐらいはないと空間ってそもそも成り立たないんじゃないの?」とか、(自分が過去に)経験してないことを想像はできないので、そういうのをプロに昇華してもらえるっていうのはいいですよね。

石井さん

そうですね。やっぱりこういう設計ができる人じゃないと立体的な空間は、分からない。ただ、こういうことが出来るっていうことを知るっていうことですよね。

スモールバジェットは発想の転換で乗り切る!「新館、旧館」というキラーワード

石井さん

比較的、こういう子供部屋って、私達も(リノベーションが)2回目・3回目のお客さんが多いんですけど。中には最近こういう事例を見て、「引っ越さなきゃ」と思ってたのに、今の家を改装することで解決したりだとか。

あと、いまはなんかコロナ禍っていうのが……。

元々コロナの前からね、働き方改革みたいなものが進んでいたので、逆にそもそも僕たちでリノベーションしたお客さんって、コロナ禍になっても、ほとんどの人たちが困ってなかったというか。

むしろ、家で仕事できるようになって、とても毎日が快適だっていう人たちが圧倒的に多かった。

それと、今は不動産価格が上がっている、建設コストも上がっている。まぁ、不動産価格はもう分からないですね。何かあったときに、もしかしたら一時的に停滞するとか、本当に経済破綻が起きたら下がるかもしれませんけど。

建設コストは、まずもう下がることはないですよね。

その中でローコストを求めるという方法もあります。DIYなんかも一つの方法だし。多分、いろんな会社さんで、建設業の仕組みを変えてくるところが出てくると思います。

石井さん

もう一つは、ローコストじゃなくてスモールバジェット。

決して別にローコストかハイコストかって、ことじゃなくて。スモールバジェットで何ができるんだろう?ってことを考えてくのが一つだと思うんですよね。

だから、「自分の家を買いました。リノベーションしたいです」って言ったときに、「全部をちゃんと、同じスタイリングで統一したい」みたいな考え方あるかもしれないけど、もしかしたらそれも違った発想があるかもしれない。

石井さん

半分に分けてしまって、「向こうは旧館。こっちは新館です!」って(笑)

イッシー・司会

(大笑)

家の中で!

石井さん

うん、そういう考え方もあると思うんですよ。

イッシー

その言葉になった瞬間変わりますよね。

司会

ね、(予算がなくて)やれてないんじゃなくて、楽しいというか。わざとそうしてるんですって、友達にも楽しく言える!みたいな(笑)

石井さん

それによって大事なのは、やっぱり自分の暮らしがそこで変わるか変わらないかだと思います。

で、かっこいいとかっていうのは、やっぱ次の段階で。どうやったら、そこで気持ちよくなれるのかですよね。

石井さん

だから完璧を求める楽しみもあるけども、それは絶対じゃないと思うので。

その中で、例えば「プロとやること、自分でやること」とか、「今やること、将来やること」……そういうことを使い分けをしていく。

多分ね、(さっきの事例のように)例えば立体化をするって、自分じゃ想像できないクリエイティビティをどうやって引き出してもらえるのか。

プロと一緒にやるときの一番の利点は、俯瞰していくみたいなとこですね。

何にどれだけのお金がかかってと、1個1個、ものすごく厳密にやってったら、これそれこそ自分で設計するしかなくなっちゃうんですよ。

イッシー

うんうん、確かに。

石井さん

なので、時間の配分とかコストみたいなことを一緒にやっていく、プロの力をうまく活用することによって、さっき言ったような完璧じゃなくてもいいとか、ここはちゃんとやっておこう。今やっとかないと後でやると値段が3倍かかる、とか、そんな整理をものすごい短期間でやるんです。

新たに家を買う人たちにとって、今の日本の不動産流通って、非常にね、良くないところが沢山あって。

1つは、中古の場合って「買います」と手をあげたら、来週契約しなきゃいけない。

スピード感がすごいですよね。しかも情報もあまり整理されていないので。場合によっては図面がなかったとか、あと管理規約はあるけど、もし「こういうことしていいですかって?」って質問しても、「いや、それは所有権移転してないから答えられません」とか。いろいろ不便ですよね。

限られた時間の中で、竣工図を入手して、現調(現地調査の略)をして、何が出来るか出来ないか。判断が難しい中では、やっぱりプロの人と、1週間とかでちゃんと見極めていくことも大事なんで。

そういうところでね、やっぱり早い段階でのパートナーシップを組んでおくといいってことですよね。

質問コーナー 「お客さん希望と設計の自分の選美眼、デザインのバランスをどうとっている?」

Q.お客さんの希望に対して、自分の千美眼というかデザインのバランスで見たときに、そのままやるとちょっとおかしくなっちゃうな……という時に、どうやってバランスをとっているんですか?

某設計施工をやってる方から

石井さん

いやそれはもう正直に、「それ、かっこ悪いですよ」って言えばいいんじゃないですか?

だけどやっぱり相手を否定してはダメで、「何したいの?」って聞いて、「うん。だったらこの方がいいんじゃないか」とか。

あとはやっぱり、それが間違ってたら、なぜ間違ってるかっていうのは、説明してあげないと駄目ですよね。

例えば、「これはディテールがこうなってるから格好悪くて。あなたが欲しいと思うのは、こうなってるでしょう」って説明してあげるということだったりとか。

ただ、盲目的に好きなときには、「これはどうかと思うけど、もうやりたいんだったらどうぞ!」っていうことを、いかにわだかまりなく話ができるか、黙ってたら、お互い気分が良くないですよね。

逆もあるかもしれません。お客さんが「このデザイナー、ちょっとどうかなあ?でも言いにくい……」と、もし相手が思ってたら。

これ多分ね、絶対どこかで問題が起こるはず。

司会

ずっと我慢してたけど、何か言えるタイミングのときに便乗してドカーンみたいな?

石井さん

僕たちもですね、完璧な仕事ばっかりじゃないし、叱られることも。やっぱりその時は、担当者が言えなかったとか、お客さんが無理をしてしまって、どこかでそれが限界が来てしまったとか。

司会

ブルースタジオみたいな、設計会社としてこだわりの強いところに頼むと、「自分の意見を言えないんじゃないか、こんなダサイ私の要望なんて言っていいのか?」と、萎縮しちゃう人も多いのかもしれないですね。以前、ショールームで相談を受けた方が言っていました。

石井さん

それはやっぱり業者と発注者の関係性が、本人たちの理想のバランスとちょっと違ったところにあるケースでしょうね。

司会

そうですね。だからそういう業者と発注者の関係性じゃなく、プロジェクトの仲間になれるような、気軽に相談できる人を見つけたいって人は、そういう相手を選んだ方がいいしっていうことですよね。

ありがとうございます。じゃあ、最後の質問です。

Q.toolboxの商品やサービスに対してのリクエストや改善してほしいところはありますか?

toolboxの商品開発担当

石井さん

あーーそれ、うちのスタッフに聞いた方がいいかもしれないですけど……。ただ僕たち、相当toolbox使ってるので。

イッシ−・司会:

ありがとうございます!

石井さん

うん……多分ここで言えることと、言えないことが(笑)

司会

(笑)

それは、あの……この場で言えないことは、二次会でこっそり教えてください。

石井さん

まぁ、そういうことじゃなくて(笑)

もう少し大きな話で、僕が感じてるのは、toolboxって、いい意味で世界観があって。「何かtoolboxっぽいよね」っていうのは、多分確立しているんですけども。

やっぱり、ここまでtoolboxが大きくなってきて、その中での、要するにビジネスとしてのノウハウってのがものすごくありますよね。

なので、「toolboxっぽいよね」っていうこと以外の、いろんなジャンルだったりとか、スタイルだったりとか……。

イッシー

そうですね、なんかインテリアもいろいろある中で、世界的に見てもいろんなテイストがもっとあるはず。

石井さん

そうなんですね。だからその中で電化製品とかね、日本の場合は、いろいろ許可の問題とか、難しいかもしれないけれど。

建材とかであれば。建材もね、防火認定とかありますけども。

イッシー

例えば、タイルの色だったりしても、僕らはどうしても建材というか、マテリアルベースで考えちゃうんですけど。

石井さんの話を聞いてると、そこに色があることによって、暮らし方や気持ちが変わったりとか、朝のテンションが変わるみたいなものが紐付いてくるのかなって思うと、もっとそういう目線で建材を探しに行く旅に出てた方がいいかなあとか、思いますね。

石井さん

あとは、建材というとこから、もしかしたら一歩出るっていうのもありますよね。

最近、こないだもお客さんとの会話で面白かったのが、よく段差で仕切るとかあるじゃないすか。壁ではなくて。壁だとしても、柔らかい壁で仕切りたいとか。

それをフレグランスで仕切るみたいなことをお客さんがやってたんです。こういうのって、スッゴイかっこいいなって。

なかなか匂いって取り入れたいけど、そこまで手が届かないというか、そこまでリーチできないケースが多い。本当はね、匂いだけの空間とか作るとかっこいいけど。

だから、「暮らし」っていうことと「物販」とか「流通」って考えた時に、必ずしも、取り組みべき対象が建材ではないのかもしれないですよね。

イッシー

そこまで広げることも、必要なんですね。

「キャンプ用品だと考えると20万って高いけど、システムキッチンだと思うと、めちゃくちゃ安い」

石井さん

最近、キャンプ用具で暮らしてる人たちとかすごく増えてるじゃないですか。みんな昔から気づいてた。
「何かキッチンとかさ、キャンプ用品でいいんじゃね?」みたいな。

司会

動くし、楽しいし。

石井さん

そうそう、「キャンプ用品だと思うと高額なんだけど、キッチンだと思うと、めちゃめちゃ安いじゃん!」みたいな。

イッシー

価格の感覚も違いますもんね。

石井さん

そうそう。「キャンプ用品だと考えると20万って高いけど、システムキッチンだと思うと、めちゃくちゃ安いじゃんっ」て。

司会

「0」が一個違いますね。

石井さん

それはだから、さっき話した「スモールバジェット」、そういう側面もあるよね。

司会

そうですね、なんか「家」って思っちゃうと、高いのが当たり前で受け入れなきゃいけないって思うけれど。

石井さん

そうだってさ、ネットカフェで寝泊まりっていったら「狭っ!」って思うけど、飛行機のファーストクラスだと「広っ!」ってなるじゃないですか(笑)その違いって何なんだろうって。

イッシー・司会

うんうん。

石井さん

そこはやっぱり思考のプロセスですよね。だからそこは、さっきの(事例で説明した)小さい子供部屋の考え方と通じるものがあって。

それは何のためなのっていうことと、別にそこにずっといるわけではなかったり。

外の空間、例えば、家を買う人ってどこまで自分の家なんだよ。みたいな。自分の所有する部屋があって、共用部があって。目の前の道があって、環境があって、駅前があって、公園があってとか……。でも一番大事なのは周りに住んでる人たちだったりとか、近隣のお店だったりする。暮らしっていう幅をどんどん広げて(考えていくといいかもしれない)。

イッシー・司会

はい、ありがとうございます。

おわりに

イッシー

石井さん、いろいろ話聞かせていただきまして、ありがとうございました。どうでしたか?

石井さん

(toolboxのカタログを見ながら)toolboxなんかがあることで、DIYとかチャレンジしてみようって思う人がいるのと、(カタログ掲載の)これらのパーツから始まる住まいづくりみたいなのが、きっとあると思うんですよね。

例えばこのシンク、前半冒頭の空間と家具との関係(いい椅子を置く場所がないから家をリノベしようと思う話)と一緒で、それがもっと広がったのが多分toolboxで。

このシンク入れたいから、ちょっと家を変えてみましょうとか。それをいろいろ調べていくと、「なんか自分でも買える」とか、「だったらフルリノベーション出来るじゃないか」からはじまって、本当に自分たちの暮らしについて考える人たちもいると思って。

これからも面白い商品を増やしていただきたいと思います。

イッシー

はい、ありがとうございました。

いかがでしたか?

石井さんは、発想の転換、言い換えの例え話なども面白すぎて、さすがだなぁと司会の役割を忘れ、すっかりお話を聞き入ってしまいました。

予算の都合などで、家のリノベ−ションをフルでやりきれない時は、やる部分をすぱっと分けて、「新館、旧館」と言い分ける。なんてくだりは、予算オーバーに悩む全国のリノベ仲間に声を大にして伝えたいキラーワードでした。

スモールバジェットで何が出来るか、最初に一気にやろうとせず、適切に時間に軸を分けて考え、手を加えていくというのも、toolboxが気になっている、これからのキーワードだと思いました。

これまでの住宅用建材の常識にとらわれず、キャンプグッズでキッチンがつくれるのか?と視野を広げてみたり、家づくりの思考のプロセスそのものも、まだまだ楽しめる余地がある。

プロの方も、一般の方も、そして私たちtoolboxメンバーにもすごく気付きのあるお話をしていただいた1時間でした。石井さん、ありがとうございました!

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