今回ご紹介するのは、専有面積約42.5㎡の分譲マンションの事例です。

玄関の扉を開けた途端、目の前に広がる、まるで二つの箱が宙に浮いているかのように見える景色。お部屋に訪れた時の最初の印象が肝心とはよく言いますが、奥行きを感じる佇まいに、思わず「お〜〜」と感嘆の声が漏れてしまいそう。

扉を開けた途端、広がる印象的なキッチンスペース。床を異素材にすることで、壁やキッチンの木の素材感が際立っています。

調理をしている自分の姿を思わず想像してみたくなる、開放感溢れるキッチンスペース。友人を招いてキッチンを囲みながらパーティーに興じたり、ワクワクする妄想が広がります。

キッチンの上に浮かぶ『フラットレンジフード』。空間のアクセントに一役買っています。

驚いたのはこちらのキッチン。なんと『オーダーキッチン天板』を木枠の中に埋め込み製作したのだそう。ステンレス素材による設備感が薄められ、家具のような佇まいに仕上がっています。まさによそ行きの顔。

お手入れが気になるところはステンレスにしつつ、作業スペースに木の温かみと手触りを取り入れたハイブリッドなキッチンです。

さっと朝食を食べるためのダイニングテーブルとして利用したり、デスクとして利用したり。木製テーブルのような見た目は、リビングとの距離が近くても空間の雰囲気を損ないません。

部屋の奥側は段差をつけて、フローリング仕上げに。腰高の窓に合わせて造り付けた広めのソファでは、窓から差し込む日の光や風を感じながら、ゆったりと寝転んでくつろぐことができます。

LDKの一面に貼られているのは、自然な木の表情が楽しめる『ウッドウォールパネル』。ランダムに貼り合わされた木目の不規則なリズムが心地よく、眺めているだけでなんだかホッと癒されます。

同様の仕上げにし、壁の中にひっそりと潜ませた建具には、無垢のタモ材でつくられた木製のドアノブを合わせて。見た目だけでなく、手触りからも木を感じ取ることができる、木の魅力がぎゅっと凝縮された壁に仕上がっています。

まるで隠し扉のような雰囲気。

建具の裏は、それぞれ寝室、トイレ、洗面室になっています。

寝室の収納は、ハンガーパイプでシンプルに。空間のアクセントにもなっています。

木のぬくもりに満ちた、こちらの素敵なお住まい。即日完売だったそうです。

このようにフローリングや壁、キッチン、建具、ドアノブに至るまで、木を取り入れられる要素は様々。どの部分にどんな風を取り入れたら、自分好みの空間に近づけられるか。じっくり考えながら、素材選びを楽しんでいただけたら。

(撮影:jumpei suzuki)

HIGASHIYAMA STUDIO

東京と名古屋を拠点に活動する設計事務所です。建築に潜む「記憶の器」のような性質、時間的な射程を大切にしながら、様々なアプローチから条件を最大化する方法を丁寧に探ることで、そこにしかない、そこにあるべき空間を提案します。

 

建築設計事務所と併行し建築写真家としても活動しています。
jumpeisuzukiphotography

HIROYUKI MORIYASU ARCHITECTS

東京と岡山を拠点に、住宅、公共建築、店舗などの設計を行う建築設計事務所です。コンペティションで受賞するなど、若手建築家として活躍しています。

テキスト:八

関連する事例記事

“引き戸”と“引き算”でデザインした、わたしたちの心地よさ
“引き戸”と“引き算”でデザインした、わたしたちの心地よさ
LDKと寝室を仕切るのは、壁でもドアでもなく、ガラスが嵌め込まれた引き戸。寝室の天井をLDKより少し下げたり、素材や要素を厳選したり、照明の数を絞ったり。“引く”をキーワードに、自分たちの“ものさし”で心地よさを形にしたリノベーション事例をご紹介します。
「長く住む家」だから、着飾りすぎず、シンプルに。変わっていく暮らしを受け入れる“素地”の家
「長く住む家」だから、着飾りすぎず、シンプルに。変わっていく暮らしを受け入れる“素地”の家
着回しが効く、長く付き合える一着を選ぶように。つくり込むのではなく、暮らしのベースをつくる感覚でリノベーションして、これからの暮らしに寄り添い続けてくれるマイホームをつくった事例をご紹介します。
住宅を再編集。間取りはそのまま、剥がす、置く、暮らしを試す、大阪・ローカルの街の宿
住宅を再編集。間取りはそのまま、剥がす、置く、暮らしを試す、大阪・ローカルの街の宿
大阪の下町にある一部屋の宿。もとはごく普通の3LDKだった住宅を、間取りを一切変えずに「泊まれる場所」へと生まれ変わらせた宿の紹介です。
屋根は大きな“植木鉢”!? 人も植物も鳥も、家そのものも育ち続ける、生態系のような住まい
屋根は大きな“植木鉢”!? 人も植物も鳥も、家そのものも育ち続ける、生態系のような住まい
東京・練馬区の石神井公園のほとりに建つ、アーチが連なる不思議な建物。「なんのお店だろう?」と思いきや、実は住宅なんです。散歩の途中につい足を止めて見入ってしまうその佇まいは、そこに住む人だけでなく、植物や鳥までも受け入れる“器”として計画されたもの。そんなユニークな考え方のもとつくられた「鶴岡邸」をご紹介します。