深い色味の北欧ビンテージ家具と、柔らかな照明の光。窓の外には鮮やかな緑が視界いっぱいに広がり、ゆったりとした気持ちに浸れる住まいです。
お施主様が物件購入とフルリノベーションに踏み切ったのは、40歳を迎えるタイミング。職場での担務が変わり、時間や気持ちに余裕ができたことで、ふと「今だ」という気持ちになったそう。
将来的に売却するという選択肢も視野に入れ「今後のライフプランが変わってもいいじゃん」と柔軟な姿勢で家づくりを決断されました。
物件選びにおいて絶対条件だったのが「土に触れる暮らし」が叶う専用庭付きの住居でした。
リビングからすぐに出られる専用庭では、ミントやパセリなどのハーブから、トマトやブロッコリーといった野菜まで収穫されています。近くに畑を借りずとも、自宅で思う存分庭仕事を楽しむ。都心のマンションとは思えない、なんとも羨ましい暮らしです。
室内には天井近くまで高さのある大きな窓があり、そこからたっぷりの自然光と抜けのある景色が望めます。マンションの一階であることを感じさせない開放感も、物件購入の決め手になったそうです。
「自分の好きな家具を置くことも家を購入するモチベーションの一つだった」と語るほど、以前からインテリア好きだったというお施主様。リビングには北欧ヴィンテージのキャビネットに、ハンス・J・ウェグナーの「ママベアチェア」など、長年憧れだった家具たちが並びます。
こうした整った住まいを拝見すると「きっと持ち物が少ないからできることなんだろうな」と思ってしまいがちですが、実はお施主様は畑仕事の他にも料理、編み物など多趣味な方。室内はそうした細かな道具たちの存在を一切感じさせず、置かれた物ひとつひとつが映える空間になっているから驚きです。
このように、リビングを好きなものだけで満たすために、間取りの要となったのがバックヤードの存在でした。
玄関からは、リビングへ伸びる通路のほかに、バックヤードへ直接繋がるルートと、2つの動線が確保されています。
「私はこの家の主役はバックヤードだと思っています。片付けがあまり得意なタイプではないので、家の中で『いつもきれいに片付けておく場所』と『多少ごちゃごちゃしていても目をつぶれる場所』が明確に分けられて、すごく楽になりました」とお施主様。
「家の主役がバックヤード」という言葉を裏切らないその収納スペースは、なんと全長6mもの広さ!クローゼットには冬服も夏服もすべてハンガーに掛けられて、衣替えの必要もない。誰もが一度は憧れたことのある理想的な収納の仕方が実現されていました。
このバックヤードは、バスルームや脱衣所とも繋がる動線になっています。単に物をしまうだけでなく、ドライヤーをかける場所としても活用しているそう。
というのも、ドライヤー後に髪の毛が散らばるのが小さなストレスだったそうで、リビングを綺麗に保つためにも、この通路内で乾かす方が都合が良かったのだとか。
そう言われてみると「ドライヤーは洗面台でするもの」という思いこみがするすると解けていくよう。どうしてその発想がなかったのか不思議なくらい、理にかなったアイデアです。
以前の住まいでは、カビに悩まされた経験もあったというお施主様。
家全体の「裏動線」となるバックヤードですが、決して奥に押し込むのではなく、庭の緑も感じられる、ゆとりあるスペースに仕上げられています。狭く閉じた空間にしないことで、通気性も抜群に良くなりました。
リビングや庭を見渡せるオープンなカウンターキッチンは、人工大理石の天板にセラミックのシンク、そして絶妙なグレージュの面材を合わせ、柔らかな配色にこだわって造作されたもの。
サイドには、リモコンや読みかけの雑誌などを置くのに便利な浅めの収納も。ついダイニングテーブルに置きっぱなしにしてしまう小さな物ですが、こうして予め定位置を決めておけば、常に何もないきれいな状態を保つことができますね。
そしてキッチンの隣には、ワークスペースと洗面が緩やかに繋がるように配置されています。
週2回ほど在宅勤務をしているというお施主様。最初はしっかりとワークスペースをつくる想定ではなかったものの、打ち合わせを重ねる中で「やっぱりちゃんと設けよう」という結論に至ったそうです。ただ、くつろぐリビングの真ん中にデスクスペースを設けることには、どうしても抵抗がありました。
そこで生まれてきたのが、散らかりがちなデスク上をタイル壁で目隠ししつつ、座った時には正面の窓から庭の緑が見えるという、半個室のワークスペースです。
大きなモニターを隠しつつ、リビングの美観もしっかり維持。手元だけを優しく照らす明かりの効果も相まって、集中できる「程よいおこもり感」と、庭の緑を感じる「開放感」を両立したとっておきの居場所になっています。
ワークスペースの背面にある洗面は、マットなグレーのシンクやルイスポールセンのウォールライトなど、リビングと繋がる場所だからこそ、お部屋に溶け込む素材で設えられています。
また、キャビネットを床から浮かせるフロートデザインにしているのも、空間に圧迫感を与えず、こだわりのタイル壁を贅沢に感じられるポイントです。
洗面の向かい側には、寝室が配置されています。衣類などの収納をバックヤードに集約したことで、寝室は潔く「眠るためだけ」の空間に。リビングとの間には、室内窓のような開口があり、朝目覚めて体を起こすと瑞々しい緑が目に入ってきます。
玄関からの動線上に、複数の機能がコンパクトに配置された間取り。ですが、一歩足を踏み入れたときに視界に飛び込んでくるのは、大切な家具と、窓越しに広がる鮮やかな緑だけ。
真っ直ぐに室内へと誘われるような、この見通しの良さは、お施主様がとても気に入っている眺めだそうです。
必要な物を裏側に集約しつつ、毎日の帰宅後の動線上に心地よい景色を重ねる。この潔い眺めこそが、今回の間取りが持つ何よりの魅力だと実感させられます。
「家づくりを通して、自分の生き方の価値観をかたちにしていけるのは本当におもしろい経験だった」と振り返るお施主様。
家具の配置といった表面的なデザインに留まらず、朝起きてから夜寝るまでの理想の振る舞いを突き詰めた住まいには、どこにも出かける必要性を感じないほどの充足感に満ちています。
妥協なく「自分の心地よさ」に向き合い、逆転の発想で紡ぎ出されたこの住まいは、お施主様にとってこれからの人生をさらに自分らしく進んでいくための分岐点となっていました。
EcoDeco
株式会社Style&Decoが運営するリノベーションブランド。中古マンションの仲介から資金計画、リノベーションにまつわるあらることをトータルにサポートしています。コーディネーターは、不動産探しから設計まで一貫して担当できる不動産と設計のプロ。「住まい手の暮らしに合わせたオーダーメイド」のリノベを得意としています。