私たちには、東京R不動産を始めとしたグループ会社が数社あります。
年に一度、グループ全体のスタッフが一堂に介し、外部ゲストをお呼びしてのトークイベントが行われています。
不動産や建築設計、施工など多岐に渡る領域で活動する私たち。世の中を知り、時流を読むことは、必ず仕事に返ってくると考えています。
異なる領域で活躍する人や企業の価値観・考えに触れ、自分たちの視野を広げるという狙いのもと、ゲストをお呼びして話を伺っています。

そして今年はなんと、ほぼ日代表の糸井重里さんがやってくる!そんな知らせが駆け巡った時にはとても驚きました。
学生の頃、ほぼ日手帳に出会い、ほぼ日刊イトイ新聞を知り、そのユニークさに心が躍った日を思い出しました。

そんな嬉しさを抱えていると、時間が過ぎるのはあっという間です。
当日のインタビュアーは、グループ会社であるOpenAの代表・馬場正尊と弊社スタッフ。
フリートーク形式となっていたため、たくさんの話題が飛び出しました。
今回は特に印象的だったお話をご紹介します。

創業当時のシンプルな思いに立ち戻る

R不動産グループは、その名の通り、東京R不動産から始まりました。
私たちTOOLBOXもその成長の中で生まれた事業の1つです。

東京R不動産は「東京の東側エリア」へのポテンシャルを感じ、日本橋からスタートしました。
昔ながらの風景や下町感など、古き良き文化と新時代の融合に価値を見出したのです。
今までだったら見過ごされていたかもしれない不動産物件を独自の切り口で紹介することで、まち全体を面白くできると思っていました。

ほぼ日も神田にオフィスを構えています。
どこかシンパシーを感じてしまう私たち。どうして神田だったのか聞いてみました。

すると糸井さんは「神田にうまいラーメン屋があって…」と切り出します。
ラーメン屋?と私は思わずきょとんとした表情になってしまいましたが、糸井さんは以前から神田にはおいしいものを食べによく通っていたんだそう。
そんな自分の熱心さに、神田という街にはわざわざ行きたいと思わせる何かがあるんだ、と感じたそうです。

また、別の角度からこんなこともおっしゃってました。

「神田にはいい喫茶店がいまも多くあって、午前中から新聞を広げている男性もいたりする。
都心では高い家賃を払っても成り立つ業種が限られてしまうから、どうしても家族経営のお店は減ってしまうけれど、神田界隈には成立している店が多い。この点は京都に似ているなと。伸びしろがあるなと思ったんです。その伸びしろの中で次に何が起こるのかわかったら面白そうじゃない。」

伸びしろがあると解釈をする観点に「伸びしろ…そう捉えるのか」と思わず馬場も唸っていました。
糸井さんの見ている世界を垣間見れたようで、私の瞳孔はぐわっと開き、さらに聞き入ってしまいました。

そこから、縁あって神田にほぼ日の學校のスタジオを作り、後に本社オフィスも移転されたそう。
「僕たちの「初めての地元」として、神田をもっと面白く盛り上げていくお手伝いができたら」と糸井さんは話していました。

そういう気持ちで東京R不動産をはじめとした事業をつくってきた私たちRグループだったはずなのに、糸井さんの言葉にハッとしている自分に気がつきます。
同じように感じていたスタッフがほかにもいたのではないでしょうか。
もしかしたら、Rグループ全体として初心に帰る必要があるのかもしれません。

私たちも、住空間の編集権を住み手に移し、家づくり自体を面白がってもらいたいと様々なサービスを提供しています。
しかし、もっともっと面白がってもらえる何かがあるのかもしれないと、ギアが1つ上がった気持ちになりました。

組織における「おもしろい」の難しさ

続いて、ほぼ日の掲げる行動指針「やさしく、つよく、おもしろく。」について話が移っていきます。

TOOLBOXは、「日本の住空間に楽しさと豊かさをもたらす」というミッションを掲げ、リノベーションという言葉が一般化する前からリノベーションと向き合ってきました。
住空間という身近なものをもっと自分らしく表現したい、その想いに応えたいと進んできた結果、多くの人に支持していただけるサービスとして成長を続けられていると思います。

そんな私たちですが、組織の規模が大きくなるにつれ、経験したことのない課題に直面することも増えてきました。
そもそも組織ってなんだろう、今までとは何が違うんだろう。
そんな状況も相まってか、弊社スタッフが「おもしろくって難しいですよね」と投げかけます。

糸井さんは「非常に難しいですね、まずは「やさしく」が前提にあるけれど、そこから更に「つよく」なるとどうしても「おもしろく」が難しくなる。「おもしろく」がほぼ日のメシの種につながるわけだから、常にそこは意識をしています。」と話してくれました。

誰かが体調を壊したときにその仕事が止まらないよう、他の人でも代われるように整えておく必要がある。
そういった、強くなることの良さもわかっているけれど、そこにおもしろさの要素をどう増やしていくか、
だから、糸井さん自身の「いいかげん力」を使って、もっとおもしろくできるんじゃないか?と、常に意識して周りをみるようにしているのだそう。

たとえば、ほぼ日手帳のページに掲載されている「日々の言葉」をセレクトをする時には、担当者が候補となるすべての言葉を紙にプリントアウトして目の前に広げて選ぶのだとか。
ともすると、手間もかかるし紙も勿体ないしチームのコミュニケーションを見直す方に動いてしまいそうですが、「それはコンセプトとしてだめですよね。コンピュータでやってしまってはおもしろさのクリエイティブにはつながらない。」と、糸井さん、ほぼ日ならではの価値基準がそこにあるようです。

このエピソードにはとても共感しました。
私たちの組織には多様な個性を持ったスタッフが多くいます。
組織規模が大きくなってもそういった個性が失われることなく、生き生きと働ける環境であったらどんなにいいでしょうか。
けれども、糸井さんの話を聞く限り、日常的にそのことを意識をしている必要があると感じました。
これは難しいとおっしゃる意味も分かります。

私たちらしさを表現し続けながらこれからも前進する企業でありたい、力強くそう思いました。

私たちのこれからを思い描く

トークイベントのあとには、残ったメンバーで懇親会を行います。
その日のスタッフたちの表情からは、それぞれが何かを噛み締めている様子が見て取れました。
楽しかった、よかったといった月並みな表現では表すことができない時間でした。

それは、糸井さんのお話が決してポジティブなものだけではなく、そこに生々しさを感じられたからだと思います。薄っぺらくない、言葉の一つ一つに暮らしの情景が溢れるものでした。

人々の暮らしに向き合う私たちのこれからに、糸井さんが大いに期待をしてくれているからだと受け取りたいと思います。
TOOLBOXが設立10周年を迎えたこのタイミングで、このような機会をいただけたことに心から感謝しています。

毎回あたらしい発見や知識、そして考えるきっかけをもらえるRグループの総合定例。これからもいちスタッフとして、年に一度のこのゲストトークイベントの回を楽しみにしています。企画・運営を担当している有志の皆さんも、お疲れさまでした!