心地よさの質をあげる「ディテールのこだわり」
各プロの特徴は"ユニークタグ"に表れる

toolboxでは、商品を使ってくれたり、imageboxに空間づくりのアイデアを提供してくれる全国の家づくりのプロを「プロリスト」で紹介しています。toolboxの「プロリスト」の特徴は、「スケルトンで魅せる」「DIY歓迎」「築古得意」など、各プロの長所や得意技を示す“ユニークタグ”で検索できること。(「プロリスト」についてはコラム「家をつくるパートナーはユニークに探すべし!」もぜひご覧ください)

この“ユニークタグ”には、値段や知名度だけではないプロ選びのポイントを、みなさんに知って欲しいという私たちの思いが込められています。そんな“ユニークタグ”を深掘りしながら、プロをご紹介していく連載コラムが「プロ紹介」。

今回ピックアップするユニークタグは「ディテールのこだわり」です。

“雰囲気”は細部に宿る

表面上のデザインだけでなく、そこで過ごす人やその空間のことを考え尽くし、必要な要素のひとつひとつを丁寧に考える。そのプロセスによって生まれるディテールに、人を魅了する何かが宿るのではないかなと思います。

理由はわからないけど、なんだか心地よいといった具合に、「ディテールのこだわり」を持つプロがつくる空間には、心地よさを感じるさりげない仕掛けが随所に散りばめられています。

今回はそんな「ディテールのこだわり」を持ったプロにインタビュー。一見しただけではわからない、空間に潜むプロのこだわりを事例を参考にしながら伺っていきたいと思います!

建物と素材に真摯に向き合い、居心地をつくる建築家「田中裕之さん」

今回お伺いしたのは、建築、インテリア、家具、プロダクトをベースに、多岐に渡る設計活動を展開している、「田中裕之建築設計事務所」の代表、田中裕之さん。

遊び心やユーモアを駆使しながら、その土地の気候や風土に敬意を払い、建築素材と共鳴させることで、普遍的な美しい空間をつくっています。

toolboxで以前販売していた「木製把手・革のつまみ」も田中さんがデザインされたもの。空間ディレクション〜家具デザインまで、提案範囲はじつに幅広い。(撮影:Munemasa Takahashi)

toolboxで以前販売していた「木製把手・革のつまみ」も田中さんがデザインされたもの。空間ディレクション〜家具デザインまで、提案範囲はじつに幅広い。(撮影:Munemasa Takahashi)

そんな田中裕之さんの空間づくりへのこだわり。それは、パリで仕事をしていたことも大きく影響しているのだそう。

一つは、素材と向き合う姿勢。「スチレンボードで模型を作ることは学生時代もやっていたけれど、パリで勤めていた事務所では実際の素材を使って、必ずモックアップを作って確認していました。素材自体の持っている色とか、肌理とか、硬さ、明るさなど。素材の持つタグを分解して、何を使うか丁寧に決めていく」今でも、デザインを決める際には出来るだけモックアップを作っているのだそう。

もう一つ、日本との違いで感じた部分は、価値の見出し方。「残していいものはきちんと残しているんです。日本では、時に残していいものまで捨ててしまうこともある。全部保存することがいいとは思わないけれど、価値の見出し方がフランスと日本では違うような気がします」

たしかに、田中さんの手がけるリノベーションは、多少手間がかかったとしても建物の歴史や「記憶」を残す選択をされている印象があります。

プールがカフェに。KIRO 広島

「KIRO 広島」は、広島市中心部に建つ、かつてはリハビリ専門の整形外科病院だったという建物をコンバージョンしたホテルの事例。建物の記憶を引き継ぎ、病院だった時代の痕跡を丁寧に扱うことで、ここにしかない空間をつくり上げています。

撮影:Gottingham

撮影:Gottingham

もっともそれが顕著に現れているのは、3階の元はリハビリ用プールだったというカフェ空間。その名も『THE POOLSIDE』。

撮影:Gottingham

撮影:Gottingham

設計段階では運用上プールの縁を壊したほうがいいのではないかという議論もあったそうですが、

無くしてしまうと元の建物の「記憶」がなくなってしまう。そのため、どうやって残すかを丁寧に考えて、プロジェクトチームに説明をしていったと言います。

撮影:Gottingham

撮影:Gottingham

「プールに行ってプールサイドに座る」という行為。それを残すために、プールの縁はそのまま残し、ベンチにしています。プールに降りる手摺やタイルも残されています。プールの面影を感じることで、建物自体にも興味が広がっていく。「プールがカフェになった」という印象を強めることで、思わず写真を撮りたくなる景色が広がります。

「やりすぎるとつまらなくなっちゃうので、痕跡の残し具合は現場でかなり考えました」

撮影:Gottingham

撮影:Gottingham

田中さんがデザインを決める際に気をつけているのは、「なんとなくの感覚できめない」ということ。建築の場合、何人かでチームを組むし、クライアントもいる。自分だけでやっているわけではないので、必ずその提案に至った理由を言語化するのだそう。

そうすることで、関わるメンバー内でも共通認識ができて、ぶれない空間に仕上がるのだといいます。「この線、かっこいいだろ?とはやりません」と、笑う田中さん。

光と風が通り抜ける、回遊性ある間取り

撮影: Kenta Hasegawa

撮影: Kenta Hasegawa

続いてご紹介するのはマンションリノベーション事例です。

「3面開口のある住戸を個室で区切ってしまうのはもったいないので」と、水周りの機能を中央にぎゅっとまとめた、回遊性のある間取りで、光と風が気持ちよく通り抜ける住まいをつくりました。

面で見せるためにスイッチは凹ませたのだそう。(撮影:Kenta Hasegawa)

面で見せるためにスイッチは凹ませたのだそう。(撮影:Kenta Hasegawa)

「この家、どこに冷蔵庫があるかわかります?」と田中さんに質問されたのですが、そういえば……と見回しても冷蔵庫が見当たらない。

撮影:Kenta Hasegawa

撮影:Kenta Hasegawa

なんと、このおうちの冷蔵庫は、中央の箱の通路出入口にある引き戸の後ろに、ひっそり隠されているんです。

「1日24時間のうち、中央の通路にある洗面や水回りを隠したいと思うのは、お風呂に入るときくらい。それ以外は、引き戸を開け放すことで、空間の邪魔になってしまう冷蔵庫がうまく隠れるようにしたんです」

また、戸当たりとして取り付けた木の角材を、箱の周囲にも取り付け、空間のアクセントにすることに。

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