2025年4月。草木が芽吹き、新しい生活が始まるこの季節に、toolboxには3名の新卒社員が新たに加わりました。
新卒社員は4月から9月までの半年間、会社のさまざまな仕事を実際に体験しながら研修を行います。目的は、toolboxの幅広い事業を理解するとともに、自分自身の強みや適性を発見することです。
その3名のうちの一人である私は、中国・上海出身です。日本のデザインに惹かれて来日し、大学院でプロダクトデザインを学んだのち、今年toolboxに入社しました。入社前からWebサイトやショールームを通じてtoolboxに触れる機会はありましたが、事業の全体像や業務の運営については理解しきれていませんでした。半年間の研修を通じて、ようやく事業の深い部分を知ることができたと感じています。
このコラムでは、その研修を通じて見えてきた「ストア事業の魅力と特徴」についてお伝えします。
主役は「商品」ではなく「空間」
大学ではプロダクトデザインを専攻していたため、入社当初は自然と商品そのものに関心が向いていました。初めてtoolboxの商品を見たときには、鏡面のアルミを曲げてつくられた『アルミミラー フラット』や、金属を叩き出して加工した『鎚目模様のシェードランプ』など、デザイン性や工芸的な表情を持つアイテムに心を惹かれました。一方で、デザイン的にはとてもシンプルで「普通」に見える商品も少なくありません。そのときの私は「なぜこれも扱うのだろう」と疑問に思っていました。
その後、研修を通じて理解したのは、toolboxにおける商品開発や商品企画の主役は「商品」そのものではなく「空間」だということです。
建材としての商品は、空間を構成するために存在しており、空間こそが本当の主役なのです。だからこそ、個性を強く放つ商品は空間のポイントになりますが、同時に背景として空間に溶け込み、周囲と調和する商品も欠かせません。まるで交響楽においてソロ楽器と伴奏が共鳴しあうように、空間もまた多様な商品のバランスによって成り立っています。そのためtoolboxの商品ラインナップには、独特な存在感を放つものだけでなく、一見すると「普通」に見えながらも、空間づくりを静かに支える商品が数多く含まれています。
アイデアを届け、顧客が自分で家を描く
初めてショールームを訪れたとき、その物量に圧倒されました。限られた空間に所狭しと並ぶ多様な商品は、従来の建材ショールームとはまったく異なる光景でした。多くのショールームが商品を整然とカテゴリー別に並べたり、完成されたモデルルームを提示したりするのに対し、toolboxのショールームはあえて「雑多さ」を残し、独特の体験を生み出しています。
また、ウェブサイトのあり方も他社とは大きく異なります。オンラインストアとして商品の情報や価格がわかりやすく、購入までの流れがスムーズであることはもちろんですが、注目すべきは商品の紹介の仕方です。単に機能やデザインの特徴を伝えるのではなく、一つひとつの商品にコラムが添えられ、空間の中でどう活かされ、どのような体験につながるのかが語られているのです。
こうした展示や紹介の仕組みには、「お客様に自分の家を想像してほしい」という思いが込められています。toolboxは完成された答えを提示するのではなく、ショールームの陳列やWebのコラムを通して、家づくりのためのさまざまな「アイデアのピース」を提供しています。お客様自身がそれらを自由に組み合わせ、理想の住まいを描けるようにすることが、toolboxの展示・販売の本質だと感じました。
一人ひとりの理想の家に寄り添う
私は入社前、顧客対応の経験がまったくなく、「商品のアフターサービスや機械的な問い合わせ対応が中心なのだろう」と考えていました。しかし実際に研修で携わってみると、toolboxの顧客対応の多くは購入前のお客様から寄せられる細やかな相談や要望でした。商品の特注や施工方法、使用上の確認など、決まった答えがない内容が多く、一件ごとに状況を理解し、最適な解決策を探しながら丁寧に対応していく必要があります。
特に印象的だったのは、目の前の質問に答えるだけでなく、その質問が生まれた背景やお客様の次の行動までを見据えて対応している姿勢です。「なぜこの質問が出てきたのか」「この課題を解決したあとにさらに必要となるサポートはないか」といった点まで考え抜いたうえで応じる先輩たちの姿を見て、こうした丁寧な対応があるからこそ、お客様は住まいづくりの中で直面するさまざまな課題を安心して解決でき、自分の理想の家を実現できるのだと実感しました。
ストア事業は「商品を売る」仕事に見えますが、toolboxのストア事業はお客様が理想の家を実現するための、豊かで多様、そして欠かせない要素を提供しているのだと感じました。家づくりのアイテムやアイデア、そしてさまざまな要望に応えるサポートを通じて、お客様が自由に自分の家を描き、妄想を形にできるよう支えているのです。
半年間の研修を終え、これからはいよいよ事業を担う立場になります。toolboxのストア事業には大きな可能性を感じており、これから関わっていけることをとても楽しみにしています。現在のストア事業は、お客様が自由に妄想し、自分らしい家を実現できるような取り組みを行っています。一方で、社内ではすでにこれからの暮らしのあり方を探り、未来のライフスタイルを描こうとする動きも始まっています。
近い将来、toolboxはお客様の理想の家を実現するだけでなく、その一歩先の住まいや暮らしの可能性を提示し、人々が憧れる豊かで面白い未来を示せる存在になると信じています。そんな未来を思い描きながら、これからの仕事に取り組んでいきたいです。