家は、手をかけて育っていく

こだわりを詰め込んで完成したマイホームには、「暮らしを大切にしたい」という思いが宿っていることと思います。これから何十年とともに暮らす家は、人と同じように手をかけて育っていくもの。

たとえば、テーブル天板にワックスをかける、真鍮のサビを落とすといった日常の延長にあるお手入れから、棚の取り付けなどのDIY、さらには間取りの変更やキッチン交換のような大きなリフォームまで。自分が大切にしたい暮らしに合わせて、時間をかけて少しずつ手を入れていくことで、自分に合った心地よい住まいに育っていくのだと思います。

リフォームが必要になる頻度はそう高くないかもしれません。ですがいざという時にまとまった費用がかかるもの。だからこそ、将来どれくらい必要かを知り、備えておくと、家に手をかけることに前向きになれるのではないかと思います。

今回は、「リフォーム費用の相場」をツールボックス工事班(TBK)の一杉に、「リフォーム費用の備え方」をファイナンシャルプランナー肥後さんに教えてもらいました。

教えてくれるのは…
一杉伊織

toolboxの設計施工チーム、TBK(ツールボックス工事班)の親方。慶應義塾大学文学部民族学考古学専攻修了後、京都で町家の改修等に従事しながら建築を学ぶ。古民家再生を手がける設計事務所にて設計/監督/職方を経験後、2011年よりTOOLBOXに合流。

リフォームにかかる費用の性格

リフォームと一言に言っても、目的によって性格が異なります。目的を分けて考えると優先順位や予算配分が決めやすくなります。

アフターリフォーム費・・・暮らしの変化に合わせたリフォーム費用。子どもが成長して個室が必要になったときの間取り変更のリフォームや、キッチンの使い勝手を自分好みにするといったリフォームなど

修繕維持費・・・メンテナンスにかかる費用。設備が壊れたり、劣化したりした時にかかるお金

スペックアップ費・・・性能アップのための費用。省エネを目的としたリフォームや耐震工事、バリアフリー工事など

それぞれの代表的な例や費用の相場をご紹介していきます。

リフォーム費用の相場

アフターリフォーム(暮らしに合わせたリフォーム)費の相場

ライフスタイルの変化や住み始めてから見えてくる課題は、時間とともに何かしら生まれるもの。toolboxでは、そんな暮らしの変化に合わせて、模様替えのように、家に手をいれるリフォームを“アフターリフォーム”と呼び、暮らしとともに育てる家づくりを提案しています。

たとえば、アフターリフォームにはこんなケースがあります。

・子どもが成長して、それぞれの時間も楽しめるよう個室をつくる
・ 仕事のスタイルが変わり、集中できるワークスペースをつくる
・ 暮らしにゆとりが生まれ、空いたスペースを趣味や収納に活用
・「ここが不便かも」と気づけるからこそ、使い勝手を自分好みに改善 など

アフターリフォームの事例をご紹介

「つくり込み過ぎない空間」にリノベーションした家に、子どもの成長に合わせて、遊び場をつくったり、個室を設けたりと、家族の暮らしが変わるたびにアフターリフォームを重ねているご家族をインタビュー。

アフターリフォームの選択肢は、暮らし方や既存の状態によって様々ですので、費用を一概にまとめることは難しいですが、間取り変更のための壁新設・解体や建具取付など、やること別に相場をまとめました。

やること別相場一覧

実施内容 目安金額
壁を壊す(1面) 30万円
壁を立てる(1面) 40万円
フローリング貼り替え(10㎡) 20万円(2万円/㎡)
建具交換(1箇所) 15万円
室内窓設置(1箇所) 30万円
壁面本棚 30万円
キッチンバックカウンター 50万円
カウンターデスク 15万円(2万円/㎡)
キッチン扉交換(ファミリータイプ) 30万円
天井アゲ(10㎡) 20万円(2万円/㎡)
ウッドデッキ 50万円
ウッドフェンス 50万円

クロスの貼り替えやフローリングの貼り替えなど、仕上げ材の変更による表層のリフレッシュは、空間ごとに相場を算出しました。

表層チェンジの空間ごとの相場一覧

表層チェンジ箇所 目安金額
キッチン 150万円
リビング・ダイニング 150万円
洗面 50万円
トイレ 30万円
玄関 30万円
アフターリフォームの手立て

toolboxでは、パーツ類からフローリング、キッチンなどの内装建材の販売やDIYや空間のアイデアの発信の他、LDKリフォームや本棚造作、キッチン扉交換など、小・中規模のアフターリフォームを承っています。

維持修繕費の相場

維持修繕費は、主に住宅設備の更新がメイン。戸建になると、加えて外装・外構維持のための費用がかかってきます。設備や建材には耐用年数があります。交換や改修が必要になる時期を把握しておくと安心です。

一般的に言われている耐用年数と相場をまとめました。

マンション・戸建に共通する維持修繕費の相場一覧

実施内容 耐用年数 目安金額
浴室(ユニットバス)交換 30年 100万円
キッチン交換 30年 150万円
トイレ交換 30年 30万円
洗面交換 30年 50万円
エアコン交換 20年 30万円
給湯器交換 20年 20万円
床暖房交換 20年 50〜100万円
クロス貼り替え 20年 10万円(6畳間/壁面積30㎡程度)
フローリング貼り替え 30年 10万円(6畳程度)

戸建にかかる維持修繕費の相場一覧

実施内容 耐用年数 目安金額
外壁塗装 20年 200万円
屋根葺替え 20年 200万円
防蟻塗装(シロアリ対策) 10年 20万円
ウッドデッキ塗装 10年 20万円

スペックアップ(性能アップ)費の相場

床暖房や断熱窓など寒さや暑さに備えるための住宅設備の追加や、トイレや風呂などのバリアフリー化、戸建であれば耐震工事やソーラーパネルの設置など、性能向上のためのリフォームが該当します。

省エネ系リフォームの相場一覧

実施内容 目安金額 備考
断熱窓・二重サッシへの交換 10〜50万円(1窓) サイズ・性能で幅あり
外壁・屋根断熱リフォーム(断熱材追加など) 100〜300万円 戸建全面改修
高効率給湯器(エコキュート・エコジョーズなど) 40〜70万円  
太陽光発電システム設置 130〜250万円 4〜5kW規模
蓄電池の導入 100〜200万円  

耐震系リフォームの相場一覧

実施内容 目安金額 備考
耐震補強工事(壁・基礎・金物補強など) 100〜250万円 戸建30㎡前後
屋根の軽量化(瓦→金属屋根へ葺き替えなど) 100〜200万円  

バリアフリー系のリフォーム相場一覧

実施内容 目安金額 備考
手すり設置 5〜20万円 場所や長さによる
段差解消(スロープや床の高さ調整) 5〜30万 段差や箇所数による
廊下幅の拡張・ドア交換(引き戸化など) 30〜80万円  
ホームエレベーターの設置 200〜500万円 建物状況や積載人数による

その他、諸費用

リフォームにかかるのは、施工費だけではありません。リフォーム中の住まいや荷物の置き場所、マンスリーマンションなどのリフォーム中の仮住まいのほか、リフォーム後の暮らしにかかる家具や収納小物類にかかる費用も加味しておきましょう。

リフォーム費用はいつ・どのくらい必要?

10年後、20年後、30年後のタイムラインに、設備更新のサイクルやライフスタイルにおけるイベント(出産、子ども部屋、子の独立、親の同居など)を書き出しておくと、次の更新タイミングを目安に計画的にリフォームが進められます。

まとめて工事ができると費用効率も上がるので、設備を更新する(維持修繕)タイミングで子ども部屋をつくろう(アフターリフォーム)など、それぞれの費用を関連させて考えておくと良いでしょう。

POINT:妄想もセットで備えよう!

よくあるのは、設備が壊れてしまってから慌てて修繕・更新するリフォーム。生活に支障が出るため焦って進めてしまい、空間の妄想がしきれなかったと後悔される方も多いです。せっかくリフォームするのなら実現したい空間に近づけるよう、使いたいアイテムや素材に目星をつけておいたり、空間イメージをスクラップしておくのがおすすめです。

リフォーム費用の備え方

数十年後まで見据えてみると、想像よりも多くの費用がかかると感じている方もいるかもしれません。将来のリフォームは住宅ローンには組み込みにくいにもかかわらず、前もって備えている人は少数派。だからこそ、どう準備するかを知っておくことが大切です。

少額から借りられるリフォームローンを活用

お金の備えがたりなくても、今すぐリフォームを実現したい場合はリフォームローンが使えます。リフォームに必要なまとまった資金を、分割して返済できる金融商品です。

住宅ローンが家を買うための「長期・大口の借入れ」に対して、リフォームローンは住まいを整えるための「中小規模・短期の借入れ」です。

借入額は、数十万円〜1千万円程度。金融機関や工事内容によって上限は異なります。返済期間は5〜20年程度が一般的とされており、比較的短期で完済を目指すローンです。

リフォームローンには、大きく分けて「無担保型」と「有担保型」があります。無担保型は、担保や保証人が不要で手続きが早いのが特徴。その分、金利はやや高めになります。有担保型は、住宅や土地を担保に入れるため手続きは増えますが、金利は低めに抑えられます。

補助金や税金控除制度はある?

リフォームには、さまざまな補助金や税金控除の制度があります。耐震工事や、断熱窓などの省エネ性能を向上する工事、段差解消などのバリアフリー工事など、主にスペックアップ費は国や自治体からの支援を受けられる可能性がありますが、条件を満たす工事に限られます。性能や素材が限定され、好みのものを使用できないことも多々あるため注意が必要です。受けられる控除額が支払う利息より大きい場合など、状況によってはローンを組んだ方が有利に働くこともあります。

家を育てるリフォーム資金は、NISAで育てる

リフォームローンはとても助かる制度ですが、当然利息がかかり、返済計画の縛りも生まれます。家を育てながら、無理せずに付き合うためには、お金も同時進行で育てておくのがおすすめ。効率よくお金を育てる方法の一つが、NISAを活用した資産形成です。

ここからは、将来に向けたお金の備えについて、ファイナンシャルプランナー・肥後さんに教えていただきます。

教えてくれるのは…
肥後知歩さん

ファイナンシャルプランナー。中立的な金融教育機関などで約15年間、講師として登壇中。家計管理や資産運用についての講演、乗り合い代理店にて保険の見直し相談を約200世帯以上経験し、今に至る。現在はセミナー講師(年間講演回数100講演以上)、コラム執筆や個人相談なども含め幅広く活動中。

家と同じように、お金も育てるもの

投資の王道は「長期・積立・分散」。お金も家と同じように、長い時間をかけながら少しずつ育てていくのが基本です。

10年、20年先を見越したリフォーム費用は、長期的視点で積立投資を行いながら複利を得て増やしていくのがおすすめです。NISAのつみたて投資枠を活用すれば、利益が非課税となるため、効率よく資産を増やしていけます。

NISAとは

NISAとは、長期運用を前提として、少額からでも初心者でも投資をしやすいよう、国が制定した制度。投資信託の積立投資や個別株、ETFなどを取りまとめ、非課税というメリットもつけた、投資のいち手法です。対象となる銘柄は金融庁が認めたもののみで、投資先が分散しているので、リスクが小さいのも特徴。NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」がありますが、10年、20年先を見越した場合は「つみたて投資枠」がおすすめです。

「複利」って何?

投資の基本的な考え方の一つに、「単利」と「複利」があり、増え方が異なります。

例えば、元本100万円を毎年10%で運用した場合。単利は元本の10%が毎年増えていく増え方、複利は毎年増える利息を元本に含めて10%で運用するため、時間が経つにつれ力を発揮する増やし方です。「利息が利息を呼ぶ」と表現される通り、元本も利息も増え続けるのが複利の特徴です。

NISAを始める際に「受取型」「再投資型」という選択肢があります。それはつまり、「単利」か「複利」かということ。長期的に投資をする場合は「再投資型=複利」を選びましょう。

貯金と積立投資、資金の増え方を比較

貯金と積立投資をした場合で、資金の増え方を比較してみました。貯金の金利は、大手銀行の普通預金金利(0.2%)で試算してみます。

毎月2万円×10年、利回り年3%の場合

貯金:約242万円/投資:約279万円
差:約37万円
NISAの場合、7.5万円分の非課税効果あり

毎月5万円×20年、利回り年5%の場合

貯金:約1,224万円/投資:約1,641万円
差:約417万円
NISAの場合、84.8万円分の非課税効果あり

400万円あれば、LDKのリフォームで暮らしの中心を一新することもできるでしょう。ゆっくりとお金を育てることで、利益のみで暮らしに合わせたリフォームをすることも夢ではありません。

NISAのつみたて投資枠を活用することで、貯金よりも飛躍的に資金を増やせることがわかります。NISAでどれだけの利益を見越せるかは、シミュレーターで試してみてください。

大切な暮らしに投資をしよう

大切な暮らしのために、必要なお金を備えておく。

本記事の作成にご協力いただいたマネックス証券さんが掲げる「大切なものに投資をしよう」という言葉を借りるなら、“大切な暮らしに投資する”ことそのもの。

将来のことは不確定な要素も多いですが、ライフプランや設備更新のタイミング、リフォームの相場がわかっていればある程度道筋は見えてきます。ゴールを見据えながら、妄想と資金を、無理なく、でもちゃっかりと育てていきましょう。

 

2025年8月2日(土)東京ショールームにて「暮らしの変化に、ちゃっかり備える。 アフターリフォームと投資のはなし Supported by マネックス証券」を開催しました。本記事は、イベント内容の一部を元に作成しています。

10年先、どんな暮らしをしていたい?「家とお金」について考えるイベントを開催します!
10年先、どんな暮らしをしていたい?「家とお金」について考えるイベントを開催します!
2025年8月2日(土)、東京・目白ショールームにて「暮らしの変化に、ちゃっかり備える。 アフターリフォームと投資のはなし」を開催します!参加費は無料です。皆様のご応募をお待ちしています!

※本記事は2025年9月時点の情報です
Supported by マネックス証券

担当:庄司