閑静な住宅街の路地にあるその家は、とても古めかしい外観で周りの建物から少し浮いていた。味があるとも言えるが、正直言ってしまえばボロいという印象の方が大きいくらいの衝撃的な外観だ。

でもその佇まいには他にはない何とも言えない魅力とワクワク感が漂っていた。

ここに住むのは、料理家でカフェプランナーの柚木さとみさん。

つい先日、柚木さんは「暮らしのトンテン」というDIYのノウハウ本を出版した。toolboxでもほんの少し協力させていただいたのが縁で、今回その本の舞台ともなったこの家にお邪魔させていただいた。

DIYで空間を一新

ドアを開けて中に入ると、小屋組が露出した高い天井が目に飛び込んでくる。象徴的なキッチンが中央に置かれ、リビングとつながったウッドデッキが庭に張り出し、気持ちの良い空間が広がっていた。建具など古さを感じさせる要素が随所に見られ、とてもかっこいい。

しかし築50年を超える木造の平屋ということで、これに至るまでにはかなり手を加える必要があったそうだ。

床を張り替え、天井も落とし、壁も新たに作った。そしてキッチンや棚の設置や浴室のタイル張りまで。

よくここまでやったなぁと感心しきり。でも一見すると大掛かりで大変そうな改装も、ひとつひとつを見れば意外と単純で簡単なことの積み重ねでできているもの。「暮らしのトンテン」では、それらを分解し、初心者でも分かりやすくDIYのやり方を紹介しているのだ。

みんなで楽しく作業

この改装を全て女性一人で!?と思ってしまいそうだが、さすがにそうではない。友人や知人を巻き込んで皆で協力してもらいながら作っていったそうだ。

DIYってひとりでコツコツとやるイメージもあるけど、実際やっている人を見ると家族や友人などに手伝ってもらってやるケースも多い。そうするといろんな人の知恵やアイディアがもらえるし、ある種イベントのような盛り上がりを見せたりもする。そしてなによりみんなで作業をすると、できたときの喜びや達成感も共有できて楽しい。今回お邪魔した際にも何人かが遊びに来られていて、関わった人みんなが愛着を持ち、自然と集まってくる家になっていた。

人を集めて楽しみながら作っていくというのも、立派なDIYのノウハウなのかもしれない。

賃貸でのDIYを考える

しかし引越の際にはきちんと原状復帰の状態に戻したという。作る過程で原状復帰を見越して、できるだけ傷つけず、そして撤去しやすいなどの工夫を凝らしていたからだ。今回の家は改装OKなところもあり若干状況は異なるが、基本的には同じ姿勢で改装をしている。中には前の家で使っていた材料を剥がして今回の家に取り付けた部分もあるそうだ。

最近では、賃貸でも改装可能な仕組みが注目されつつある。このような事例が増えていくことでオーナーさんの理解も深まり、徐々にそうした改装可能な賃貸物件が増えていくことだろう。

DIYで自分の家をつくることは自分の暮らしをつくっていくこと。この本にはそんなメッセージが込められている。

いきなり全部をやるのは大変だけど、まずはどこか簡単なところから始めてみてはどうだろう。きっと少しずつ暮らしが豊かになり住んでいくことが楽しくなるはずだ。

(写真は全て:©EIJU CHIBA)

暮らしのトンテン
著者:柚木さとみ 出版社: エンターブレイン 
(toolboxで推薦文を書かせて頂きました!)