古い民家で使われていた扉や柱、床板などの古材が所狭しと並んでいる。

ここは、葉山の県道沿いにある古材屋、桜花園。

店内の風景と、オーナーの熊田さん

熊田さんは、ずっと古道具屋の仕事をしてきた。

多くの家を訪れる中で、壊される家の古材たちが捨てられていくのをしばしば目にした。

木が長く使われるように、引き継がれていくようにしたい。そういう仕事をしよう、と思った。

辻堂からこの場所に移って葉山で店を構えたのは14年前のことだ。

命を終わらせるにはまだ早いはずの木の梁や柱、床板、建具や家具を引き取る。そして、クギを抜き、洗う。しばしの間それらは店に置かれた後、再び人の生活を包み込む空間の一部となるべく旅立って行く。

彼らは、そういう仕事をしている。

大工の下小屋を少しずつ改装した店内に一歩入ると、そこは何かを売るための「店」というより、時間の流れが止まったひとつの世界がある。

店内外に並ぶ、和建具や古材。

古材をたくさん使って家をつくるために設計者と一緒に何度も通う人、棚板をつくるための板を一枚だけ買っていく人、ふらりと立ち寄って古時計を一つ買っていく人。

店の人も心をこめてアドバイスをしてくれるから、色んな人がやってくる。

桜花園の人たちは、つながりを大事にしている。

ここでは毎晩、近くに住む人たちや、よく訪れるお客さんが集まって、酒を飲んで、語り合う。

近くの畑でつくった枝豆を置いていってくれる人、釣れたマグロを持って来る人・・

熊田さんは言う。「僕らは、遠い地方で出た廃材を持ってきてここで売ろうとはあまり思っていない。それはその場所の人がやることだ。」

考えさせられる言葉だ。

人がつながり、それぞれの仕事が正しく結ばれて、モノや記憶が、自然でまっとうな形で、循環していくのがいい。「いい家が古いというだけの理由で壊されないようにするのは、例えば不動産屋の仕事。仕方なく壊されるとなったら、僕らはそこからまだ活かせるものを、残していく」と、スタッフの中山さん。

熊田さん(右)と中山さん。

そんな話をした後に、再び古材たちを見ると、少し違って見えてくる。

この木はどこで育ち、どんな家でどこに使われていたのだろう?

モノの豊かさや価値というのは「愛着」に行きつくのだと思う。

今日も陽が落ちれば、ここで宴が始まる。

「今まで、古い木建具をアルミサッシに変えるということを皆、ずっと やってきた。でも、最近は変わってきた。人々が逆のことをし始めている。」

こういう場所や仕事が、改めて求められているようだ。

桜花園 (古材・古建具・古道具)

神奈川県三浦郡葉山町上山口1421
TEL. 046-894-0072
営業 10:00~18:00(月曜休)